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2013年12月 2日 (月)

潮の満ち干

★数学セミナー 2013.12月号
こどもの眼・おとなの頭「水の皮・朝夕の水」 時枝 正
この記事を読んで、あ、いけね、そうだったのか、と本屋さんでつぶやいてしまいました。
最近は数セミは面白い記事がある時だけ購入していますが、さっそく買ってきて熟読してしまいました。引用します。

潮汐の図をモノノホンでご覧になった覚えがあるでしょう。
Tide1 図A

なぜ水がひしゃげるか、はよく知られています。――月の重力の地球中心における値を標準にすれば、月に近い側の水はそれより強い重力を、遠い側は弱い重力を受ける。相対的には地球中心での重力プラス・マイナスの力を受け、2つの反対方向へひっぱられる。
・・・
それはよろしい。しかし上の図には別の問題があります。じつは正しいのは潮汐のひしゃげ方向が月に対し90°ずれた下の図なのです。
Tide2 図B

 ここの話は、のっぺらぼうな球面が完全流体に覆われているとしたこどもっぽいモデル(それはモノノホンのモデルでもある)を想定し、そのモデルの帰結は上の図の代わりに下の図、と言っているのです。水のひしゃげは誇張してあります。

エッ!?ホント?まいったなぁ。
さぁ、どうでしょう?

2013.11.3は「朔」でした(新月)。(下のデータは東京でのものです。理科年表から)
月の出は5:28  月の南中は11:01  月の入りは16:29
             (太陽の南中は11:24)
満潮は  4:50                              16:15
干潮は                   10:37
                         22:57

11時過ぎに太陽と月が両方とも真南の方にあります。
図Aのようでしたら、月と太陽がともに南中するころに満潮になっていいはずですよね。
でも、そうではない。月と太陽がともに南中するころは干潮なんですね。
満潮になるのは月の出の頃と月の入りの頃。
図Bが正しいようです。

気象庁のサイトの潮位表のページで、11月3日の潮位の変化のグラフを作ってコピーしました。
http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/db/tide/suisan/
2013113graph
月や太陽が南中しているころに干潮で、月の出・入りの頃に満潮です。
図Bが正しいということがわかります。

いかがでしょう、潮干狩りの体験など思い出してください。
私の古い記憶では(確かではないのですが)、小学校で潮干狩りに行って日食を見た、という記憶があるんです。
調べてみると、おそらく1958年の4月19日の日食じゃなかったかなぁ。
13:19頃に最大食になったはず。
日食ですから当然、月と太陽が重なっている、その時に「引き潮で潮干狩り」なのでした。

★どうしてこんなことになるのか。
以下、数セミの記事を要約してみましょう。引用の段落はつけません。{ }の中は私(かかし)の文です。

●地表を覆う水は振り子のような振動体である。しばらく月は無視しよう。ひしゃげた状態から話してやると、水は自由振動するであろう。
Oscillator
自由振動の固有周期は24時間。

2013saku_bou
{東京での2013年11月3日~2013年11月18日の潮位予測をグラフ化したものです。
11月3日が朔、11月18日が望です。なるほど出来事は約24時間周期ですね。}

●月は地球の周囲をぐるぐる巡りつつ、いろんな方向から重力を強制してくる。つまり地表を覆う水は強制振動をおこなう。強制項の周期は月が地球の裏側へ巡る時間、約12時間である。

1:強制項の周期>自由振動の周期なら
 振り子はゆったりと強制項と同じ向きに振れる
2:強制項<固有周期なら「せかせすぎ」となり、振り子は強制項とあべこべの向きに振れる。
3:強制項=固有周期なら共振する。

月の及ぼす強制項と、自由振動の固有振動の周期との関係は、2の「せかせすぎ」にあたり、水の振動は月に対してあべこべ、90°ずれることになる。

★記事の解説には振り子の絵もあるのですが、省略しました。
糸におもりを結んで振り子を作ります。
自由に振らせて周期を把握します。
そして、その自由振動の周期よりゆっくり手を動かしたり、早く動かしたりしてみてください。
手を動かすのが「強制振動」です。
上の解説はそのような状況をイメージしながら読んでください。

★その結果
Force
この図で、黒い丸が月です。海水があまりにも分厚いですがそこは笑って許してください。
このように、月は常に満潮の90°前にあって、潮を引っ張る形になるのですね。
そのために、冒頭の図AとBではBが正しいということになるのです。

なんだかビックリしました。
冒頭に書いたように、数学セミナーはもう毎月は購読していなくって、立ち読みして、おもしろい記事があると買うのですが、今回はヒットですね。
恥ずかしながら私も、モノノホンのように思っていました。
月齢、干満、南中などをちゃんと見て、事実を基本として理解していなかったということです。
恥ずかしいなぁ、でも、知らなかったことを知ることは喜びです。
利害損得関係なし。もう老後ですからね、好奇心に生きることにしています。
人生は遊び。楽しいな。

参考
http://www.kaiho.mlit.go.jp/06kanku/news/press/press.pdf/23-09-04mametisiki.pdf

潮汐力とは、物体(天体)が受ける他の物体(天体)の重力差(相対する天体に近い側と遠い側との差)によって生じる、物体(天体)を変形させようとする(見かけ上の)力

解説は正しいのですが、図は「モノノホン」です。

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