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2013年12月 9日 (月)

アイソン彗星「崩壊」

★朝日新聞から

彗星ブームご破算? 「アイソン」崩壊 上空観察会・特番に影響
2013年11月30日05時00分
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 ■太陽接近、熱・重力で蒸発か
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 彗星には多様な個性があり、明るさがどうなるかは実際に太陽に近づいてみないとわからない。過去には、もっと太陽に接近し、分裂や崩壊をしたが、見事な尾を見せた「ラブジョイ」(2011年)、「池谷・関」(1965年)などの大彗星の例がある。だが、アイソン彗星は、専門家の予想より核が小さかった可能性があるという。そのため、太陽の熱や重力に耐えられず、急激に蒸発し、崩壊したと考えられる。
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この他にも

最接近の前後に太陽の熱や重力で、彗星本体の核が分裂・崩壊し、消滅した可能性が高まった。

こういう記述もありました。
毎日新聞の記事では

アイソン彗星:太陽最接近で崩壊 破片は残る(毎日新聞 2013年11月29日 09時45分(最終更新 11月29日 20時49分))
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 大彗星との呼び声が高かったアイソン彗星は、太陽の表面から約120万キロ(太陽の直径の約8割)まで近づくと予測されていた。NASAなどの観測では、太陽に近づく様子が捉えられ、一時光がやや弱まって一部分裂したとも言われたが、その後順調に増光していたため、期待が高まっていた。
 ・・・
アイソン彗星の本体は直径2キロほどで、秒速200キロ超で太陽に近づいていた。彗星の本体は大きいもので直径40キロほど、周期的に飛来することで知られるハレー彗星は直径15キロあるという。
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 ◇「蒸気圧」「重力か」 専門家指摘
 彗星のちりの研究が専門の東北大教授(惑星科学)は「太陽に近づき過ぎ、彗星内部に大きなひずみが生じたことが原因の可能性がある。高温で内部の蒸気圧が高まり、破壊が進んだのかもしれない」と推測する。しかし、アイソン彗星より太陽の近くを通過した2011年のラブジョイ彗星は崩壊しなかった。中村教授は「今回はどうして崩壊したのか」と不思議がる。
 京都産業大教授(同)は「太陽の強い重力で彗星の核が壊れることはある。アイソン彗星も核がばらばらに分裂したのではないか」とみる。その上で「核の破片が残っていてちりの放出が続けば、観測が継続できる。来週末ごろには、性能の良い一眼レフカメラなら撮影が可能かもしれない」と期待を残した。

★一連の報道を読んでいて、なにか引っかかるんですね。
「重力に耐えられず」に崩壊。「重力で」崩壊。
「彗星内部に大きなひずみが生じたことが原因の可能性がある」この解説の「ひずみ」に注目したいんです。「ひずみ」は太陽のそばでは重力が強い、というだけでは生じない。

今私は椅子に座っていますが、もし地球の重力加速度が突然太陽表面の重力加速度の強さになったとしましょう。
太陽表面の重力加速度は地球の約28倍になります。
突然体重が1tを超えます。椅子が壊れる、床が抜ける、家が潰れる、いろいろありそうですね。
だから、私は「重力で」つぶれてしまう。
ま、いいでしょう。これは。
でもアイソン彗星にそういうことが起こったとは思えない。
アイソン彗星は慣性飛行しているのですから。

SFになりますが。
太陽に接近する前のアイソン彗星に近づいて、直径2kmの彗星をゆったりと包み込んでしまう巨大宇宙船に彗星を入れてしまったとしましょう。その宇宙船の乗員の目には、彗星は宇宙船の中に浮かんでいるだけです。いわゆる無重力状態です。
で、そのまま、彗星を内部に浮かべた宇宙船は彗星の軌道上を太陽に近づいていきます。宇宙船は太陽熱を完全に断熱できるとしておきましょう。
何が起こりますか?
太陽に近づいたからといって、別にロケットを吹かして加速度運動をするわけでもなく、重力任せに慣性飛行を続けるだけ。
そうすると太陽の重力は強いけれど、この宇宙船内部の無重力状態には何にも変化が起きるはずがないですね。

太陽の重力が強いからといって、「重力で潰れて崩壊した」というのはちょっと適切ではないという気がします。

★ここで私は潮汐力の働きを考えたい。
Juryoku
ごく定性的な図を描いてみました。
曲線は太陽が物体に及ぼす重力を表す曲線。1/(r*r)の曲線です。
横軸は太陽からの距離。
縦軸が重力。引力なのでマイナスにして、下へ行くほど強い力です。
遠ざかるとどんどん弱まって、ゼロに近づく。

物体ABと物体CDに働く重力を考えましょう。
どちらも、物体の太陽に近い側と遠い側で重力が異なります。
物体に働く重力の違いが「潮汐力」なのです。
どちらも引力ですけれど、相対的には、二つの重力値の真ん中の値に対して太陽に近い側では内向きの力が足し算になり、遠い側では外向きの力働いて引き算になったと見ることができます。そのため、物体ABは引き伸ばされるのですね。
これが潮汐力。
ところが、物体CDでは、CとDでの重力の差が小さいので、潮汐力=物体を引き延ばそうとする力が小さい。

こうやってみると、物体の長さに対して、重力の大きさの勾配が大きければ潮汐力も大きいことがわかります。
突き詰めると、1/(r*r)の曲線の傾きが潮汐力の大きさを定性的には示します。
傾きというと「微分」がでてきますね。
rの2乗分の1の曲線を微分すると、rの3乗分の1という曲線になります。
ですから、潮汐力はおおざっぱにいって、重力を及ぼしてくる天体との距離の3乗に反比例する力だといえそうです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BD%AE%E6%B1%90%E5%8A%9B
ウィキペディアの「潮汐力」の解説から引用します。
Tyousekiryoku
私の議論は定性的には間違ってないようです。

★アイソン彗星に話を戻しますが、
直径2kmのアイソン彗星が、太陽の表面から約120万kmまで近づいた時に受ける潮汐力がどの程度のものかを見積もることはしませんが、彗星はおそらくものすごい引き伸ばしをくっらったのではないでしょうか。
で、「彗星内部に大きなひずみが生じたことが原因の可能性がある」という言葉の意味は、この潮汐力による引き伸ばしなのではないかな、と考えるわけです。
太陽に近い側と遠い側での重力の差があれば、彗星は自由落下中ですが、潮汐力は食らう。
明白な(explicit な)形でそのように述べている報道がないですし、私は天文学は素人ですから、断言は全くできません。
その可能性を素人が想像して指摘してみたというだけです。
天体物理などに詳しい方の、分析を知りたいと思います。

★もちろん、熱の影響はとてつもなく大きい。
太陽の熱に「あぶられ」、太陽の強大な重力勾配=潮汐力で「揉まれ」崩壊したのだろうと考えています。

★1979年でしたか、惑星探査機ボイジャーが撮影した木星の衛星イオの写真は美しくも衝撃的でした。
噴水みたいな「噴火活動」が写っていたのです。
イオの大きさからすると、地球のような内部の熱(地球生成時の熱が冷え切っていないことと、放射性元素の壊変熱で、地球の内部は熱いのです)はあまり残っていないはず。溶岩があるとは思えなかった。
そうしたら、これは、木星の強い重力と周囲の他の衛星からの「潮汐力」でイオがもまれて、内部で摩擦熱を発し、イオの地表下が溶けているのだ、ということでした。
びっくりしましたっけ。31歳かなぁ。工業高校で化学と物理を教えていた頃ですね。
半径1821kmの星の表面がが100m位上下するということです。すごいですね。
地球では「海」という液体が動いて潮の満ち干がおきますが、固体衛星がもまれて変形するんだもんな。

↑この部分を書くのに、記憶をたどりながらミスのないように、とウィキペディアと理科年表を参考にしました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AA_%28%E8%A1%9B%E6%98%9F%29
イオ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%81%AE%E7%81%AB%E5%B1%B1%E6%B4%BB%E5%8B%95
イオの火山活動{イオの噴火の写真があります}
お読みください。

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