386637279427098990084096 の8乗根
★朝日新聞の連載から
(桜井進の数と科学のストーリー)「塵劫記」、江戸の人を数学の世界へ(2013年12月1日05時00分)
江戸の人々に愛読された数学の入門書は、吉田光由(1598~1673)が著した「塵劫記」(初版1627年)です。興味をひく問題と見事なイラストで人々を魅了し、数多くの改訂版や海賊版も出ました。
・・・
九九は、36通りだけ載っているものも少なくありません。例えば9×5は5×9に等しいので、載っていない。計算に必要なものだけに絞ったともいえますね。
江戸の人々はクイズのように考え解く「算数」から本格的な「数学」の世界へ入っていきます。
「ある数の8乗が3866垓3727京9427兆989億9008万4096という。この数はいくつか」――答えは888。これは、私の故郷、山形県の遠賀神社に伝わる1695年に作られたとされる「算額」の問題です。多くの人が数学に興じた江戸時代。問題の考案者が、その解答とともに木の板に書き、それを神社や寺に奉納する「算額奉納」の習慣ができていたのです。
・・・
[1]九九表は半分でいい。
●普通の九九表
1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 4 6 8 10 12 14 16 18
3 6 9 12 15 18 21 24 27
4 8 12 16 20 24 28 32 36
5 10 15 20 25 30 35 40 45
6 12 18 24 30 36 42 48 54
7 14 21 28 35 42 49 56 63
8 16 24 32 40 48 56 64 72
9 18 27 36 45 54 63 72 81
私もかつて九九表を唱えましたっけ。
でも母に、そんなもん半分でいいのよ、と教わって、そんなもんか、と半分しか覚えませんでした。
大正生まれの母でしたが、実に合理的な人でした、生活のいろいろな側面で。
記憶の無駄だよな。むしろ、いったん全部を教えた上で、暗記は半分でいい、なぜだろう?と考えさせた方がいいんじゃないのかな、とも思います。
[2]
「ある数の8乗が3866垓3727京9427兆989億9008万4096という。この数はいくつか」
「垓(がい)」なんて懐かしい。
化学に出てくるアボガドロ数は「6000垓」と教えたものです。
指数表示が出てくるとそれだけで拒否反応を示す生徒が出てきますので。
兆の上は?と聞くとかなりの生徒が「京(けい)」を知っています。
じゃ、京の上は?と聞くと、クラスに一人二人「垓」を知っている生徒がいるんですね。
いろいろ工夫しましたっけ。
垓 京 兆 億 万
3866,3727,9427,0989,9008,4096
★さて、上の問題ですが、江戸の人がどう解いたかは知りません。
問題自体は上図の①のように書かれますね。
ここで、まともに8乗根を求めるのは、電卓の力を借りればできますが、力技。
②のように考えます。
8乗というのは「2乗の2乗の2乗」ですね。2×2×2=8ですから。
となれば、x を求めるには3866…という数を、3回ルートに開けばいい。これが③
これは見通しがいいですね。
実行したのがその下の3行。
カルキングJというソフトでは式を書いて実行させると、計算してくれます。
★なんだそんなソフトがいるのか、と思わないでください。
ウィンドウズのユーザーならだれでも計算できます。
XP、Vista、8.1 とどれにも、アクセサリの中に電卓があります。
表示というところから、「関数電卓」を選んでください。32桁の有効桁数がある関数電卓が使えます。
24桁の数はそのまま扱えます。
↓これはその電卓にやらせた結果をコピー&ペーストで持ってきたものです。
√386637279427098990084096 = 621801639936
√621801639936 = 788544
√788544 = 888
この電卓には、「x の y 乗根」という機能もありますので、直接「x の8乗根」を計算させることもできます。
★もう一つ、別のやり方。(ウィンドウズの電卓で)
常用対数を取ります。
log(386637279427098990084096)
= 23.587303726228808157957562215742
「23」というのが10の指数部分になります。
で、この値を8で割ります。これが「1/8乗する」という操作に当たります。
23.587303726228808157957562215742 / 8
= 2.9484129657786010197446952769677
で、それを10の肩にのせてやりますと
10^2.9484129657786010197446952769677
= 888
あら、888ですね。
説明は省略しますが、対数の性質を知っていれば当たり前のこと。
★ところで、24桁の数が12桁になり、6桁になり、3桁になる。
ルートを取ると、ものすごい勢いで小さくなることがわかりますね。
桁の部分が「1/2乗」で、半分になるのですから当たり前ですが、実際に目で見るとやはりすごいものだな、と感じます。
★さて、また、ところで。
電卓や数値計算ソフトがないと、計算できないのでしょうか?
実は手計算でもできるんです、ま、ちょっと手間はかかりますけれど。
「開平計算」というのをご存じでしょうか。
割り算と似たような書き方で、紙と鉛筆があればルートが計算できるのです。
私の場合は、中学校の時かなぁ、数学の授業で教わりました。
そろばんを習った人なら、そろばんでの計算法を知っている方もいらっしゃるかも。
興味がある方は下のサイトをご覧ください。
http://dic.nicovideo.jp/a/%E9%96%8B%E5%B9%B3%E6%B3%95
開平法
http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/root.htm
平方根・立方根を筆算で求める方法
http://izumi-math.jp/F_Nakamura/kaihei/kaihei.htm
ルートを開こう
開平計算の初めの方をエクセル上で私がやったものを載せます。
セルの左上にマークがあるのは、数字を、数ではなく文字と認識させたりしたのが表示されているだけですので、無視してください。
小数点の位置から、数を左に2つずつ切りまして、それを使って計算していきます。
2つずつに切って計算しましたから、計算後は桁が半分になることもはっきりとわかります。
「38663727…」と始まる数の平方根は「6218…」と始まることがわかります。正しいようですね。
★この新聞記事、結構楽しめました。
この問題はおそらく
「八、八、八の八乗は」と計算して作った問題でしょうね。
数を扱うことを楽しむなんて、江戸の人は「粋」ですねぇ。
九、九、九の九乗は?
991035916125874083964008999
でした。{ウィンドウズの電卓で計算したら}
991,0359,1612,5874,0839,6400,8999
「垓」の上は?
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コメント
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ほうほう。
投稿: | 2016年9月12日 (月) 16時13分