行分けした散文
★朝日新聞の2013年11月12日の夕刊に
「自由奔放で大胆な「妖術」 詩人・西脇順三郎に魅せられて 井上輝夫」
という記事がありました。
詩人・西脇順三郎(1894~1982)の故郷の新潟県小千谷市で毎年開かれている「偲ぶ会」に今年6月に招かれ、西脇の詩と詩論について話をした。西脇の詩に魅せられた人は国内外を問わず、今も多い。
・・・
西脇の詩の大きな特徴はその散文体にある。伝統的な韻文詩がもつ形式や言葉をすて、ほとんど随筆にちかい口語の文体で詩を書いた。これは日本の近代詩がたどりついた口語自由詩のひとつの帰結だとも言えるが、同時に「行分けした散文が詩なのか」という現代詩のあやうさを抱えこむことでもあった。西脇はこの難問をいくつかの詩作法を駆使することで乗り越え、独特のポエジー(詩情)の世界をつくりだした。
ひとつは、詩人と、詩のなかで発話される言葉の分離である。詩作品は抒情や思想を詩人が語るものだという通念があるが、西脇の場合は掌編小説のように虚構が導入され、作者と作中の発話者は同じとは限らない。この手法は同時代の詩人T・S・エリオットの多声的な(ポリフォニー)空間ほどには徹底してはいないものの、この手法により西脇は思想から日常のささいな印象まで多様にとりこめる自由奔放な文体を得たといえる。
・・・
これは、芸術の本質は自然や現実をそのまま転写することではなく、ねじ曲げる、つまりデフォルメすることだという西脇の詩観にかなっている。あろうことか芭蕉の句さえも楽しげにデフォルメし、ベートーベンの曲を鉄砲の音として扱うという大胆さである。
詩が「抒情や思想を語る」ものだなんて、つゆほどにも思ってませんけど。
そういうのは、詩の形式をとらず、きちんと書き込んだ方がいいでしょう。
詩は虚構である、当たり前。言葉の意味が重なり合って虚なる構造物を構築する。その虚構が現実の私をどう揺さぶるのか、というのが詩の鑑賞だと思ってますが。
詩が「実(じつ)」であるなんて、本当にそう思ってるんですか?ナイーブな人たちだ。
★さて「行分けした散文が詩なのか」というところで、思い出したのが。
{もうしわけありません、ごめんなさい}
やなせたかしさんの詩。
2013年10月17日の記事で読んだのですが。
「詩とファンタジー 24号」掲載{されたはずですが私は読んでいません}
いつも
これが最後と
おもって書いています
一世紀近く
生きてきましたから
もうおしまいです
あっというまでしたね
すぎてしまえば
あっけない
ぼくは
未熟の生まれ
死ぬ時も
未熟のままで
かえって
よかったような
気もします
ところであなたは?
これを新聞紙上で読んだとき、私は妻に、これって「行分けした散文」じゃないのぉ、と話したことを覚えています。
亡くなった人の作品ですから強い批判は避けるとして、これは「詩」ではないですね、はっきり言って。
分かち書きした散文です
よく子どもの詩、とかいって、やはり行分けした散文を面白がる人もいるのですが、やめた方がいいですよ。
言葉の意味たちが輻輳して世界を構築しているか。
作者が構築して見せた世界に入り込めるか。その世界にどきどきできるか。
そういうところで詩を鑑賞すべきですね。
もう一つ「天命」という詩も紹介されていましたが、やはり行分けした散文、と私は判断したのでした。
有名人とか、なんとか、そういうレッテルでものを見ないで、自分の感性だけで立ち向かってください。それが芸術を鑑賞する唯一の方法です。作品と読者の「対決」を「鑑賞」というのです。余分なものをさしはさまないように。
★ところで、やなせたかしさんの「アンパンマン」という作品の内容を私はほとんど知らないのですけど、評価していません。
1970年代でしたかに登場してきて、その中に「ばいきんまん」というのが登場したときに、わたくし、興奮して妻に激しい言葉で怒りを表明したことを覚えています。
これは絶対ダメ。いじめの格好の材料に使われる。不潔だ汚い、といっていじめていても、教師が調べれば、ばいきんまんごっこしていただけだ、とかわされてしまう。でも、その裏でいじめは進行し続ける。絶対「ばいきん」などというキャラクターを作ってはいけない。
とわめいたのでした。
妻もあの時の剣幕はすごかったわね、と笑います。
汚いものの存在を許さない、ばいきんはやっつけていい、退治しちゃっていい。
そうかなぁ。自分は汚くないの?君の体はばい菌と一緒に生きているから健康でいられるんだよ。
一方的に「キック」でやっつけるらしい。
殴り合いだと「手が痛い」。
「蹴る」ことは殴るより圧倒的にパワーが強いうえに自分の側の痛みが少ない。
いじめのなかに「キック」が入ることで、痛みを感じずに他人をいじめることができるようになりましたね。
アンパンマンを評価しない私です。
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