藤原の効果
台風27号・28号の関係で、この言葉が登場したのはいいのですが、ちょっと「混乱してますね」という状況ですね。
★朝日新聞では
「藤原の効果」、複雑な台風の動き類型化(朝日新聞 2013年10月25日05時00分)
・・・
その藤原が、二つの台風が接近した場合に互いに影響し合い複雑な動きをする現象を分析、類型化して1921年に発表したのが「藤原の効果」だ。
その動きのパターンは6種類。弱い台風が強い台風に融合する「相寄り型」。先行する1個をもう1個が追う「追従型」のほか、「離反型」「時間待ち型」など、さながら恋人同士の関係のよう。双方が1千キロ以内に近づかないと顕著に現れないとされる。
・・・
■データ少ない時代には有効
・・・
気象庁の藤田司・アジア太平洋気象防災センター所長は「データが限られた時代は過去事例の類型化が予報に有効だったのだろう。現在は、後からみれば藤原の効果と言える複雑な動きも織り込んだうえで予報を出している」と説明する。
気象情報提供会社ハレックス気象担当部長の市沢成介さん(69)も「変な動きをしたら何でも藤原の効果と言い出すのはおかしい。いまでは複雑な動きもほとんど説明がつく」と話す。
・・・
■災害防ぐ予報、考えの根底に
気象庁OBの市沢さんはそれでも、63年に入庁後しばらくは「藤原の効果」を加味して予報を組み立てるよう先輩から指導されたという。「先達の築いた偉大な理論と経験則です」と藤原の足跡には敬意を払う。
・・・
★毎日新聞では
質問なるほドリ:台風の接近、多いよね?(毎日新聞 2013年10月25日 東京朝刊)
・・・
Q 27号と28号は同時に北上しているけど、複数の台風が近い距離にあるとどんな影響があるの?
A 台風同士が約1000キロ以内まで近づくと影響し合って、反時計回りにお互いを追いかけながら回転したり、小さな台風が大きな台風に吸収されたり、複雑な動きをするとされます。旧中央気象台(現気象庁)の台長だった藤原咲平さんが戦前提唱した説なので「藤原の効果」と呼ばれます。
現在の進路予想は気圧、気温などをコンピューターで解析する「数値予報モデル」を採用しています。藤原の効果の概念も組み込まれ、進路予想が混乱する可能性は低くなっています。
確かにね。
・藤原咲平さんが「二つの台風が接近した場合に互いに影響し合い複雑な動きをする現象を分析、類型化して1921年に発表したのが「藤原の効果」だ。」
・「先達の築いた偉大な理論と経験則です」
・藤原咲平さんが戦前提唱した説
それは間違いじゃないし、当初の藤原氏の説は「経験則」だったのかもしれません。
でも、私が解説したように
◎回転の向きが異なる二つの渦は安定的に共存しうる。
◎回転の向きが同じ二つの渦は安定的には存在できない。
ということは、これは物理的な事実です。
ただ、「安定的に存在できない」ときに、じゃあ、どう動くのさ、となると、
初期には経験則として類型化することは有効だったでしょう。
現在は、気象データはきめ細かいし、スーパーコンピューターを使って、流体力学的に予報が作られるようになったので、経験則はほとんどいらなくなったのでしょう。
藤原の効果のせいで事態が複雑化している、と考える必要はありません。
{でもね。気象予報に携わる方は、必ず「空」を見るべきですよ。空の見方も知らないで数値予報を伝えるだけでは、生きたきめ細かい予報はできませんよ。}
でも、台風が二つ接近すると、通常の滑らかな進路予想からずれて、妙な動きが入ってくるよ、ということを知っておいても悪くはない。そのような現象に名前をつけて「藤原の効果」と呼ぶんだよ、と理解してもよいのではないでしょうか。
気象庁の予報を頭っから信じ込むのではなくて、気象庁の予報を「メタ」な立場から眺めて、ふむ、藤原の効果というもののあらわれが、数値予報の中に出てきているようだな、と見ることができるようになったらいいな、と思うわけです。
藤原の効果は、出発時は経験則でしかなかったかもしれませんが、実は渦というものの物理的な性質が背後にああるのです。
物理法則の実体化としての気象、のもとで私たちは生活している、と感じてください。
天気予報は、流体力学という物理学の具体的な表れなのです。
物理って「日常的なもの」でしょ。
★もっかい。
夏の気圧配置は南高北低で、冬の気圧配置は西高東低
ですね。
日本周辺の支配的な気圧配置を見れば、高気圧と低気圧がペアでしょ。
時計回りの高気圧と、反時計回りの低気圧という回転の向きが異なる二つの渦が、日本列島をはさんで「安定的に共存」しているわけですね。
これって、物理的な出来事でもあるんですね。
★リンク
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-f0d3.html
2013年10月23日 (水)「藤原の効果」
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-fc94.html
2013年10月24日 (木)「渦について(後に追記あり)」
« 夕方の「天使の梯子」 | トップページ | 分光 »
「理科おじさん」カテゴリの記事
- 化学の日(2022.10.26)
- 秒速→時速(2022.09.01)
- 風速75メートル(2022.08.31)
- 「ウクライナで生まれた科学者たち」(2022.05.31)
- 反射光(2022.05.09)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント