台風一過の虹
★こんな記事がありました
http://www.asahi.com/national/update/1003/TKY201310020616.html
台風過ぎて、東京都心に虹(朝日新聞 2013年10月3日1時44分)
写真:東京スカイツリー(左)の近くに虹が見えた=2日午後4時46分、東京都中央区から。
写真:国会議事堂の上にも虹が見えた=2日午後4時47分、東京都千代田区。
台風22号が日本列島東の太平洋上を北上した2日夕、東京都内の東の空に鮮やかな虹がかかった。気象庁によると、都内はこの日、朝から雨に見舞われたが、夕方には通り過ぎる台風が雲を持ち去った。強い西日が差し込み、虹が見えやすい条件になった。
もし、虹が「一つの実体」であるなら。
東京スカイツリーのところと、国家き議事堂のところにほぼ同時に存在するわけにはいきませんよね。
「アリバイ」という概念が崩れてしまう。一つのものが、同一時刻に異なる二つの場所に存在することはあり得ない。
{「アリ」は「アレ」ルギーなどと同じ語根の「異なる」という意味です。で「ibi」は「場所」という意味です。ラテン語で。}
私のHP「理科おじさんの部屋」でこんなことを書いています。
十人の人が一緒に虹を見たとき、「一つの虹を十人で見る」のではなく、「十人がそれぞれ自分の虹を見る」のです。
何かの物、たとえば一頭の象を十人が一緒に見るとき、象は一頭です。決して、十頭の象がいるわけではありません。ところが、虹ではそうではないのです。
ということは、虹というのは普通に私たちが見ている「物」ではないようですね。
一人一人が別々に見る「現象」であって、個々の人に個々の虹が見えているのです。でも、言葉では「虹を見た」といって、同じ経験を共有したつもりになれるのです。
スカイツリーのところで虹を撮影した記者さんと、国会議事堂のところで虹を撮影した記者さんと、それぞれが自分という観察者に属する虹を見て撮影しました。決して、同一の「一つの虹」ではないのです。
不思議ですね。
太陽を背にして自分の頭の影を探します。眼と頭の影を結ぶ直線から約40度くらい離れたところを探せば、虹が見えるはずです。
複数の人が立てば、複数の頭の影があります。太陽と頭の影を結ぶ直線もそれぞれの人によって違います。その直線から40度くらい開いたところに虹が見えるわけですが、それもまたそれぞれの人によって違うんですね。
ですから、虹という現象は、観察者に属する現象である、ということになるのです。
○恋人が二人、肩を並べて虹を見ます。二人で虹を見る幸せに浸るかもしれません。
実は、二人はそれぞれ自分の虹を見ているのであって、一つの虹を見ているのではありません。{冷たくってごめんなさい}
○頭には目が二つありますが。右目が見る虹と、左目が見る虹も、厳密に言えば同じものではない。
例えばの話。両目の間隔が100mもあるような「巨人」がいたとしましょう。
両目の間隔がこんなに広いと、きっと空の雲も遠くの山も立体的に見えるかもしれませんね。雲や山に対する両目の視線の角度が異なるかもしれないという意味です。両眼視差、といいます。
両眼視差を利用して「立体視」ができます。
ではこの巨人が虹を見たらどうなるのか?
それぞれの目がそれぞれの虹を見ますので、両眼視差が生じません。
視線の角度が違わない=平行だ、ということは、「無限遠」に虹があるように見えるはずなのです。
雲や山には立体感があるけれど、虹には立体感がないのです。
↓理科おじさんの部屋の第98回
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/98th/sci_98.htm
手前味噌:面白いですよ↑
★さて、10月2日の虹では、「主虹」のほかに「副虹」も見えたようなのです。
主虹というのが普通にいう虹のことです。これは空中の雨滴で、屈折・反射・屈折、で出てくる光で構成されるものです。副虹は、屈折・反射・反射・屈折、で出てくる光が作る虹。
反射が一回多いので、色の順番が逆転した虹で、主虹の外側に現れます。主虹より淡いので気づかない人も多いかと思います。
朝日新聞の記事では副虹への言及はありませんでしたが、ネットへの投稿では、虹が二重になっていた!という写真もありました。
★NHKラジオの気象キャスター・伊藤 みゆきさんのブログでは、さすが気象予報士さん、ちゃんと副虹という言葉を使って、当日の虹の解説をしていらっしゃいます↓
http://blog.nikkeibp.co.jp/wol/ito_miyuki/2013/10/post-1234.html
早起き☆お天気☆ONAIR日記(2013年10月 3日 10:56)
これは虹が出そうだ!!
と高いところに昇ってみたら...。
こんなミラクルな虹が出てました!!
クッキリ虹と薄い虹...二重です。副虹(外側の虹)がかかってました。
副虹は、内側が赤です。
主虹(赤が外で、紫が内側)と逆です。
この一瞬が撮れたことで、きのう一日がとてもラッキーに感じました。
朝日新聞の写真では、スカイツリーのすぐ右に主虹が見えているのですが、伊藤さんの写真ではスカイツリーのすぐ右の、朝日の主虹の写真とほぼ同じ位置に、副虹が見えています。
二人の撮影者が、異なる場所から撮影したので、それぞれの撮影者に属するそれぞれの虹を見ていた、ということが実に明瞭に分かります。おもしろい出来事でした。
★上でリンクした「理科おじさんの部屋 第98回」では、虹の実験や話を結構詳しくやっています。よろしければお楽しみください。
お勧め:ホースで水撒きしながら虹を作って、頭を動かしてみると、「あれ?えぇ!」という感じが楽しめるはずです。どうぞ。
« 台風が温帯低気圧にかわる、って | トップページ | ベニシジミ »
「理科おじさん」カテゴリの記事
- 化学の日(2022.10.26)
- 秒速→時速(2022.09.01)
- 風速75メートル(2022.08.31)
- 「ウクライナで生まれた科学者たち」(2022.05.31)
- 反射光(2022.05.09)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント