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2013年9月19日 (木)

イプシロン打ち上げ:2

★イプシロンで打ち上げた人工衛星に名前が付きましたね。

惑星観測衛星の愛称は「ひさき」 JAXA発表(朝日 2013年9月14日17時27分)
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は14日、イプシロンロケットで打ち上げた惑星観測衛星「スプリントA」の太陽電池パネルが開いたことを確認した。衛星の状態は正常という。
 また、衛星の愛称を「ひさき」と名付けたと発表。鹿児島県肝付町にある岬の「火崎(ひさき)」と、観測対象の惑星が「太陽(ひ)の先」であることが由来だという。
 (後略)

さてその「ひさき」について。
日経のサイトで読んだ記事の一部。

ひさき、順調に飛行 11月に惑星観測開始(2013/9/15 18:48)
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は15日、新型ロケット「イプシロン」1号機で打ち上げた宇宙望遠鏡「ひさき」が正常な軌道で順調に飛行を続けていると発表した。約2カ月かけ、姿勢制御の機能などを確認し、11月以降に惑星観測を開始する。
 JAXAによると、ひさきは、地球の高度約950~1160キロの軌道を106分で1周しており、計画通りに飛行している。
 ・・・
 JAXAは今回、一辺が1メートルの立方体の標準機体を開発。ひさきに利用した。今後、標準機体にさまざまな装置を組み合わせ、セミオーダー型で安く小型衛星を製造する。〔共同〕

大雑把な話をしましょう。
軌道高度は約1000kmとしましょう。(地球の半径は6400kmとします)
その円周を106分で一周。すると
(2×π×(1000+6400)km/(106×60)秒=7.3km/秒
いい値が出ました。

少し前の「イプシロン打ち上げ:1」の記事で写真から読み取った最後のデータは

●725秒後、高度843.6km、対地速度6997.5m/s

でしたから
この後、PBSで高度を約200km上げ、速度をわずかに上げたのですね。

★宇宙速度という概念があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E5%AE%99%E9%80%9F%E5%BA%A6
↑ここから引用

宇宙速度とは、宇宙で各種慣性飛行を行うために必要な最小初速度の大きさを言う。第一、第二、第三に分けられる。通常は地球・太陽を対象としているが、他の星(恒星、惑星、衛星等)に対して使う場合もある。

第一宇宙速度
地球の地表すれすれに衛星として存在するために必要な速さで約 7.9 km/s(時速28,400km)。これ未満の速度を弾道軌道速度 (suborbital)、これを超える速度を超軌道速度 (superorbital) と言う。・・・

第二宇宙速度(脱出速度)
地球の重力を振り切るために必要な最小初速度の大きさ。第一宇宙速度の√2倍となり、約 11.2 km/s(時速40,300km)。太陽を回る人工惑星になるためには第二宇宙速度が必要である。地球の重力圏を脱出するという意味で脱出速度とも呼ばれる。

地表すれすれで衛星になるには7.9km/sが必要なのですね。
1000km上空ですから、約7.3km/sでいい、と。
地球一周は約4万km。{なにせ、古い定義でメートルの定義は、赤道と北極点の間の子午線の長さの1千万分の1が1mでしたからね。}

40000/7.9=5000秒 →約83分
このくらいで一周してくるんですね。
スーパーマンが富士山のてっぺん辺りで、7.9km/sで水平にボールを投げると、83分後に戻ってきたボールが背中を直撃するんですね。
人工衛星の速度を考えるときには、大体この程度の早さだと思っていただいていいですね。
{ある種の常識として身につけておいて無駄でもないと思うんだけどなぁ、元理科教師としては。}

静止衛星がありますね。赤道上空3万6000kmの高度を、ジャスト1日で回る。
ですから、地上から見ると、いつも同じ位置にあるのですね。
(2×π×(36000+6400)km/(60×60×24)秒=3.1km/秒
こんなところですね。

と言うわけで、今回のイプシロン打ち上げは地球周回衛星を打ち上げていますので、第一宇宙速度程度でいいわけです。

★8月27日でしたか、イプシロンの打ち上げが直前で中止になりました。
その後の、8月29日付の朝日新聞天声人語。

イプシロン打ち上げ中止
 ・・・
 地球の重力を振り切るには、計算上は秒速11・2キロもの「脱出速度」が要る。煙を引いて天に昇る姿は、昔の人なら竜と見るだろう。人工衛星などを宇宙へ届けて自分は短時間で燃え尽きる、けなげな縁の下の力持ちでもある。
・・・

なんとなくね、引っかかるんですね。
ボールドフェイスにした部分、この部分自体は間違ってません。
人工惑星レベルなら第二宇宙速度が必要ですから。それは約 11.2km/s。「脱出速度」ともいいます。「地球の重力を振り切る」のです。{重力自体は無限遠まで届きますけどね}
ただねぇ、イプシロンの打ち上げという話題の文章中でこのように表現すると、あたかも「イプシロンが秒速11.2km/s」を目指したように受け取れませんか?
ちょっと誤解を招きそうな気がするのですね。第一、第二宇宙速度の概念を知らない人の方がおそらく多いですから、そうかイプシロンは11.2km/hの速度を出すんだな、と感じてもおかしくはない。
朝日新聞の天声人語としては、やや正確性を欠いた文章だったと思うのです。

★山崎直子さんが、いいことをおっしゃってました。
大切なことは
「何か異常を検知した時に、事故に至る前に打ち上げを中止する、という安全措置をとれること」
この点でイプシロンは評価されるべきだ
と。
技術のタフさというかロバストネス(堅牢性)というか、きちんと対処できることが大事。
決して失敗なんかじゃなかったわけなのです。
何かあったら、安全側で停止する、これ大事なことなんですよ。
{日本の原子力発電技術にはどうもこのロバストネスが欠けてるよなぁ。
あらまぁ、危険な方へ暴走して「いっちゃったぁ」。で、安全側に帰ってきません。
技術として基本的なことなんですけどね。}

★ところで、9月13日の記事で「探査機ボイジャー、太陽系脱出 地球発35年、人工物で初」という記事が載りました。
私30歳のころの打ち上げです。木星の大赤斑をみました、土星の輪をみました、太陽系を振り返った画像も見ました。
「つくづくいい時代に生まれ生きてるよなぁ」と妻と話します。

ボイジャーは最終的に太陽系を去るのですが、もし、打ち上げ以降慣性飛行をしながら太陽系を脱出できるだけの速度を、打ち上げ時に与える、としたら、その速度を「第三宇宙速度」といいます。約16.7km/sです。この速度を打ち上げ時に与えることはものすごく大変なんです。
でも、ボイジャーは「スイングバイ」という手法で、途中で惑星のそばを惑星の進行方向の後ろから前へかすめて飛ぶことによって、エネルギーを惑星から分けてもらうという形で加速しました。ですから、第三宇宙速度で打ち上げたわけではありません。

★いろんなことをごちゃごちゃ書きました。
適当にかいつまんでお読み下されば幸いです。

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