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2013年8月26日 (月)

人工降雨装置

★こんなニュースがありました。

人工降雨装置、12年ぶり稼働 都、少雨対策(朝日新聞 2013年8月22日)
 首都圏の水不足をうけ、東京都は21日、小河内ダム(奥多摩町)周辺にある「人工降雨装置」を12年ぶりに稼働させた。午後2時に動かすと30分後、ダムに雨が降った。
 都によると、動かしたのは小河内発煙所と犬切発煙所(山梨県甲州市)にある装置。ヨウ化銀を含む溶液を燃やした煙を送風機で上空に放出すると、煙の粒子が上空約5千メートルの雲の中で氷の結晶とくっつき、雨粒をつくる仕組みという。
 都は、ダム整備が遅れ、水不足が続いていた1966年、1800万円かけてダム周辺の4発煙所を設置。計802日間の稼働では、数時間後に雨が降るケースがあったといい、雨量を5%増やす効果があったと試算している。
 この日は、装置の始動30分後、ダムにぽつぽつ雨。水源地となるダム上流部では午後5時からの2時間で17・5ミリの雨が降った。ただ、都水道局は「装置の効果かどうかはわからない」としている。
 水不足が続けば、都は今後も装置を動かすという。

これねぇ。効き目なさそうですが、と私は思いますが。
送風機で「上空に放出」ったって、5000mは届かないよなぁ。
長い煙突立てたって、そうそう高くは上らないでしょ。まして送風機じゃね。

NHKでも同じニュースがあって

人工降雨装置 都が試験稼働(8月21日 18時52分)

東京都は、雨が少ない影響でダムの貯水率が平年を大きく下回っていることから、多摩川の上流にあるダムの周辺で人工的に雨を降らせる装置を21日、試験的に動かしました。
・・・
この装置は、水蒸気と結びつきやすい性質を持つ「ヨウ化銀」を入れた溶液を燃やして気体にし、煙突から雲に向けて放出して人工的に水滴を作り出す仕組みです。
試験運転は、上空に雨を降らせやすい雲があることや、雲に向かう風があるかなどを確認したうえで、午後2時から2か所の施設で行われました。

○人工降雨装置とは
・・・
この装置は、水蒸気と結びつきやすい性質を持つ「ヨウ化銀」を入れた溶液を燃やし、細かい粒子を含んだ気体にします。
そのうえで、大型の扇風機で風を起こして装置の煙突から空気中に放出します。
気体が上昇気流に乗り雲に到達した場合には、ヨウ化銀が雲の中の水蒸気と結びつき、地上に落ちてくると雨が降る可能性があるということです。
・・・
○専門家「信頼性に乏しい方法」
東京都の人工降雨装置について、人工降雨の研究を行っている防衛大学校の遠峰菊郎教授は、「ヨウ化銀は、マイナス5度からマイナス10度くらいになると水蒸気を凍らせ、雨を降らせるが、そのためには今の時期なら高度5000メートルほどの高さまで到達させなくてはならない。東京都の装置で発生させたヨウ化銀が自然の上昇気流に乗ってその高さまで確実に上がっていくかどうかに疑問があり、信頼性に乏しい方法だ」と指摘しました。
そのうえで、「現在、人工降雨の主流は、航空機を雲の中に飛ばしドライアイスなどを直接まく方法なので、東京都もより信頼できる方法に見直したほうがいいと思う」と話していました。
また、化学物質の影響については、「安全性が確認された範囲の分量でヨウ化銀を使っているとは思うが、人体に影響を及ぼす重金属だから使わないに越したことはない。人工降雨に使える薬剤はヨウ化銀だけでないので、検討し直したほうがいいように思う」と話していました。

やっぱりね。理科教師の直感も捨てたもんじゃない。私ら、原理原則的にものを考えるからなぁ。
水蒸気と結びつきやすい性質を持つ「ヨウ化銀」とありますが、雲の中で過冷却になっている水蒸気の中に、ヨウ化銀の微粒子が入りますと、それを「核」にして、水蒸気が氷に凝固結したり水に凝結するのです。飛行機雲の生成と、原理的にほぼ同じことです。

「人体に影響を及ぼす重金属」とありますが、銀が毒?
そうなんです、昔から、銀の容器に入れた水は腐りにくい、といいますね。
微量の銀イオンの存在で、微生物が繁殖しにくいようです。
銀じゃ高いので、銅でそういう話がよくありますね。銅網の三角コーナーとか、排水溝の銅網の籠とか、花瓶に10円玉入れるとか、池に10円玉入れるとボウフラがわかないとか・・・。
これはおそらくあまり効き目はないだろうなぁ、と思っております。

でも昔、実際にこんな事故があったんですよ。
体内に硝酸銀、死亡:殺菌用棒割れ落下(97.11.15)
こういう見出しがありました。
硝酸銀の棒状結晶をピンセットでつまんで、喉の奥の消毒をしようとしたのかな。で、硝酸銀結晶を気管に落としてしまい、患者さんが亡くなったという事故です。
貴金属の銀というイメージで見ないでください。銀イオンは有毒です。

★NHKの8月23日の朝のニュース番組の中でも、人工降雨の話をしていました。
その中で、現在一番よくおこなわれる方法として、「液体炭酸をまく」という話をしていました。
上の「専門家の話」の中にある「現在、人工降雨の主流は、航空機を雲の中に飛ばしドライアイスなどを直接まく方法」というのと同じものです。
え?ドライアイスは固体で「液体炭酸」は液体でしょ?
それはそうなんですけれど。

炭酸ガス=二酸化炭素のボンベはひょっとすると見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
炭酸ガス消火器も二酸化炭素ボンベですしね。
詳しい数値はここでは出しませんが、ボンベの中の二酸化炭素は実は液体なのです。
で、そのボンベのバルブを開きますと、液体の二酸化炭素が噴出するのかというと違うんですね。
1気圧下では二酸化炭素は液体では存在できませんので、直ちに気化します。その時周囲から猛烈に熱を吸収しますから、その冷却で二酸化炭素が固体になり、要するにドライアイスの粉末が噴射されることになるのです。
雲のあるところで、「液体炭酸」のボンベを開くと、ドライアイスの粉末が噴射されるのですね。
ということなのでした。

高校時代、化学の先生の許可をもらって、炭酸ガス消火器の噴射口に黒い布を当てて炭酸ガスを噴射し、白い粉がいっぱい取れるという実験をしたことがあります。ですから、身をもって知っています。

ちょっとした科学知識の裏付けがあると、ニュースの中身も「濃く」なるんですけどねぇ。

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