特別警報
★8月30日から、気象庁は特別警報の運用を始めたということです。
NHKのニュースでは
数十年に一度しか発生しないような豪雨や台風などで大規模な災害の危険性が差し迫っている時
という表現で報道しています。
この報道には欠陥が2点あると考えます。
1:「数十年」って一体「何年」くらい?
この夏は特別警報に相当する記録的な大雨が、▽先月28日に山口県と島根県で▽今月9日に秋田県と岩手県で、▽今月24日に島根県で降りました{これもNHKです}
2:「なんだ、いっぱい発生してるじゃん、そんなに気にすることもなさそうだな」という誤解を生むだろうということ。
「1」のほうですが、大体ですね、命にかかわるような警報の対象を、「数」十年、というあいまいに表現するのは間違いでしょう。
私は個人的には「数」というのを「四捨五入すると五入の方へ行く値」ととらえています。
ところが、少なくともNHKでは「数」は「2,3」なんですね、「四捨」の方で使っています。
社会的にどうなっているかは知りません。でもあいまいでしょ。
そして、「2」の問題。ある個人が生活していて、その生活の場での話ですよね。日本全体で、の話ではないはずです。
こういう点をあいまいなままにすることは、誤解を生み、それは危険なことだと思うのです。
★8月30日の朝日新聞
特別警報、きょうから 「一生に1度」の災害念頭
気象災害や津波、噴火、地震で、一生に1度程度しか出合わない危険が差し迫った時に気象庁が発表し、安全の確保を強く促す「特別警報」の運用が30日午前0時に始まった。
・・・
発表の目安は「『その地域』で50年に1度の危険が予想される時」。災害への耐性が地域ごとに違うため、地域によって具体的な基準は異なる。
ここでやっと「『その地域』で50年に1度の危険が予想される時」と明示的に書かれました。
私は、暗黙の裡に(implicitに)というのは大嫌いでして、大事なことはすべて明示的に(explicitに)表現するべきだと考える人間なのです。
気分が少し治まりました。
★8月30日の読売新聞
気象庁「特別警報」開始…甚大被害予想時に発表
気象庁は、甚大な被害が予想される気象現象について警戒を呼びかける「特別警報」の運用を、30日午前0時から開始する。
・・・
想定しているのは「50年に1度」の大雨、大雪などで、超大型の台風や温帯低気圧が接近した時などにも発表される。津波や地震は、すでに運用されている大津波警報や緊急地震速報の基準を適用する。
今夏の中国、東北の豪雨では、気象庁は計4回にわたって「特別警報に相当する」と注意喚起を行うなど、先行的な運用が始まっている。同庁では「特別警報が発表されたら、ただちに身を守る行動をとってほしい」と呼びかけている。
『その地域で』の明示がないですが、「数十年」のあいまいさは回避されてますね。
★毎日では30日当日の記事がなくって、8月29日付
特別警報:運用、あすから開始
数十年に1度の大雨や暴風などが予想され、重大な災害が起こる可能性が著しく高い場合に気象庁が発表する「特別警報」の運用が30日午前0時から始まる。
あいまいだよなぁ。
★東京新聞がとても分かりやすい記事を書いていました。共同通信からの配信記事ですが。
「特別警報」30日に運用開始 気象庁、重大災害の恐れに(2013年8月29日)
気象庁は30日、豪雨などで重大な災害が起こる恐れが高まった場合に発表する特別警報の運用を始める。大雨、暴風、高潮、波浪、大雪、暴風雪の6種類を新設し、それぞれの地域で「数十年に1度の現象」を基準に市町村単位で発表する。
29日に記者会見した気象庁の羽鳥光彦長官は「命に関わる非常事態が迫っていることをお知らせする情報。直ちに命を守る行動を取ってほしい」と話した。
大雨特別警報は、発表の目安とする指標として、3時間雨量や土砂災害の危険度を示す「土壌雨量指数」などが、50年に1度となる数値を地域ごとに決定。指標を超えたか、超えると予想した場合に発表する。(共同)
「50年に1度となる数値を地域ごとに決定。指標を超えたか、超えると予想した場合に発表する」
ちょっと分かりにくい表現ですが、「地域ごとに決定」というところが『その地域で』という意味になります。
で、東京新聞では、記事本体の他に、解説記事を書いていて
【ナットク!Q&A】気象庁「特別警報」 「50年に1度」が目安
という解説です。8月28日付で掲載したようです。
・・・
Q 具体的には、どんな時に特別警報を出すの?
A 大雨や大雪なら「数十年に一度の雨量か降雪量」となる場合に出す。暴風、高潮、波浪、暴風雪なら「数十年に一度の強さの台風か温帯低気圧」の場合だ。Q 「数十年に一度」と言われてもピンとこない。
A 確かにそうだね。そこで気象庁は詳しい目安を決めた。例えば大雨だと、まず全国を五キロ四方のマス目に区切る。そして、三時間の雨量が「五十年に一度の値を超えた所」が十マス以上か、四十八時間の雨量が「五十年に一度の値を超えた所」が五十マス以上、まとまった地域に現れ、雨が降り続く場合に特別警報を出す。雨量だけでなく、降った雨が土の中にどれだけ含まれているか(どれだけ土砂災害が起こりやすいか)を示す「土壌雨量指数」も考慮に入れて判断するんだ。
台風は、伊勢湾台風級(中心気圧九三〇ヘクトパスカル以下、風速五〇メートル以上)の勢力で本土に迫る場合に特別警報を出す。Q 「五十年に一度」って、どれぐらいの大雨?
A 場所によって違ってくる。九州や四国の太平洋側、紀伊半島や伊豆半島など、もともと雨の多い所では、相当たくさん降らないと「五十年に一度の値」を超えない。気象庁は過去の観測データから、市区町村ごとに「五十年に一度の値」を計算済み。例えば、東京都千代田区だと三時間で一六六ミリ、四十八時間で三八三ミリ。これが雨の多い静岡県西伊豆町になると、三時間で二〇九ミリ、四十八時間で六二二ミリという具合だ。Q 千代田区の「三時間で一六六ミリ」って、どんな雨?
A 一時間に五〇ミリ以上だとゴーゴーと滝のように降る非常に激しい雨で、傘も全く役に立たない。それが三時間も降り続くような雨だ。
・・・(後略)
きちっと明示的な解説がなされていてスッキリしますねぇ。
命にかかわるような重大なことなのですから、きっちりわかりやすく明示的に周知徹底すべきだと思います。
★ところで、今年の7月23日の午後、我が家からさほど遠くない大田区田園調布本町で1時間あたりの雨量が60ミリを記録しました。ベランダから水があふれたりして、かなりすごかったのですが、短時間だったからいいけど、あれが3時間続いたら危険ですね。身の危険を感じます。おそらく家の前の道路が冠水する。そうなったら「特別警報」が出そうですね。
すごく昔、筑波で科学万博があったとき、道路が30cmくらい冠水し、その水圧でトイレの水が逆流したことがあります。そばの都道でマンホールの蓋が水圧で吹きあげられ、その穴に人が落ちて亡くなったりもしました。あの時の降雨はおそらく「特別警報」ものだったでしょう。{水の中を車を走らせて、エンジンのスタートモーターがショートし、交換する羽目になったのでしたっけ。}
いろいろと読み比べて、ご報告しました。
参考にして下さい。
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