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2013年6月24日 (月)

ナガサキアゲハ:3

0611_1nagasaki1 2013.6.11
朝8時前。
お、前蛹になっている!
「終齢幼虫がサナギになるために、体のまわりに帯糸を巻いたときから、幼虫の皮を脱ぐまでの期間を前蛹といいます」{平賀壮太 著「蝶・サナギの謎」トンボ出版(2007年)、から引用}
確かにそうなっていますね。
腹端部は糸のマットに固定してあります。
後でする話との関係で、体の横の気門に注目しておいてください。
0611_1nagasaki2
前蛹の頭部付近のアップ。
幼虫から蛹への大変化を成し遂げる前の、静かな「祈り」の時間とでもいいましょうか。
体内では大きな変化が起き始めているはずです。

平賀先生の「蝶・サナギの謎」から引用します。記述されているチョウはアゲハです。

①終齢幼虫はサナギになる前に最後の脱糞(下痢便)をして、サナギになる場所を探し歩きまわる。
②サナギになる場所を定めて静止する。
③糸を吐いて足場を作る。
・・・
⑥たんねんに糸山を作る。
⑦糸山に尾脚を固定する。
⑧糸を吐いて帯糸を作る。右側から始めて左側に糸を固定し、再び糸を吐きながら右に戻る動作を7回半行い、帯糸を太くする。
・・・
⑩帯糸は腹節2と腹節3の間にかかっている。
⑪2~3時間後に腹脚を台座から離す。

写真の前蛹はここまで進行した状態ですね。
腹脚が離れています。

★翌12日
0612_1nagasaki1 6.12
朝、7時18分。
見ると、姿はまだ前蛹ですが、幼虫の皮がパリパリに乾燥して、皺が寄って、もうはがれそう。
なんだか、体の横に白い線があるみたい。
→※これについては後ほど詳細にお話しします。
0612_1nagasaki4
表面に皺が寄って、脱げそうですね。

そうこうするうちに脱皮が始まりました。
大声で、妻を呼び二人で観察。
前蛹の脱皮の瞬間というのはなかなか見られないものなのです。
0612_2nagasaki1
背中が割れて、皮を腹端の方へ脱ぎ送っているところ。

平賀先生の本から

⑫脱皮前になると皮に皺がより、胸部背面が割れてサナギの突起が現れ、幼虫の皮を脱ぎ、最後に尾端の突起を抜き出して糸山に押しつけて固定する。この脱皮の過程で帯糸は後胸節の上に移動する。体をくねらせて、脱いだ皮を落下させる。
・・・

0612_2nagasaki2
腹端近くの拡大。側単眼が見える頭部、脚、腹脚、みんなここに固まっています。
0612_2nagasaki3
蛹の腹端部がもう糸山に固定されています。脱け殻は全部腹の上。
0612_2nagasaki4
体をよじって脱け殻を落とした瞬間です。
7時25分でした。
腹がまだ大きく曲がっています。
ここで気づいたこと。
0612_2nagasaki5
蛹の頭の付近なのですが、管状の構造が2対4本見えています。
外側の短めのものは触角ですね。
内側の長めのほうは口吻です。
その間に前脚と中脚があります。
触角の外側には、前翅の姿が見えます。これははっきりしている。
前翅と重なって、縁だけですが後翅も見えています。
帯糸の位置は、後胸のところにずり上がりました。また糸の色も黒くなりました。前蛹になった時は無色の糸でしたが。酸素に触れて色が変わり、硬くなったのだと思います。
0612_2nagasaki6
脱皮の活動を終えて、落ち着いたのでしょうか、腹の屈曲が少なくなりました。
見ていた私たちも、ここでホッと息が抜けました。
0612_2nagasaki7 {写}N7
真横からも見てやって下さい。
触角の先端のところが浮いていて、管状だということが鮮明です。
脱皮というのはどのレベルでも緊張させられます。よかったね。

★ところで「※」の話。
「体の横に白い線があるみたい」
これは、パソコンの大きな画面で見て分かりました。
0612_1nagasaki2
幼虫の皮が薄く半透明になって蛹の体から浮いています。
写真の右の方の、幼虫の皮の気門を見て下さい。
気門から管が出て、蛹の体につながっています。
この構造を左へ見ていくと、幼虫の皮がたくさん腹端へ送られた部分で管が長く出ているのです。
一本につながって見えた白い線は、幼虫の気管が抜けて、並んでつながって見えていたのですね。
「気管の脱皮」をはっきり見たのは初めてでした。ちょっと興奮気味。
知識としては知っていたけれど、実際、こういう風に抜けるのか、とまぁ、妻にもこの写真を見せて、二人で騒ぎまくっておりました。
0612_1nagasaki3
腹端部。皮がずいぶんもう送られてきています。腹脚も抜け、気管も抜けています。
こんな風に拡大して見たのは初めてです。

★気管なんて体内のものが、何で抜けるのだろう?
人間の肺を考えて下さい。口や鼻から吸い込んだ「外界」の空気はそのまま肺の中に入り、そこで「体内」の血液に酸素を渡し、二酸化炭素を受け取って出てきます。つまり、空気は、本当の意味での「体の中」へは入っていなのですね。体の表面が内側へくぼんで肺になり、その薄い膜を介して、酸素や二酸化炭素の受け渡しをしているのです。
昆虫では肺がなくって、気門から気管を通して体内に酸素が送られる、ということを学びます。
気管は形状は「管」ですが、外皮の細いくぼみなのです。気管という管は、外皮と一続きなのですね。ですから、外皮を脱ぐときは、気管も一緒に脱ぐしかないのです。
Kikan
概念図を描いてみました。
動物の体では、体内というものは外界とは厳密に仕切られています。
体に穴があいて、体内に体外が侵入したら、生命の危機です。
厳密にはクチクラだとか何層にもなっていますが、一枚の仕切りで内外が仕切られていると簡略化しました。
気管は、「くぼみ」です。そして、そこでガス交換をしています。
それが図の左。

図右:脱皮前には、新しい表皮が形成されて、古い表皮が脱ぎ棄てられます。
ということは、気管も一緒に脱げるのだということが理解して頂けると思います。
セミの脱け殻を拾って中を見ると、白い糸のようなものがたくさんありますね。あれも気管の脱け殻なのです。体の表面の皮を脱ぐ、ということは、一続きになったもの全部を脱ぐことなのですね。
おそらく、消化管の表皮も脱いでいるのでしょう、論理的には。
自分の目で確認はしていませんが。

★私のホームページです↓
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/freestdy/ecdysis.htm
昆虫の皮膚と脱皮

かなり詳しいです。興味がおありでしたら読んでみてください。

★「ナガサキアゲハ:2」はここ↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-977d.html

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