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2013年6月10日 (月)

ビネガーシンドローム

★こんな記事がありました。

「時代の証人」写真原板守れ:収集・保存作業 国内で本格化(6/5)
 トランクの中で酸っぱい臭いを漂わせるフィルム。溶け出したフィルムのしみが広がる紙のネガ袋ーー。・・・
 1950年代ごろからフィルム素材の主流となった酢酸セルロースは、高温多湿の密閉状態が続くと「ビネガーシンドローム」と呼ばれる変色や溶解を起こす。
・・・

元化学教師として、一言。
セルロースはグルコース(ブドウ糖)が連なった高分子です。
もともとグルコースには-OH基が1分子に5つあります。そのうち2つはグルコース同士がつながって高分子になるために使ってしまいますので、セルロース中のグルコース単位には-OHが3つあることになります。

細長い分子と分子の間で、
-O…HO-
   H
 という水素結合による橋渡しがいっぱいできて、これがセルロース繊維の独特な性質を生み出します。

さて、-OHはアルコール基です。{酔ったりはしません、このーOHで。}
でもアルコール基ですから、酢酸の-COOHとの間で、「エステル結合」をします。
それが「酢酸セルロース」なのです。
フィルムベースのほか「アセテート繊維」というのも酢酸セルロースです。

エステルというのは、-OHと-COOHから、HOが抜けてエステル結合と名前の付いた結びつきでできるものです。
それが「高温多湿の密閉状態が続くと」逆に、水がエステル結合に入り込んで切れます。これを「水が入って分解する」ので「加水分解」といいます。
加水分解すれば当然、酢酸ができますから「酸っぱい臭いを漂わせる」ことになるのです。
酢酸の薄い溶液は食酢=vinegarですので、
「vinegar syndrome」となるのですね。
敢えて訳せばフィルムの「食酢症候群」とでもなるのでしょう。

エステルというと、化学用語で身近ではないような気がするかもしれませんがちがうんですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AB
↑これはエステルの話ですが、「エステル香料」についても触れています。果実臭がするエステルがあるのですね。
強烈な悪臭の酪酸とエタノールから、酪酸エチルというパイナップルの香りの物質ができます。
これを生徒にやらせると面白いです。

石鹸は油脂から作ります。
油脂は脂肪酸とグリセリンのエステルです。
で、アルカリ性で煮ると加水分解が速くなって、グリセリンと脂肪酸ナトリウムができますが、この脂肪酸ナトリウムが石鹸の主成分なのです。
身近でしょ。

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