PM2.5
★朝日新聞の土曜日のbe という版に「いわせてもらお」という、面白話のコーナーがあります。そのひとつ。
[いわせてもらお](3/9)
◎大気汚染物質
中学2年の娘が、自宅で友達と社会科の試験勉強をしていた時の会話。娘「中国で社会問題になっているPM2.5って何?」。友達「細かい粒子が飛んでくるんだけど、午後2時半に多いから、そう呼ぶんだよ」。違うと思う。(大津市・直径2.5μm以下だから・48歳)
★さて、「2.5μm以下」の「粒子状の物質」=「Particulate Matter」で正しいのですが。
その大きさを、どうやって、測っていると思いますか?
物差しで測るわけにはいかないし・・・
顕微鏡で覗いて、測るのかな・・・
それとも、2.5μmに「目が揃った」フィルターを作って、そこを通過してくるもの、とか・・・
私も、漠然と考えていたのでよく分からなかったのですが、国立環境研究所のサイトで知りました。ちょっと面白いというか、思いがけない方法です。
http://www.nies.go.jp/kanko/news/20/20-5/20-5-05.html
環境問題基礎知識 「SPM,PM 2.5,PM 10,…,さまざまな粒子状物質」
こういうページです。
このページの最後からの引用を先にお読みください↓
執筆者プロフィール: 独立行政法人化後,略称ではあるがPM 2.5・DEP研究プロジェクトに所属して,まさしく粒子の研究に携わっている。ある人にPM 2.5と言ったら,午後2時半のことですかと聞き返されたとか? 何とか早くPM 2.5の問題を解決したいと思っている。
最初の「いわせてもらお」の誤解は結構広く流布しているのかもしれませんね。
この記述を知っていたので、「いわせてもらお」を、さらに面白く読んだのでした。
★では本題。どうやって粒子のサイズを測っているのか?
・・・
ポンプで空気を吸引して粒子を含む空気の流れを作り,その流れを曲げた時に大きい粒子は慣性によって流れから外れ,細かい粒子は流れに乗ってそのまま進むという原理を応用している。この場合の粒径はものさしで測った長さではなく,空気の流れの場の慣性にかかわるもので,空気力学径と呼ばれている。以下で出てくる粒径はすべて空気力学径を示している。例えば,PM2.5は空気力学径が2.5μm以下の粒子のことである。ただし,測定原理上2.5μm以下の粒子といっても,2.5μm以下の粒子を100%含み,2.5μmを越える粒子は全く含まれないというものではない。粒径別の捕集効率は図のような曲線となっており,PM2.5は捕集効率が50%となる空気力学径が2.5μm となる粒子のことである。
・・・
こうやった測っているのだそうです。
「曲がりにくさ(やすさ)」なんですね「空気力学径」というものは。
ということは、実際に粒子の「大きさ」だけではなく、粒子の成分による「質量」、も影響しそうですね。金属酸化物の微粒子だと曲がりにくいとかね。
粒径が完全に2.5μmに揃っているわけではなく、そのあたりを中心にして、大小入り混じっている、というように理解した方が正確です。
さらに詳しいことは上にリンクした国立環境研究所のサイトをお読みください。
★ところで、元化学教師としては、質量分析法(Mass Spectroscopy)というのはそれなりに知っているのです。
田中耕一さんがノーベル賞をとったのも、質量分析法がらみでしたね。
高校化学では、同位体の話の時に出てきます。
原子核内の陽子の数は同じで、従って同一元素でありながら、中性子の数が異なるために「質量数」の違う同位体というものが存在するわけですね。
同位体をどうやって識別・検出するのか?
ごく原理的にいうと、原子をイオン化して加速して磁場の中を通過させます。
荷電粒子は磁場から力を受けて軌道が曲がります。
この時、質量の大きいイオンは曲がりにくく、質量の小さいイオンは曲がりやすい、という原理なんですね。
ということで、曲がりやすさの差を利用する、という概念には私たち化学屋はなじみが深いのです。
で、今回は「空気力学径」という「曲がりやすさの尺度」を知り、なるほどなぁ、と納得したわけでした。
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