« つぼみ 2種 | トップページ | 線路際のスイセン »

2013年3月13日 (水)

メタンハイドレート

★3月12日 NHKの昼のニュースを見ていたら

海底からメタンハイドレート採取に成功(3月12日 11時51分)
 資源エネルギー庁は、将来の国産天然ガスの資源として期待されている「メタンハイドレート」について、愛知県と三重県の沖合で世界で初めて海底からのガスの採取に成功したと発表しました。
 発表によりますと、12日午前9時半ごろ、愛知県と三重県の沖合で、国の委託を受けた独立行政法人のJOGMEC=石油天然ガス・金属鉱物資源機構が中心に進めているメタンハイドレートの試験開発で、海底より数百メートルの深さの地層から天然ガスの採取に成功しました。
 ・・・

というのですね。
いいけどさ。メタンハイドレートを「掘り出した」のではなく、「ガスの採取に成功した」のだそうですから、一言でいいから、どうやってガス化したか言ってほしかったな。
元化学屋としては、メタンハイドレートは「低温・高圧で生成する」というくらいは常識的に知っています。とすると、ガス化するには「温度を上げる」か「圧力を下げる」しかないんですよね。どっちかな。
温水を注入してガス化させたか。掘削管の内部の圧力を下げてガス化させたか。
どっちかですよね。

ネットの新聞サイトを見たら
朝日では

2013年3月12日9時29分
メタンハイドレート採取作業開始 愛知、成功なら世界初
・・・
 12日午前6時前からは、ポンプで水をくみ上げて地層の圧力を下げる作業が始まった。圧力が下がると、メタンハイドレートは水とメタンガスに分解される。それを海に浮かぶ海洋研究開発機構の探査船「ちきゅう」で回収する。これまではカナダの永久凍土層から取り出したことはあるが、海底から生産するのは今回が初めてだ。

2013年3月12日11時48分
メタンハイドレート、愛知県沖で採取 世界初、海底から
・・・
 取り出し作業は12日午前6時前から始まり、ポンプで周辺の水をくみ上げることで地層の圧力を下げた。圧力が下がると、メタンハイドレートは水とメタンガスに分解される。
・・・

なるほどね。圧力を下げるのか。
その概念図もついていました。
http://www.asahi.com/business/update/0312/TKY201303110894.html
↑ここ。

毎日、読売、日経なども覗いてみたのですが、圧力を下げてガス化したことに言及しているものはありませんでした。
ちょっとしたことなのですけどねぇ。
日本にも資源がある、という点ばかりはしゃいでも仕方ない。
出来事の仕組みにも簡単に触れてほしかったですね。
速報性ではテレビに負けるかもしれない新聞メディアですから、逆に今一歩深く踏み込むこともできるのではないでしょうか。

資源エネルギー庁のサイトです。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2006EnergyHTML/html/i1240000.html
第1部 エネルギーを巡る課題と対応  第4節 エネルギー源の石油依存低減

ここに、メタンハイドレートの図があります。
借用します。
Methanehydrate 【第124-3-3】メタンハイドレート結晶構造の一部を構成する5角12面体

COLUMN メタンハイドレートとは
 メタンハイドレートとは、低温・高圧の条件下で、水分子の結晶構造の中にメタン分子が取り込まれた氷状の固体物質(理論化学式:CH4・5.75 H2O)のことで、1m3のメタンハイドレート(メタンハイドレート結晶構造の空間に完全に隙間なくメタンが取り込まれている場合)を分解すると、水:0.8m3とメタンガス:172m3(大気圧下、0度C)と、非常に大量のメタンガス(天然ガスの主成分)を得ることができます

水分子がHOであって、H-O-Hが約104度くらいに曲がっている、ということは高校で化学を学んだ方は耳にしたことがあるでしょう。
上の図をよく見て下さい。
なんだか酸素原子の周りに水素原子が3つあるようにみえますね。
水分子同士の水素結合のせいです。
H-O-H
  |(水素結合)
  H-O-H
直線的にしか書けませんが、隣の水分子の水素原子と相互作用して、弱い水素結合ができるのです。
個々の水素結合は弱いですが、たくさんあれば強くなる。
私たちが日常生活で使う「氷」も水素結合で水分子がつながりながら整列したものです。
生物の遺伝情報を担うDNAが2本の鎖で「二重らせん」になっているのも、水素結合によるものです。二重らせんを保つ程度に強いのだけれど、遺伝情報を読み出すために2本をばらして、一方の情報を読み取るためには十分弱い、という微妙な力なのですね。水素結合は。

水素結合で水分子が「」をつくり、その内部空間にメタン分子を閉じ込めている、というのがメタンハイドレートなのです。日本語に訳せば「メタン水和物」ですね。
メタンが水と「化合」しているわけではないのです。「囲まれて」いるのです。
この水分子の籠が安定化するには高圧で低温でなければならないのです。

★ちょっとしたことなのですが、こういうことが常識化してくれると、元高校化学教師としては嬉しいのだけれどなぁ。

★と、ここまで昨日のうちに下書きを書いておいて、さぁ、アップしようと思い、念の為にJOGMECのサイトを覗いてみました(13日)。

http://www.jogmec.go.jp/news/release/docs/2012/newsrelease_130312.pdf

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
メタンハイドレート層からのガス生産の開始について

JOGMEC(本部:東京都港区、理事長:河野博文)は、渥美半島~志摩半島沖(第二渥美海丘)おいて、第1回メタンハイドレート海洋産出試験の準備作業を進めておりましたが、3月12日に減圧法によるガス生産実験を開始し、メタンハイドレート層からの分解ガスとみられるメタンガスの産出を確認しました。
今後、ガス生産実験を継続するとともに、データの分析を進めてまいります。
なお、可燃性ガスの生産実験ですので、安全のため現場海域に接近しての取材等はお控えいただくよ
うお願いします。
 ・・・(以下略)
注4:日本は、世界に先駆けて、カナダの陸上で、国際共同研究として過去2回に亘り、メタンハイドレート陸上産出試験を実施しています。2001年度に行った第1回の試験では、温度を上昇させてメタンハイドレートを分解する加温法(温水循環法)を試み、2007~2008年度の第2回試験では、圧力を低下させてメタンハイドレートを分解する減圧法を試みました。その結果、減圧法の方が、より効率的にメタンハイドレートを分解し、メタンガスとして産出できることを確認したことから、今回の海洋産出試験でも、減圧法による実験を計画しています。

なるほど、やはり「加温法」もあって、ちゃんとやってみたのですね。
すっごくナットクしました。
ほんのちょっとしたことなのですが、何が行われたのか、すごく見通しが良くなりますね。
マスメディアの「科学力」の向上を望みます。

« つぼみ 2種 | トップページ | 線路際のスイセン »

理科おじさん」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« つぼみ 2種 | トップページ | 線路際のスイセン »

2021年5月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
無料ブログはココログ