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2013年2月21日 (木)

隕石落下

★2月15日午前9時20分ごろ(日本時間12時20分ごろ)、ロシア・ウラル地方のチェリャビンスク州付近に隕石が落下しました。
このことについて、理科おじさん(じいさん)としてはお話しできることもそれなりにあるのですけれど、思いついたことだけちょっぴり書いておきます。

★2月18日夜7時30分のNHK「クローズアップ現代」を見ていましたら、理解に混乱がありましたね。
「衝撃波」という言葉の意味をクリアに理解しておられませんでした。
隕石が爆発しましたので、その爆発の「衝撃」によるのか、とか、地面に激突した「衝撃」によるのか、という感じで混乱しておられたようです。
空気中を音速をこえて運動する物体が必ずつくりだす「衝撃波」というものについてあまり知られていないんだな、と感じました。

私が子どもの頃、超音速ジェット機が低空を飛んで家のガラスが割れた、という事故もありました。
超音速ジェット旅客機コンコルドにも同じ問題がありました。
そんなこんなで、超音速と衝撃波について、私などはある意味で「常識的に」知っていた世代です。

私のHPでも少し解説しています。
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/117th/sci_117.htm
理科おじさんの部屋:第117回
波の話や実験をした時の記事です。その中の終わり近くから引用します。
<>

●お話2:ドップラー効果
・・・
Syougekiha
自分が出した波を、自分で追い越してしまいますので、図のような状態になります。この円(球)の外側をつなぐ線(円錐面)を考えましょう。(包絡線、包絡面といいます)。
 この面にすべての波の「密な部分」が並んでいますね。ですから、この面上で強烈な圧縮が起こり、そのすぐ後ろで激しい膨張が起こります。
 この面を「衝撃波」というのです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%96%E3%83%BC%E3%83%A0
ソニックブーム (Sonic Boom) とは、飛行機が音速を越えて飛行する際に、機首および翼後縁付近で発生した衝撃波のエネルギーが地上に伝播し、断続的な音波として観測される現象のことを指す。その大きなエネルギーを持つ音波は、しばしば地上に窓ガラスが割れるなどの被害を与える場合がある。

 ここに書かれている「窓ガラスが割れる」という話をU君にするために、上の図では(拙い)「家と窓」の絵が描き込んであるのです。
・・・

さて、この円錐の頂角が問題でして。
Shockwava
ある時点でOにいた物体が、1秒後にAに到達したとします。
この物体がOで発した音は、1秒後には半径OBの球面に広がっています。
音速をこえていますので、OA>OBで円錐になります。
図に書き込んであるように、sinθ=OB/OA ですね。
つまり、物体の移動速度が大きいほど、OAが大きくなり、θは小さくなり、円錐が尖るわけです。

朝日新聞の2月17日の記事では「音速の約50倍に相当する秒速約18キロで大気圏に突入したという」とありました。

OB=1とすれば、OA=50・OB だったのですね。すると
sinθ=1/50=0.02
ですから
θ=arcsin(0.02)≒ 1.15度
です。
自分で計算していて、えっホントかよ、と思いました。
V字に開いた角度にしても2.3度しかないです。
{アナログ時計の文字盤の1分の目盛りの角度が6度です。}
これでは円錐とはいいにくいですね。

隕石が爆発して、個数が増え、個々の隕石は質量が小さくなって減速していった。
その過程で、超音速物体として後ろに引いていた衝撃波の円錐がだんだん開いていって地表に到達し、その時に、いろいろ激しい出来事が起こった、ということでしょうね。

NHKの番組では衝撃波のイメージとして
Photo33112_2
こんな感じのものを使っていましたが、これでは音速の2倍にもなっていませんね。もう少し鋭く描いてほしかったな。
05_2
飛ぶ弾丸の後ろの空気の密度差をシュリーレン法で撮ったこんな写真も使っていましたが、これでマッハ2、3、4くらいでしょうか。

いや、音速の50倍というのはすごいものだ、と計算してみて実感しました。

★NHKの番組では、隕石の速度について、NASAの発表として
「それによりますと、小惑星が時速6万4000キロという猛烈な速度で大気圏に突入して爆発し、その一部が地上に落下したとみられるということです」
こう報じました。

なんだかなぁ、というのが私の感覚。
宇宙的な話をするのに、km/hですかぁ。
そりゃないでしょう。
m/sもしくはkm/sでやって下さい。

6万4000km/hというのは、「3600秒で6,4000km」ですから「17.8km/s」となります。朝日の記事の「秒速約18キロ」というのと同じですね。
{ついでに文句爺さんとしては「キロ」というのはやめてほしい。k(キロ)は「1000倍」という意味でしかなくって、単位にくっついて初めて意味を持つのです。mにくっついてkmは1000m。gにくっついてkg=1000g。リットル(L)にくっついてkL=1000L。とね。キロとだけ書かれても、文脈からそれがkgなのかkmなのかは分かりますけれどね、やはりおかしな表記であることには間違いないですよ。}

★宇宙的な速度
人工衛星の速度の下限=7.9km/s(2,8400km/h)
人工惑星の速度の下限=11.2km/s(4,0270km/h)
赤道における地球の自転速度=0.465km/s(1670km/h)
地球の公転速度=30km/s(10,8000km/h)
銀河中心を回る太陽系の回転速度=240km/s

今回の隕石の突入速度=18km/s
「はやぶさ」の地球帰還時の突入速度=12km/s

こういうふうにして眺めて見ますと、隕石は小さいけれど太陽の周りを回る衛星です。その速さは11km/sというスケール。
それが30km/sで飛んでいる地球に飛び込んで切るのですから、双方の速度の和や差程度のスケールになるわけです。人工衛星的なスケールではない。

「はやぶさ」は人工衛星が落下してくるのとは違って、今回の隕石のように、小惑星が落下してくるのと同じ程度のスケールの速度で帰還してきたということがよくわかりますね。

アメリカのNASAが「はやぶさ」の帰還に非常に注目していたというのは、人工衛星レベルを超えた惑星レベルの物体が人間のコントロール下に落下してきて、それを初めから終わりまで詳細に観測できる、ということがあったからでもあるのです。隕石の観測ではなかなかそうはいきませんからね。
「はやぶさ」の帰還をテレビで見た方も多いかと思います。輝いて、爆発しましたね。あの時だって、衝撃波を後ろに引いていたのです。万一、大気圏突入のコントロールを失って、人間の住む地域の上空低くを飛べば、ある程度の被害は起こりえたはずです。広大な無人の砂漠が着地点として選ばれたのはそういう意味があるのです。

★「銀河中心を回る太陽系の回転速度」というのもすごいでしょ。
1秒で240kmです。この速さで、太陽系が一周するのに約2億年かかるのです。太陽系誕生以来、20~25周したと考えられています。
宇宙や、それを研究する天文学の「スケール感」を感じ取って下さい。

★去年、こんなニュースがありました。最後にご紹介します。

サイエンスポータル編集ニュース
【 2012年10月12日 “天の川銀河”は20%重かった 】
 国立天文台の本間希樹准教授や鹿児島大学、韓国天文宇宙科学研究院、独マックスプランク電波天文研究所などの研究チームは、地球や太陽系が含まれる「天の川銀河」の基本尺度を、巨大な電波望遠鏡を使った三角測量によって正確に決定した。その結果、天の川銀河の回転速度は従来値よりも速く、銀河全体の質量もこれまでの推定値よりも20%ほど大きいことが分かった。
 天の川銀河の精密測量は、岩手県奥州市と鹿児島県薩摩川内市、東京都小笠原村、沖縄県石垣市の4カ所に設置された直径20メートルの電波望遠鏡を結んだ巨大観測システム(VERA;VLBI Exploration of Radio Astrometry)で行った。これらの4つの電波望遠鏡で同時に観測することにより、直径約2,300キロメートルの日本列島サイズの望遠鏡と同じ性能を持つ。その位置測定精度は10マイクロ秒角(3億6,000万分の1度)と、月面上に置かれた1円玉を地球から見分けられるほどの世界最高の観測精度だという。
 研究チームは、天の川銀河にある52個の天体の動きを精密に調べ、解析した。その結果、天の川銀河の基本尺度である太陽系から銀河中心までの距離は2万6,100±1,600光年銀河中心を回る太陽系の回転速度は秒速240±14キロメートルとの数値が得られ、その距離と速度から、太陽系は天の川銀河内を約2億年で1周していることが分かった。
 太陽系における銀河回転速度は1985年以来、秒速220キロメートルが国際天文連合による推奨値とされているが、今回の測量では、それよりも10%ほど早かった。太陽系と銀河中心までの距離は、推奨値とは誤差の範囲内で、ほぼ一致した。
 さらに、銀河の回転速度は銀河の重力と釣り合っていることから、銀河全体の質量を計算することができる。それによると、天の川銀河の質量はこれまでの推定値よりも約20%増加することが分かった。質量のほとんどは、天の川銀河に存在する正体不明の「暗黒物質(ダークマター)」によるもので、暗黒物質の量がこれまで考えられていた以上に大量であることを意味するという。

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