化学の教材、見っけ
★朝日新聞の「経済」の連載記事に、高校化学の教材を見つけてしまいました。
(アベノミクスって、なに?:10)日銀編 なぜ政府から独立しているの(2013年1月22日)
「輪転機をぐるぐる回してお札を刷る」「建設国債を(市場で)全部買ってもらう」。衆院解散が決まった昨年11月半ば、自民党の安倍晋三総裁は日本銀行にねらいを定め、刺激的な発言を繰り返した。
・・・
しかし、これはろくな結果を生まない。大量にばらまかれたお札の価値は暴落し、激しいインフレが起きる。第1次大戦後のドイツではパン1個が1兆マルクに上がった。第2次大戦後のハンガリーでは10垓(がい)(1兆の10億倍)ペンゲー札が印刷されるなど、お札は紙くず同然に。中央銀行の独立性とは、政府の言いなりにお札を刷らないための「防波堤」なのだ。
・・・
★化学・モルの授業
ノートに写してくれ、といってから
これ↓を黒板に、黙って書きます。
600000000000000000000000個の集団を「1モル」という。
生徒はなんだなんだ?と思いながら、まじめにノートに写そうとします。
「先生!ゼロがいくつあるのか、わかんねぇよ!」
そこでおもむろに、下の方から4桁区切りでカンマを入れていきます。
6000,0000,0000,0000,0000,0000
読めるか?
兆 億 万
6000,0000,0000,0000,0000,0000
「兆」までは誰でも読めます。
私が小学生のころの社会科で、日本の国家予算が「1兆円」に達する、って習ったものだ。
じゃ、兆の上は?
生徒の中に「けい」と言ってくれるのが必ずいます。
そう「京(けい)」だね。
今ならスーパーコンピューター「京」が知られていますから、おそらくみんな知っているでしょう。
京は理化学研究所のスーパーコンピュータの愛称ですね。計算速度が10ペタフロップス(1秒間に1京回の計算)なので、付けられた名前ですね。
じゃ、その京の上は?
誰も知らないクラスもあるし、何人かが知っているクラスもあります。
「がい!」
うれしそうに答えてくれます。
そう「垓」だね。
ということは~。
「6000垓個の集団を1モル」というんだよ。
君らは指数というと嫌がる人もいるけれど、10の指数というのは単純なんだ。
「ゼロ(0)」が何個つくかを示すだけだ。
だから、0が23個ついているので
6×10^23
こう表示するんだね。指数を毛嫌いしないでおくれ。
とまぁ、こう進んでいって、6千垓という数字の大きさを何とか多少なりとも実感させたいという工夫が続くわけです。
★冒頭の新聞記事を見て下さい。
「第2次大戦後のハンガリーでは10垓(がい)(1兆の10億倍)ペンゲー札が印刷され」たんですって。なんとまぁ!
ホントカヨ、知らなかったなぁ。
というわけで、「垓」という「桁」が使われたことがある、ということが分かりました。
これは化学の授業に使えますね、情けない話ですが。
ギネス記録にあるんだよ、と使って下さい。
「10垓ベンゲー札、600枚で『6千垓』ベンゲー」ですねぇ。トホホ。
★ウィキペディアも検索してみました↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3
インフレーション
ハンガリーのインフレーション
ハンガリーでは第二次世界大戦後に激しいハイパーインフレが発生した。このときのインフレーションでは16年間で貨幣価値が1垓3000京分の1になったが、20桁以上のインフレーションは1946年前半の半年間に起きたものである。大戦後、1945年末まではインフレ率がほぼ一定であり、対ドルレートは指数関数的増大にとどまっていたが、1946年初頭からはインフレ率そのものが指数関数的に増大した。別の表現でいえば、物価が2倍になるのにかかる時間が、1か月、1週間、3日とだんだんと短くなっていったということである。当時を知るハンガリー人によると、一日で物価が2倍になる状況でも市場では紙幣が流通しており、現金を入手したものは皆、すぐに使ったという。
1946年に印刷された10垓ペンゲー紙幣(紙幣には10億兆と書かれている)が歴史上の最高額面紙幣であり(ただし、発行はされていない)、最悪のインフレーションとしてギネスブックに記録されている。
なお、実際に発行された最高額面紙幣は1垓ペンゲー紙幣(紙幣には1億兆と書かれている)である。
※1京は1兆の1万倍(10の16乗)、1垓は1京の1万倍(10の20乗)。
経済に疎い私ですが、アベノミクスで日本がハイパーインフレになったりしませんように、祈ります。
生産に携わる世代はまだなんとか耐えられるとして、老人世帯はもう餓死するしかないですからね。
高校の時の先生が私に話して下さいました。
戦前、その時の教育の中で、生徒を戦場に送った。敗戦後、もう教育には携わるまい、貯えも多少あることだし、細々とそれで生きていけばいい、と思ったんだよ。でもね、あのインフレで、お金の価値がなくなり、お札が紙くずになってしまった、で、働かざるを得なくなった、自分には教師しかできなかった、恥ずかしながらそうやって今、君たちを教えることになったんだよ。
こういう話を、現役の高校生の私にしてくれましたっけ。
だからこそ私は自分も高校教師になりたくなってしまったのでした。
先生に恩返しできたかなぁ。
★おまけ
http://ja.wikipedia.org/wiki/SI%E6%8E%A5%E9%A0%AD%E8%BE%9E
「SI接頭辞」から引用
10n 接頭辞 記号 漢数字表記(命数法)
24 ヨタ (yotta) Y 一じょ[禾へんに予という字]
21 ゼタ (zetta) Z 十垓
18 エクサ (exa) E 百京
15 ペタ (peta) P 千兆
12 テラ (tera) T 一兆
9 ギガ (giga) G 十億
6 メガ (mega) M 百万
3 キロ (kilo) k 千
2 ヘクト (hecto) h 百
1 デカ (deca, deka) da 十 10
(0 なし なし 一 1)
−1 デシ (deci) d 十分の一 / 一分
−2 センチ (centi) c 百分の一 / 一厘
−3 ミリ (milli) m 千分の一 / 一毛
−6 マイクロ (micro) µ 百万分の一 / 一微
−9 ナノ (nano) n 十億分の一 / 一塵
−12 ピコ (pico) p 一兆分の一 / 一漠
−15 フェムト (femto) f 千兆分の一 / 一須臾
−18 アト (atto) a 百京分の一 / 一刹那
−21 ゼプト (zepto) z 十垓分の一 / 一清浄
−24 ヨクト (yocto) y 一じょ分の一 / 一涅槃寂静
10±6以上のSI接頭辞には、以下のような規則が見られる。
倍量の接頭辞は最後が a で終わり、記号は大文字
分量の接頭辞は最後が o で終わり、記号は小文字
ただし、メートル法の初期に作られた、10±3までの接頭辞は、このルールに従っていない。
コンピューターの発達で、メガ、ギガ、テラ辺りまではよく耳にするようになりましたね。
★参考
漢数字での命数法については下を参照してください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%BD%E6%95%B0%E6%B3%95
命数法
大きな数、小さな数の唱え方が載っています。
« ミナミトゲヘリカメムシ | トップページ | 春の便り:1 »
「理科おじさん」カテゴリの記事
- 化学の日(2022.10.26)
- 秒速→時速(2022.09.01)
- 風速75メートル(2022.08.31)
- 「ウクライナで生まれた科学者たち」(2022.05.31)
- 反射光(2022.05.09)
コメント