水の中のガラス
★2013年2月20日 (水)「反射率のグラフ」で、反射率の一般式を図中に書いておきました。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-4295.html
その式では、空気中から光が水やガラスに入射するという話にしていましたので、屈折率をnと表記していました。
本当は、空気の真空に対する絶対屈折率をn1、水の真空に対する絶対屈折率をn2とすると、空気に対する水の相対屈折率は(n2/n1)とするべきなのです。ただ、n1はほとんど1.0なので、省略していました。
屈折率n1の媒質1からn2の媒質2へ光が入射する場合の一般式は下の図中のようになります。
ここで、垂直入射を考えると、角度0でcosの項が1になって消えますので、n1とn2だけの式になります。(n2/n1)の形に整理した式を提示しました。
●以下の話で使う絶対屈折率は
水:1.33
普通のガラス:1.51
ベンゼン:1.50
ダイヤモンド2.42
★さて、本題。
◆水の中にガラス片がある場合
水→ガラスの相対屈折率=1.51/1.33=1.14
反射率=(0.14/2.14)^2=0.00428
反射率がものすごく小さいですね。
ということは、非常に見づらい、ということです。
空気中でのガラスなら、反射率は0.04くらいですので、反射光がさらに1/10に減ってしまうのですね。
水の中にガラス片が落ちていると、非常に見づらいので、危険です。けがをします。
プールや海で、遊んでいてガラスを割って落とすと、非常に危険だということが分かります。
高校3年生の選択授業ですと、多少危険な実験でもできます。
壊れたガラスごみを拾ってきて、これを、乳鉢に入れ、雑巾で蓋をして細かく粉砕させます。それを試験管にとれば、白い粉末、あるいは顆粒なのですが、水を入れると「アラ不思議!」非常に見づらくなります。生徒はびっくり面白がります。
無色透明な固体を粉末にすると空気中では「白く」なり、屈折率のほぼ同じ液体に入れると見えなくなってしまう。白の顔料は、結晶にすると無色透明なんだね、と。
ですから、二酸化チタンの結晶は宝石、粉末は優れた白色顔料なのです。
ダイヤモンドの粉末もきっと優れた白色顔料でしょう、けど、やってみたことはない。
宝くじにでもあたったら、粉にしてしまってもいいダイヤモンドを僕に買って下さい、などと生徒に言うと、先生!必ず買ってあげるよぉ、という生徒も必ずいますね、うれしいこっちゃ。
◆水とベンゼン
{今は授業でベンゼンを使うことはしない方がいいですが}
太い試験管に、水とベンゼンを入れてゴム栓をきつく締め、生徒の机間を持って回ります。
両方とも、無色透明な液体なのに、その境目が見えるのはなぜだ?
と問いかけます。
屈折率が違うんだ!と気づく生徒も出てきます。うれしいですね。
水とガラスの場合と数値的にはほとんど同じ。垂直入射の反射率は0.004くらいですが、試験管内で液面を横から眺める条件だと、結構境界面が見えるんですね。
かなり面白いデモンストレーション実験になります。
さらに。
ゴム栓に穴をあけて、ガラス棒を通して、長さは太い試験管の底にほぼ届くくらいにしておきます。
で、ベンゼンと水の入った試験管に、ガラス棒付きのゴム栓をして、また生徒の机間を回ります。
これがおもしろい。
上の層がベンゼン。下の層が水。それを貫くガラス棒。
ベンゼンとガラス棒ではそれぞれの絶対屈折率がほぼ同じ。ということは相対屈折率がほぼ1です。
ということは、垂直入射での反射率はほぼ0なのです。
それはどういう意味かというと。
上のベンゼン層内ではガラス棒は見えません。下の水層の部分でガラス棒が見えます。
変な気分です。
もともと透明な水・ベンゼン・ガラス棒なのですが、ベンゼン内のガラス棒は「透明人間」化して、見えなくなってしまうのです。
屈折率の差がないと見えなくなってしまう、というのは、結構、驚きですよ。不思議な経験です。
家庭でもある程度はできます。
サラダ油の屈折率は1.47~1.48だそうですので、1.51のガラスとかなり屈折率が近い。
ですから、似たような実験ができます。ガラス棒が無ければ、ガラスのビー玉とか何かガラスの飾り物でどうでしょう?
コップに入れたサラダ油にガラスを入れて見て下さい、非常に見づらいはずです。
垂直入射の反射率が0.0001程度のはずですから、これはかなり見えにくい。
最後。ダイヤモンドは別格。
屈折率が2.42ありますので、水に対する相対屈折率で1.82、ベンゼンに対する相対屈折率で1.61。
空気中のガラス以上にくっきり見えるはずですね。
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コメント
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こんにちは、かかしさん。
ご存知と思いますが、高分子吸水体も面白いですよ~。
http://tsukuba-ibk.com/omosiro/2013/01/post-242.html
かかしさん的には、お米とぎ器なんて~って言われそうですが!(^^)!
投稿: おもしろ!ふしぎ?実験隊 | 2013年2月25日 (月) 13時11分
高吸水性樹脂を「紙おむつ」から取り出して、水を吸わせる実験を高3の選択授業でやったことがあります。一枚のおむつから取り出した樹脂が水を吸収して1Lビーカーいっぱいに膨らんで逆さまにしても落ちてこないのですから、驚きでした。自重の1000倍近い水を吸収するのですから、屈折率が水と非常に近くなるわけですね。水を過剰にする実験はしなかったので、水中での見え具合は認識していませんでした。想像がつきます。
ところで、紙おむつの分解はある意味で非常に危険な実験なので、少人数で、監督者のコントロール下に、マスク着用で行わないといけません。樹脂粉末を肺に吸い込んで、肺の中で吸水してしまったら、取り出せなくなりますから。
投稿: かかし | 2013年2月26日 (火) 10時05分
かかしさん。危ないという情報もありがとうございます。参加者の子どもたちには、手についたりした時に、目をこすったりしたらいけないよと言っています。大きくなったのが、小さくなるのかな?なんて終了時のアンケートに書いてくれる子もいるのですが、実際次の日、一つくらいちっちゃな粒が転がったりしています。(#^.^#)
それと、捨てるときには、プラスチックごみとして捨てるというのも、大事ですね。
おむつから取り出すのは、綿が入って濁ってしまうので、ちょっと扱いずらいです。ナリカさんとかの教材用は、細かすぎるので、今回のような遊び方はできませんね。私のは、ブログにあると思うのですが、お店で購入した粒粒です。なかなか、いいですよ。これは、お祭りで『ぷよぷよ』と呼ばれていて、スーパーボールすくいのように、ぷよぷよすくいとして使われているようです。
投稿: おもしろ!ふしぎ?実験隊 | 2013年2月26日 (火) 21時03分
「紙」おむつだから環境負荷が小さい、と、もし受け取らせるようだったら、マズイですね。分解してみると、このおむつのどこが紙なんだ?と実感されます。プラスチックおむつですね。ちなみに、我が家の子育て時代は布おむつの時代でした。柔軟剤は陽イオン系界面活性剤ですので使用しませんでした。下手すると、水をはじくようになりかねません。なにも使わないでも、使い込んだ布おむつは、吸水性もよく、いろいろ利用できましたっけ。
投稿: かかし | 2013年2月27日 (水) 12時42分