胃酸・膵液
★前の記事で、「胃酸の主成分は塩酸だ」と書きました。
胃の内壁は粘液で保護されていますが、さて、塩酸を作る細胞自身は大丈夫なのでしょうか?
細かいことは省略しまして、全体像の把握を試みます。
実は、酸分泌細胞は、細胞内では塩酸を扱っていません。
細胞内では弱酸の炭酸を扱っています。
二酸化炭素と水の反応で水素イオンと炭酸水素イオンを作り、この水素イオンを細胞の外に汲み出すのです。「プロトンポンプ」という仕組みがあって、カリウムイオンを汲み入れて同時に水素イオンを汲み出すのです。
細胞の外では、カリウムイオン、ナトリウムイオンなどの陽イオンと、塩化物イオンなどの陰イオンが電気的に釣り合っています。
その状態のところへ、水素イオンが汲み出されてきて、カリウムイオンが汲み入れられてしまう。すると、水素イオンと塩化物イオンのペアができますね。これが塩酸です。強酸ですから、塩化水素として結合することはなく、イオンのままペアを組むことになります。
細胞内では弱酸を扱い、外部で強酸としてのイオンのペアにする。見事な工夫ですね。
(塩化物イオンを細胞外へ汲み出す仕組みなどもありますが、詳細は省略します)
★さて、炭酸水素イオンが残りました。これはまた、細胞外へ出されますが、これは分泌するのではなく、血流に乗ります。炭酸水素イオンはナトリウムイオンとペアを組んでアルカリ性を示すことになりますが、血液にはpH緩衝作用がありますから、血液がそうそうアルカリ性になってしまうことはありません。
この炭酸水素イオンは今度は膵臓で濃縮されて、かなり強いアルカリ性の膵液を作るのに利用されます。血液からは炭酸水素イオンはかなり除去されますね。
で、膵液は十二指腸へ分泌されて、胃の内容物=塩酸酸性の内容物と反応をして塩酸を中和します。
という具合で体全体としては「元に戻って」中性になるのですね。
分離して酸とアルカリを作り、中和反応によって元に戻す。
巧妙な仕組みですね。
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