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2013年1月17日 (木)

(ゴール)「三つの異なる箱を折れる展開図」

★数セミ、2012.11月号の「3通りの箱が折れる展開図」という記事の
2から3への長い道のり」という節に
図4があります。
↓これです
Zu1
この図のキャプションは

大きさ1×1×5の箱と 1×2×3の箱と 0×1×11の箱(?)が折れる展開図

です。
体積 0(ゼロ) の「箱」というのも妙ですが、「いわゆる二重被覆長方形」というものだそうです。
「被覆」という数学の概念は私には解説不能です。知ってはいるけど、解説できるほどには理解していないんですね、正直のところ。で、数学好きの方は、数セミの2013年1月号の特集「被覆のはなし」などお読みください。

で、この展開図について注があって

この展開図から二つの箱を折るのは、実際にはかなり難しい。興味のある読者はぜひ試してもらいたい。パズルとしてかなり楽しめることは請け合いである。

こうなると、やってみたくなる。
私は「手」の人だからなぁ。やってみましたよ。
Rittai3pattern
どうです。やったね。
こういう時は、小さい方がむしろ試しやすい。単位正方形を1辺1cmにして、作図して、ぐちゃくちゃ楽しみました。

1×1×5の箱は難しくないです。「5」という長さがどこから来るか、すぐ予想がつきます。
1×2×3の箱は少してこずりました。「巻く」という感じで作るんだろうと予想していましたから、予想外というほどではなかったです。
0×1×11の箱は「変」。
ただ畳むだけです。で、両耳として単位正方形が残りますから、それを半分にするだけ。
10+(0.5×2)という形で「11」になります。

まず、手で概形を作ってしまってから、折り線を赤いサインペンで入れて、開いて展開図を作り、再度組み立ててセロテープ止めしました。
単位正方形が小さいので、「折り目」の影響が大きく出て、形がゆがんでいます。折り目の影響を少なくするには、単位正方形を2~3cmくらいにするといいでしょう。
↓では展開図をお目にかけます。
Zu2
太線の部分を折り目にして下さい。
よかったら試して下さい。
「パズルとしてかなり楽しめることは請け合いである」

★さて、この話の最終章。一般化ですが、これは私の手に余りますから、ご紹介にとどめます。

「2×13×58の箱と 7×14×38の箱と 7×8×56の箱が折れる展開図」
というものがここにあります↓。
http://www.jaist.ac.jp/~uehara/etc/puzzle/nets/3box.pdf

ダウンロードして少し厚手のシャキッとした紙3枚にプリントアウトして指示に従って折って下さい。3つの異なる箱ができるそうです。

★そして結論
「三つの異なる箱を折れる展開図は無限に存在する」
すごいことになりました。
私が何か言うような問題ではないようで。

★今後の課題という最後の節で

 四つの箱が折れる展開図が存在するかどうか、今のところ、もちろん未解決である。そもそも、一つの多角形で折れる箱の個数に上限はあるのだろうか。ありそうな気もするし、なさそうな気もしないではない。・・・「複数の箱を折れる展開図」という問題一つとっても、未解決問題はたくさんある。
・・・
数学の最前線のビビッドな領域には、数多くの新しい未解決問題と日々の前進がある。学校で「答えがあることが分かっている問題」ばかり解いていると実感しにくいかもしれないが、数学の世界には未解決問題がたくさんあり、研究者は「答えがあるかどうか分からない問題」を解こうと日夜四苦八苦している。この二つの違いは大きい。そしてこの違いの大きさは、とりもなおさず、解けたときの喜びの大きさの違いでもあるのだ。

★最後に{かかしから}
スポーツ観戦する人は全員そのスポーツのプレイに参加できるだけの技量を持っていなければならないでしょうか?
そんなことないですね。
野球を見るのに、プレイをする技量がなくったっていいでしょ。
面白さが分かればいい。
ネット裏で見る人はかなり良く分かっている。
でも外野席から眺めて、選手たちのプレイを楽しむことだってできますよね。
音楽を楽しむのに必ず楽器の演奏ができる必要はない、でしょ。
楽器が演奏できれば音楽の理解の仕方がまた深まるのでしょうが、だからといって、楽器を演奏しない人だって音楽の深い世界に入れないわけじゃない。演奏会で音楽を楽しむことは当然できる。

私が数学に対してとっているポジションはこの外野席ファンなんです。
数学者たちが「『答えがあるかどうか分からない問題』を解こうと日夜四苦八苦している」のを外野席から眺めて楽しんでいるわけです。「解けたぞッ」という声が上がると、わぁホントだ、すごいなぁ、と外野で喜んでいるわけです。一応「おぉ」と「どよめき」くらいには参加できます。
数学を数楽して楽しんでいるわけです。

科学でも同じだと思うんですよね。全員が科学の研究者になるわけじゃなし。
科学の世界を外野席からでいいから眺めて楽しんでもらえると嬉しい。
そのためには、わずかばかりの「ルール」を知っていればいい。
私はそんなつもりで自分の授業をしてきたんですよ。
私の授業を聞いた人がみんな科学者になるなんて期待はしていません。
でも、みんなが科学を楽しめるようになってくれるといいな、とね。
科学を科楽してください。

★おまけ
http://www.jaist.ac.jp/~uehara/etc/origami/nets/index.html
「複数の箱を作ることができる展開図」のいろいろな話題があります。
よかったらお楽しみください。

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