鏡の話:10の1
裏返しの話
★実物と鏡像が裏返しの関係になるという話を前にしました。
空間を記述する3本の軸のうち、2本はそのままで1本が逆向きになってしまうからです。
「裏返し」にまつわるお話を、思いつくままに書いてみます。
まとまりなんか全然ありませんので、成り行きに乗って、その場その場をお楽しみください。
①カタツムリの目
すでに書いたものを引っ張ってきます。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_73e9.html
2008年5月19日 (月)「キセルガイ Part 2」
ここでは「カタツムリの生活」大垣内 宏 著、築地書館 という本を引用していますが、そのまた一部を引用します。
小触覚は味覚と嗅覚をつかさどる器官です。小触覚を動かして食べ物を判別しています。これらの触覚を出たり引っ込めたりさせるところをよく見ると、じつにおもしろい動きをしています。ちょうど私たちがセーターの袖口をつかんだまま脱ぐと、袖は中に引き込まれていき、セーターが裏返ってしまうし、手袋やくつ下を脱ぐとき、手袋の指やくつ下が裏返ってしまうことがありますが、これと同じように触覚は中へ中へと裏返って引き込まれていきます。
出てくるときは、これと反対の動きをして顔をだします。
おもしろいですよね。カタツムリもナメクジも同じ。あまり好かれませんけど、ナメクジの目をちょんと突っついて見て下さい。ちゃんと「裏返し」に引っ込みますよ。
くつ下に手を突っ込んで先端をつまみ、手を引いて靴下が裏返っていく様子をぜひ実験して観察してみることをお勧めします。これがカタツムリの眼なのかぁ、と感慨深いものがあるでしょう。
②アゲハの臭角
アゲハの幼虫は、興奮すると、「臭角」という赤い二股に分かれた角を出しますね。で、いわゆる「くさい」匂いを出す。私は個人的にはそうくさいと思っていませんが。あの匂いを嗅ぐと、おこらせちゃったのか、ごめん、ごめん、おこらないで、とひたすら謝ってます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B2%E3%83%8F%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6%E7%A7%91
アゲハチョウ類の幼虫は頭部と胸部の間に「臭角(しゅうかく)」という1対の角をもち、これが他のチョウ目幼虫と異なる大きな特徴である。この角は二股に分かれた半透明のゴムの袋のような構造で、種類によって赤から黄色といった派手な色彩をしている。ふだんは体内に靴下を裏返したように収納しているが、強い衝撃を受けると頭部と胸部を反らせ、しまっていた角を体液の圧力で反転し、突き出す。この角の表面にはテルペノイドを主成分とした強い臭い物質が分泌されており、外敵を撃退する。
体内にくぼんだ袋として収納していた「角」を、圧力で「裏返して」突き出すのですね。
③軍手
手袋を鏡に映すと、右手用が左手用になってしまって、裏返さなければならないのでした。
「軍手」も長く使っていれば手の形の癖がつきますが、新品は左右共用ですね。
軍手の鏡像は裏返さなくても、そのままで普通の軍手です。
左右性がないのが軍手の特徴であり、使いやすさです。
④軍足
昔、足に履くのは「足袋(たび)」でした。
右足用の足袋の鏡像は左足用になります。
裏返さないと右足に履けません。
足袋を裏返すのはやっかいだ。靴下のようには裏返りません。
さて、手袋の場合と同じで、足用の「左右性を消した履物」があったのです。
現在普通のソックスは左右はどっちでもいいですが、かかとがありますので、足の裏の部分は常に足の裏のところに来ます。で、穴が開きやすい。
履く度に足の裏部分がどこでもいいことになっていれば、長持ちしますね。どっちかに穴が開いても一足丸々廃棄しなくていいですね。
という経済性のために、軍用だったのでしょう、「軍足」というものがあったのです。
かかと部分もない、単なる袋です。知っている人は少ないかもしれませんね。
「軍足」は「グンソク」と読んで下さい。
⑤足袋ソックス
現代にも「足袋ソックス」というのがあります。
実は私はその愛用者。
左右の足の長さが違っていて、そのせいで、家の中で補装具を左足につけて室内を歩くときに、高さの差ができてしまうのです。若い頃は体のしなやかさでカバーできましたが、体は硬くなるし腰は痛むし、で、室内でも右足に底の厚みのある履物を履きたい。でも、スリッパ型だと、つっかけているだけなので、体の方向をねじったりしたときにコントロールしきれなくって転倒しやすいんですね。
で、草履サンダルが快適でいい。右足の指にはさんで使えますから、足の急な動きにもフォローしてくる。で、草履サンダルを履くためには、足袋ソックスがいいのです。{説明が長くなりました、ごめんなさい}
右足は激しく動くけれど、左足はそうでもない。で、足袋ソックスの右足用の方が必ず先に穴が開きます。穴があいたら捨てます。左足用が一つ残ります。
次のペアを使います。右足用に穴が開きます。左足用が残ります。
これで左足用が二つになりました。
そこで、片方を裏返して右足用にして使えるのですね。もちろん外出時には使いません。家の中だけで「内緒」に履いてます。
2足の足袋ソックスから、1足を再生する。なんてまぁ、エコな爺さんでしょう。
ここにも「裏返し」の技が生きているのでした。
エコといえば聞こえはいいけれど、「しわい」「しぶい」「けち」「吝嗇」というのと、まぁ、そう変わりませんね。
「渋い爺さん」というと何だかかっこいいなぁ。裏返しのソックスをはいているだけなんだけど。
しわ・い【吝い】けちである。しみったれだ。
しぶ・い【渋い】
①渋柿を食べた時のような舌を刺激する味がある。
②声などが、なめらかでない。
③はでやかでなく、おちついた深い味がある。
④不平そうである。にがりきっている。
⑤金品を出し惜しむ。けちである。
けち
①縁起が悪いこと。また、不吉の前兆。
②不景気。
③金品を必要以上に惜しむこと。しみったれなこと。また、その人。吝嗇(リンシヨク)。
④みすぼらしいさま。
⑤手ぬかり。
⑥ある語につけて、いまいましい意を表す。
りん‐しょく【吝嗇】過度にものおしみすること。けち。
↑広辞苑第五版から
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