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2012年12月13日 (木)

鏡の話:10の8

★ヒドラの刺胞の裏返しの話をしましたので、ついでに。すごい話を。

山下桂司 著の「ヒドラ」80ページから

爆弾どろぼう
 これまで紹介してきたように、多くのヒドラ類の刺細胞は、捕食者たちを寄せつけない、強烈な武器である。
 ところが、さすがに海は広い。この刺細胞をものともせず、ヒドラ類のポリプを好んで「爆食」する生物がいる。ミノウミウシ類である。背中に多数の紡錘形の突起があり、この外観がミノを背負っているようすにそっくりということで、この名前がついているようだ。彼らの食欲は実に旺盛で、体長が2cmくらいのミノウミウシの場合、茎の高さ数cmで数十本程度のヒドラ類のポリプ群体だと、一日以内に食べつくしてしまう。
 このミノウミウシ類、ヒドラ類のポリプの上を這いながらバクバクと食べて飲み込んでいくのだが、ただ食べるだけでなく、食べて取り込んだ刺胞を背中のミノ先端の袋の中に貯めこんで、ちゃっかり自分の武器として利用する。(盗刺胞とよばれている)。まさに爆弾どろぼうといえる。ただ、刺胞の攻撃を免れているわけではないらしく、ヒドラを食べている最中には実際かなりの攻撃を受けていて、一部の刺胞だけが未発射のまま取り込まれるということらしい。きれいに取り出された未発射の刺胞は、ミノ先端の刺胞嚢という袋の中にある、刺胞食細胞という独自の細胞内に包みこむようにして取り込まれ、ミノの先端に並べられる。
 これは、とんでもない巧妙さである。刺胞は細胞ではなく、ただのカプセル装置であり、コントロール不可能なむき出しの爆弾に等しい。つまりミノウミウシは、他人の装備していた武器爆弾を分解して中身をそっと取り出し、べつな新しい装置に並べて組み込み、自分専用の武器ミサイルとして配備し直すのである。・・・

とんでもない奴がいますねぇ。
{奴じゃないかもね。雌雄同体だからな。}

★実はこの話、私自身は別の読書で知って、びっくりしたものです。

「ウミウシ学 海の宝石、その謎を探る」平野義明 著、東海大学出版会、2000年5月20日 第1版第1刷発行

この本を、2003年の9月6日に見つけて購入して読んだのでした。
第2章に「盗刺胞」という節があります。

・・・
やっかいな刺胞動物を食べるだけでも凄いのに、ミノウミウシ類の多くの種は、食べた刺胞動物から刺胞を上手に「盗む」。・・・餌動物から盗んだ刺胞は、突起の中脈をなす中腸腺から、その刺胞嚢に運ばれ、そこに蓄えられる。
・・・
なぜ、一部とはいえ、刺胞を発射させずに取り込むことができるのか、まだ、はっきりとはわかっていない。
・・・
アオミノウミウシは、カツオノエボシ、カツオノカンムリ、ギンカクラゲを食べるが、刺胞嚢には、カツオノエボシの刺胞のみを、それももっとも大型のものだけを蓄えるという。先にも述べたように、カツオノエボシはわれわれヒトにも恐れられているクラゲの代表的なものである。
・・・
餌生物の細胞内構造を消化しないで取り出し、それを特別な細胞の中に取り込んで機能を失わないように保持する。化学成分を取り込む以上に、複雑で巧妙な仕組みが必要であろう。
・・・

とまあ、とてつもない話ですよね。
進化の過程で、どういうふうにしてそんな能力が獲得されたのか。
生物というものは、「不思議」の一言です。

★似たような話ともいえますが・・・

イソギンチャクやヒドロ虫の中にはサンゴのように共生する藻を持つものがあって、それを食べるミノウミウシ類などの中には、共生藻を餌から取り込んで自分のものにしてしまうものがいるそうです。藻類との一種の共生ですね。藻類をそのまま利用している。

なんと、さらに、「盗葉緑体」というのもあるのです。

後鰓類の中には、ちょっと変わった「太陽電池」をもつものがいる。餌海藻の細胞内にある葉緑体を取り込み、それを利用する囊舌類たちである。

なんてこった。刺胞という細胞内器官だけ利用するのと同様に、餌の藻類の細胞の中から葉緑体だけを取り出して利用するんですって。
参りますね。

盗刺胞=クレプト・ナイダからの借用で、クレプト・プラスティー、敢えて訳せば盗葉緑体とよばれるようになった。

というわけでした。なんとも、想像を絶する話だとは思いませんか。

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