鏡の話:4
Mirror1
ご覧ください。急須です。実物は右利き用ですね。
右手で取っ手を持って、注ぐと内側に注ぎ口が来ます。
鏡の中の虚像の急須は?
あれを取り出して、右手に持つと、「逆手注ぎ」になってしまいますね。
鏡像の急須は「左利き用」になってしまいました。
上下・左右・奥行きの3つの軸があるからなのですね。
内容的には手袋と同じ話なのですが、比較的見かけない出来事でしょ。
で、私としては気に入っていて、授業でもこの話をしましたっけ。
見て分かりやすい気がしますがいかがでしょう?
★このように、右手・左手のように、鏡に写した時に、重なり合わなくなってしまう性質が「キラリティ(カイラリティ)」なのです。
猫のマトリョーシカ人形。微妙に対称性が破れています。ですから、軸は3つ。
鏡に写した時に何が反転し、何が反転していないか楽しみながら考えてください。
★註:逆手(さかて)注ぎ
「逆手注ぎ」を忌む理由を詳しくは知りません。不調法な私です。
なんでも、侍が切腹する際に、介錯の刀の刃を濡らす時の柄杓の持ち方と同じだとか、罪人に末期の水を飲ませる時は柄杓を逆手注ぎにするとか。
要するに「死」との絡みです。
日常生活の中に「死」という非日常が突然入りこんでくることを恐れたのですね。で、「死」を「けがれ」として遠ざけたり、葬送儀礼に於いて、日常の所作とは異なる所作をして、非日常が日常に侵食してくることを避けようとした、ということでしょう。
{余計な註でした}
★私のホームページでも左右の問題を扱っています↓
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/biology/essay/L-R.html
体の左右
・普段あまり意識しないことですが、体には3本の軸があります。
「腹背軸」「前後(頭尾)軸」「左右軸」です。
・腹背軸まわりの揺れが「ヨーイング」、前後(頭尾)まわりの揺れが「ローリング」、左右軸まわりの揺れが「ピッチング」ですね。こういう用語でなら知られているかもしれません。
・人間の体は外見的には左右対称のような気がしますが、それでも結構、崩れはあります。
体内を見ると、心臓は左側に、肝臓は右側に。胃は体の右へ湾曲し、大腸は腹部右下から上行し、左へ行き、腹部左で下降します。
全然対称的ではないですね。
・・・
では、右利き用の急須を鏡に写してみましょう。
鏡像の急須がもし、そのまま鏡の外へ出てきたらどうなるでしょう?
右手で使えますか?左手で使えますか?
ここでたとえに使った「急須とその鏡像」のような関係を「chirality」(普通、日本語ではキラリティーといっていますが、英語の発音ならカイラリティーです)。
時々聞く言葉ですので、どこかで耳にしたら、この急須の話を思い出してください。
案山子:読み直してみたら、やっぱり急須を持ち出してましたね。
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