失敗は終了ではない
★山中さんのノーベル賞受賞でにぎわっていますが、iPS細胞そのものにはコメントしません。
山中さんを紹介する記事の中に下のような逸話がありました。
朝日新聞(2012年10月9日)
●テーマは「記憶」、中学で初の論文
山中さんの「初の論文」と友人の間で言われているのが、中学時代の自由研究「記憶能力について」。学校で優秀作品に選ばれたという。
当時、人間の脳に興味があったという山中さんが、でたらめな10種類の単語を覚えてから、1時間おきに何個覚えているかを自身で実験した。復習すれば、記憶が続くかも、何通りかで試している。最初から2時間以内が一番忘れやすいとして、復習するならこの時間で、効果は12時間くらいたって表れる――と結論づけた。ほかに印象の強さと記憶の関係についても調べている。
論文の最後には「研究は実験がスムーズで成功だったが、成功=完成ではない」とある。同級生が「常に目標をもって、反省しながら、努力を続けていくタイプ」と話す山中さんらしい結びで締めくくられた。
「成功=完成ではない」 これいいですね。
成功したらそれでピークに達しておしまい、ではなく、更にそこから先がある。
成功は次のチャレンジへの出発点。
昔、ある年配の同僚が、自分の人生の頂点は大学に入学したあの時だった、と懐古するんですね。
ある成功体験で自分を語ろうとする。そこから先に進もうとしない。それって、もう、今を生きていない、過去にすがりついて生きてるってことですよね。
私共のような引退老人にもよくあるんですよ。
かつての役職・肩書きにしがみついて、今を生きてない人がね。
成功は完成ではありません。
★失敗したらおしまいか。
教師現役時代から感じていたのですが、生徒があまりにも失敗を恐れすぎる。
ちょっとでも失敗したら、自分の存在が全否定されたように感じてしまう。
自然科学では失敗こそが前進の原動力なのにね。
失敗こそが出発点なんです。
失敗してこそ前進あり、なんです。
そんなことを、ふと思いました。
★iPS細胞について一言だけ言っとこかな。
・読売新聞では「iPS細胞(新型万能細胞)」としていましたが、これはちょっと頂けない。
「i」は「induced」の頭文字なんで、「induced」を「新型」と訳すのはちょっとなぁ。
・朝日新聞では「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」としていました。これが通常の訳です。
「induced」は「誘導された」というような感じですが、「人間が人為的に誘導した」のですから「人工」でもいいでしょう。
さらに
<iPS細胞> 皮膚などの細胞を操作し、心臓や神経など体のさまざまな細胞になれる能力を持たせた。様々な細胞になる「万能性」は、1981年に作ら れた胚性幹細胞(ES細胞)と同じだが、受精卵を壊して作るES細胞と違って、倫理的な問題を避けられる。induced Pluripotent Stem cell(人為的に多能性を持たせた幹細胞)の頭文字で、山中教授が名付けた。(2012年10月9日 朝日)
iPS細胞は、induced Pluripotent Stem cellの頭文字で、山中さん本人が名付けた。「i」だけが小文字なのは、はやりの米アップル社の携帯音楽プレーヤー「iPod」にあやかって、広く普及して欲しいとの遊び心だ。(2012年10月9日 朝日)
と解説されていました。
さて。「omnipotent」という単語をご存知ですか?「omni」と「potent」に分解できます。
「omni」は「全・・・」とか「総・・・」です、「すべて」。
「potent」は「力」とか「能力」です。
合わせて「omnipotent」は「全能の」という形容詞になります。
じゃあ、「pluri」は?
英語の辞書で、名詞の複数形に「pl.」って書いてありますよね。あれは「plural form」です。
「plural」は「複数の」「多数の」ということですね。多分ラテン語あたりが語源でしょう。
そうすると「pluripotent」は「多能」とうことになります。
「stem」は「幹」です。そこからたくさんの「枝」が出るところですね。
「stemcell」 は色々な能力に分化する前の「幹(みき)」の細胞。
全部合わせて「人為的に誘導された」「多能性の」「幹細胞」なのでした。
★どうも、余計なお世話でしたね。ごめんなさい。
iPS細胞そのものの解説なんか始めたら、もう止まらなくなってしまいますから、やめときます。教師時代は、日本人がノーベル賞を受賞すると、解説プリントを作って、1時間くらい話をしましたけどね。
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