虚数(その1)
★「無理数」「負数」と名前で「つまづく」話をしてきましたが、「虚数」も名前で コテン の方が多かったことでしょう。
「虚」なるものが「存在する」ってどういうこと?「実」なる数が存在するのはわかるけど。
とはいえ、そもそも「数」って存在してますか?
「数」というのは実在ではなくって、実在から抽出された概念なのですよね。
実数といったって、存在しているわけじゃないんですけどね。
なのに、虚数になると、「虚の存在」なんていう言葉の「意味」にひっかかってしまうんだなぁ。
★負の数を考えたときに、「-1をかける」と原点の向こう側へ180度回る、という操作で理解すると楽ですよ、とお話ししました。
原点からある方向へ延びる半直線上にあった数が、「-1」をかけることによって「向こう側の世界」=「負の世界」へ反転し、数直線になったのです。
この数直線上で、自然数、整数、有理数、無理数、超越数などが発展して、数直線は完全に「密」につまったものとなりました。
ところで、数直線の原点から垂直に立った方向というのは、開拓されてませんね。
半直線の「向こう側」のように、数直線の垂直方向というのもあるんですね。
{歴史的な発展過程をたどってはいません、悪しからず}
★操作的に考えましょう。
「-1をかける」という操作が「180度の回転」であるなら、
「ある操作」を数直線上の数に行う(かける)と「(反時計回りに)90度回る」という操作があったっていいでしょ。
その操作を2回続けて行えば180度回ります。
180度回る操作に「-1をかける」という名前をつけたように
90度回る操作には「iをかける」という名前をつけます。
何でもいいんです、実は、単なる名前ですから。
数直線上の「1」に「iをかける」と90度回って数直線から出てしまいます。
その数に、もう一回「iをかける」とまた90度回って、数直線に戻ってきますが、着地点は「-1」です。
そこで、「i」を「2回かけると-1になる」のですね。
「2回かけるとmになる」数を「√m」というのでしたね。
ですから、「i」という操作は「2回かけると-1になる」のですから「√(-1)」なのです。
それだけのこと。悩むほどのことでもない。
蛇足ですが4回「iをかける」と当然、元に戻ってきます。
そう約束すると、数直線から飛び出した側方世界が開けてきて、数の世界がまた一段と広がって自由で爽快な世界になるわけです。
数学的な拡張はいつも「自由の拡大」なのです。
気分いいですね。
一応の名前として、最初の数直線上の数に「実数」という名前を付け、原点で実数の数直線に垂直に交わる、「i」をかけた数の世界を「虚数」という名前をつけたのです。
あえて言ってしまえば、実数=「普通の数」の世界と、虚数=「側方に展開する数」というように考えてもいいでしょう。{かかし流です。数学本流ではありません。念の為。}
実数は完全に密ですから、それを90度回した虚数も完全に密な数の世界です。
{連続だとか完備とかいう用語はここでは使わないことにします。めんどっちい。}
★半直線だった数の世界が、「-1をかける」ことで数直線になり、数直線上で数が発展したのでした。
今度は、数直線に「iをかける」ことで、虚数という別の数直線を生み出しました。
いってみれば数直線から「数平面」への発展です。
この「数平面」上の点は、実数と虚数のセットで表現される数です。
a+bi
というように。
「実数と虚数のセット」ですから「実数と虚数の『複合数』」といっていいでしょう。
で、複合=complex で、 数=number
ということで実数と虚数がセットになった数をcomplex numberというのです。
これを日本語に訳して「複素数」としたのですが、これ、いい訳だったかなぁ。
複合数でもよかったのではないかなぁ。
で、複素数で構成される「数平面」なので、この平面を「複素平面」というのです。
★
英和辞典を見ますと
complex {形容詞}多くの部分から成る,合成[複合]の;複雑な.
なのですが、日本語で「コンプレックス」というと
コンプレックス【complex】〔心〕
①心の中で抑圧されて意識されないまま強い感情をになっている表象の複合体。病的行動の原因となることがある。精神分析の用語。
②特に、インフェリオリティ‐コンプレックス。「―を抱く」
[広辞苑第五版]
劣等感とかね、こんな感じになってしまう。
英語本来の意味もちゃんと日本に根付いてくれればよかったのにね。
名前としての「虚」にこだわらない方がいいですよ、というお話しでした。
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