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2012年10月12日 (金)

「無理」数・「有理」数

★2012年10月 8日 (月)の「平方根(ルート、√)の作図」という記事です。↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-7cfb.html

この記事を書いた時に、私は無造作に「有理数、無理数」という言葉を使いました。
数学が苦手とおっしゃる方の中には、「無理な数が存在するなんて変だ。「理がある」数ならわかるけど」というような感覚をお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。

科学や数学ではやたらと難しい用語が使われていてとっつきにくい、とお考えかもしれません。

実は、科学や数学の「用語」というのは、正確なコミュニケーションをするために、言葉の意味を狭く限定しているのです。

日常の言葉は、多様な意味を持っていたり、あいまいさを持っていたりします。
それが日常会話にはいいのですし、詩などでは、多様な意味が重なりあって新たな言語世界を切り開いて見せてくれたりもするわけです。

ですが、それでは科学の文章は書けません。ある言葉が著者と読者で違う意味になったのではどうにもなりません。ですから、意味を限定して使うのですね。それが、日常語の「ゆるさ」に慣れた方には窮屈に感じられるのでしょう。なれると、あいまいさがない分、すっきりしていいものなのですが。

★さて、「有理数、無理数」ですが・・・
広辞苑を引いてみますと

ゆうり‐すう【有理数】〔数〕(rational number) 二つの整数a、bによって a/ b の形で表される数。
むり‐すう【無理数】〔数〕(irrational number) 有理数でない実数。例えば √2,3√5,π(円周率)など。

こうなっています。定義は正確です。で、英語の部分を見て下さい。「rational」という言葉があります。
英和辞典では

rational
{形容詞}合理的な,道理にかなった;理性的な; 数 有理の.
irrational
{形容詞}不合理な;理性のない; 数 無理数の.

こうなっていますから、訳せば「有理数・合理数」「無理数・不合理数」となってしまうんですね。
数学用語を日本語に訳した時の失敗作の一つですね。
おそらく、数学に慣れない方は、この「合理・不合理」というような意味で捉えてしまって、変だなと感じられるのでしょう。

実は、もう一段先がありまして
ratioという言葉なのです。

ratio {名詞}((複数形)ratios)比率;割合(to); 数 比(to).

これです。「比」なんですね。
「平方根(ルート、√)の作図」の記事でも使いましたが、比を「a:b」と書かず、「a/b」のように書くのです。
分数を見たときに、これを「比」と見ることは、ほとんど学習していないかもしれないんですね。ですから混乱する。

「 二つの整数a、bによって a/ b の形で表される数」と広辞苑にあるのは
「 二つの整数a、bによって a:b の比の値として表される数」としたほうがいいのかもしれません。
「a:b」と「a/b」は同じものなのだという理解がここでは大切です。
ですから、有理数というのは実は「有比数」、無理数というのは「無比数」なのです。
整数の比で表せるか、表せないかの違いなんですね。
別に「合理的だ」とか「不合理な無理な数」じゃないのです。

というわけで、この「比」で表され得るかどうか、という一点に意味を絞って使えばこんな便利な言葉はないのですね。
言葉というラベルの日常語的な意味に振り回されると、本来の概念を見失います。
約束事ですから、ああそうですか、と気楽に相乗りさせてもらえばいい。
単なるラベルでしかない言葉に、意味を見い出そうとしない方がいいです。
意味を限定するための定義を理解すればいいのです。

科学用語に出会ったら、そんなスタンスで接してみて下さい。
気楽になりますよ。そして視界がクリアになります。
詩ではないのであいまいさはありません。

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