和音の可視化
★ちょっと前の記事「平方根(ルート、√)の作図」を書く時にインスパイアを受けた、季刊「理科の探検」(RikaTan)の2012年夏号「√2が開いた科学の扉」という記事には、ピタゴラス音階の話がちらっと載っています。
これにまたインスパイアを受けまして、ちょっと「和音の可視化」を試みてみましょう。
音階の話に深入りはしません。ピタゴラス音階、純正律音階、十二平均律について、和音を可視化してみようという話です。
★各音階で、ハ長調について、振動数比と、基音を100Hzとした場合の振動数を表にまとめてみました。
・純正律(Just intonation)では、うなりを伴わない純正な和音が得られるが転調・移調ができないと聞いております。ギターを昔ちょっといじった程度の音楽知識ですので、いい加減です、ご容赦を。
・転調・移調が自由な十二平均律(equal temperament)では、r=2^(1/12)(2の12分の1乗 ≒1.059)を12回かけると、振動数が2倍になるわけです。
表を見ると、振動数比が微妙に違います。当然、基音を100とした場合の振動数も結構違うものだな、ということが読み取れます。
★楽器の音の波形は複雑なものなのですが、ここでは音を完全な正弦波として扱います。(音叉の音が正弦波に近いです。)
和音というのはこの正弦波の足し算ですので、エクセルを利用して簡単に正弦波の足し算およびグラフ化ができます。
(初めは十進BASICという言語で書きました。このソフトは安全なソフトではあるのですが、今はフリーソフトを紹介するのがチト気分悪いご時世なので、エクセルで実験してみたところ、うまく行きますので、だれでも手軽に試せるエクセルでの試みをご紹介します。)
音楽そのものの話ならA=440Hzという振動数を使うのがよいのでしょうが、話はどうせ相対的なものですし、440Hzでは、1秒をグラフ化しても線が重なってつぶれてしまいます。
そこで、基音を100Hzにして、作図してみました。
本物の楽音の、ごく短い時間を拡大したものだと考えて頂けばよい、ということです。
●1純正律でのドとミ
きれいですね。すべてが狂いなく規則的に繰り返されています。これは耳に澄んだ音として聞えるパターンです。
●2ピタゴラス音階でのドとミ
振幅が変化する部分は「うなり」として、ざらつきが聞こえるのでしょうが、ドミの重ね合わせではうなりはあまり大きくないようです。
全体的には規則的に見えますが、細部を見ると乱れていて、完全な繰り返しにはなっていない部分があります。
●3十二平均律
うなりも発生していますし、細部はかなり不規則です。これが「濁り」なのでしょうね。
というわけです。
純正律はいくつ重ねても澄んだ和音です。
ピタゴラス音階は、3つ重ねるとさすがに唸りが聞こえそうですね。図中で3回くらい大小を繰り返しています。
十二平均律はというと、うなりが図中でほぼ2回で聞こえやすくなり、そのうなり自体も乱れていますので、耳の鋭い音楽家の耳には和音が濁ってしまうのだと思います。
★このグラフをお目にかけることが今回の記事の目的ですので、ここまで読んで頂きましたら、もう一回、それぞれのグラフを拡大して、「和音を目で見て」ください。
★
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%94%E6%AD%A3%E5%BE%8B
ウィキペディアの「純正律」という項目で、ここに「純正律と平均律によるド-ミ-ソの和音」などの視聴ができるようになっているのですが、私にはダメでした。聞き分けられません。
わっかんないや。いい加減な耳ですね。
和音を目で鑑賞するだけです。
★グラフの描き方ですが。
これ私が「ド・ミの和音」を作ったシートの一部です。
・一番左の列が時刻で1000分の1秒刻み。これを実際には1秒まで下に引っ張ります。
・本当は数値が表示されている状態でグラフ化するのですが、どういう式が書き込まれているかを表示してみました。
・平均律の場合は、2^(1/12)の値の入ったH1セルの値をを絶対指定して利用しています。
で、適当に、散布図でグラフ化して下さい。詳細は省略します。
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