それって樟脳舟?
★ネット上で新聞を読んでいたら、日経で面白い記事を発見。
水面移動の微小機械 京大など開発、水はじく物質放出(日経 2012/10/29)
京都大学の北川進教授は米ニューヨーク市立大学ハンター校の松井宏教授と共同で、水をはじく化学物質を放出しながら水面を移動する微小機械を開発した。特殊な結晶でできており、全体の大きさは約5ミリメートル角。研究成果は英科学誌ネイチャー・マテリアルズ(電子版)に掲載された。
微小機械は0.7ナノ(ナノは10億分の1)メートル角の立方体が整然と並んだ多孔性金属錯体で組み立てた。水をはじく疎水性がある「ジフェニルアラニン」という物質を内部に詰め込んだ。
実験では立方体を溶かす物質を混ぜた溶液に入れた。内部から疎水性物質が徐々に漏れ出し、水面を20分以上にわたって移動することを確かめた。これまでの人工材料に比べて、2倍のエネルギーを取り出せるという。
光や熱を利用して疎水性物質の放出を調整すれば、より高度な制御ができるという。
なるほどね、と思いつつ、それって樟脳舟と同じだよねぇ。
★
http://www.face-kyowa.co.jp/sclence/familiar/4-3-6_no_show/
協和界面化学という会社のサイトです。「ショウノウ舟はなぜ動くのか?」という記事です。
http://www.proto-ex.com/fmi/xsl/exp3/browserecord.xsl;jsessionid=75DB99AF66FBE905B41B284F384C85D1.cwpe1?-lay=%E6%9C%AC%E6%96%87%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC&-recid=1032&-find=-find
科学実験データベース「管理番号113 しょうのう舟を作ろう」
切り込みを入れたトレイの後部にしょうのうをつけます。しょうのうは,水の表面張力を下げる働きがあるので,舟の後部の表面張力が低下します。表面張力とは,水の表面が自分から縮んで小さな面積をとろうとする力のことです。舟の前後の水面に表面張力の差が生まれ,結果的に船が前へ進むことになります。
他に石けん舟,松ヤニ舟,セメダイン舟,ねりはみがき舟など,表面張力に関わるおもしろ舟は数多くあります。
というわけです。
「ナノテク樟脳舟」と言うべきなのかな。
★この研究に関する京都大学のプレスリリースを見つけました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/121029_1.htm
↑ここです。
タイトルは「水面を泳ぐ化学モーターを、生体から学んで開発-光や温度に応じて物質を運ぶ分子ロボットの開発に期待-」
・・・
さらに、運動の効率を上げるデモンストレーションとして、テール部分に切れ込みの 入ったプラスチック製のボートを作成し、そこにMOF-DPA複合体を積載しました。こ のようにして作成した”MOFボート”は、DPAの放出方向が一方向に制限されたこと から、MOF-DPA単体に比べて運動速度および寿命が大幅に向上することが明らか になりました(図4)。
・・・
MOFは「多孔性金属錯体」、DPAは「ジフェニルアラニン」のことです。
この「図4」というのを見ますと、まさしく「樟脳舟」なのでした。よろしければプレスリリースをお読みください。
私の直感も鈍ってはいないようです。
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