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2012年8月16日 (木)

停電

★「パリティ」(2012.07 丸善)という物理系の雑誌に
   「大規模停電はどうして起こるか?」加藤政一
という記事が掲載されていました。ためになりました。

本文中にある式は省略しますが、発電機の「発電力」と、発電機への「負荷」が等しい時には周波数は変化しないが、発電力が負荷を下回れば周波数が低下する、ということを、きちんと数式で表現してあります。
なるほど、ちゃんと表現できるのか、と感心しました。定性的には充分に知っていたことですが。

★ところで、新たなことを知りました。

 火力や原子力による発電では蒸気タービンの効率を上げるため、タービン動翼は薄く、また長くなり、翼長が2m近いものまである。翼の共振周波数は、発電ユニット軸の定格回転数より下側で接近する傾向にある。このため、周波数が基準周波数から大きく低下すると、翼の共振周波数に近づき、最悪の場合、蒸気タービンが壊れる可能性がある。このため、発電ユニットを保護するために、周波数が規定値を大きく下回ったときには系統から切り離す、すなわち停止するような装置がつけられている。周波数の低下は発電力が不足すると起こり、さらに運転中の発電ユニットを保護するために停止させれば、供給力が大幅に失われ、大規模停電につながってしまう。
 このように、現在では電力の安定供給の観点から、周波数を維持することが重要になっている。

なるほど。
負荷が増大して発電機の回転数が落ちると、タービンが壊れる可能性があるのですか。

洗濯機の脱水を思い浮かべてください。
中の洗濯物が完全にバランスよく入っていればスムーズに回転が上がっていきますが、バランスが崩れていると、ある特定の回転数のところで「ガタガタガタッ」と振動を起こしてしまいますよね。あのイメージです。その回転数を超えてしまえばスムーズに回転して脱水しています。停止の時も、ある瞬間ガタガタッという瞬間があって、でも、停止時はブレーキで一挙に止めますので大げさには揺れないで通りすぎるようですけどね。
そうなんだ、発電機のタービンにもそういう出来事が起こるんですね。

更に記事によりますと

 前述のように系統の周波数が火力発電ユニットのタービン動翼の共振周波数に接近し、翼を損傷させる可能性が生じるのは、およそ1.5Hz以上低下したときである。
 ・・・
 このような事象を避けるために系統に設置されているのが、UFR(under frequency relay、周波数低下リレー、不足周波数リレーともいう)という装置である。周波数が大きく低下するのは、発電力が負荷を大きく下回っているためなので、負荷を切り離す、つまり強制的に停電させることで、すみやかに周波数を基準周波数に戻し、発電ユニットの不必要な停止を防ぐのである。

は~ん、家庭における「ブレーカー」のようなものですね。
強制停電装置なんだ。

 東日本大震災の発生直後、・・・北海道電力や基準周波数が60Hzの中部電力からm直流送電設備を介して緊急融通が実施されたものの、周波数が1.5Hz低下したその結果、UFRが動作し、570万kWの負荷を遮断し、最終的に基準周波数の50Hzに復帰することになった。すなわち、570万kWの負荷を遮断したことで、系統全体が完全に停電する事態を防いだといえる。
 なお、3月14日以降は、想定需要4100万kWに対し供給力が3100万kWと1000万kWも不足していた。そのため、UFR動作による突然の停電が避けられないため、あらかじめ周知できる計画停電を実施している。

はぁ、どうにも「計画」停電という言葉の意味が完全には理解できていませんでした。
UFRという発電所のブレーカーが「突然」作動して停電するのは、まずい。
そこで、この時間帯に供給力が不足した場合はこのエリアを停電させる、別の時間帯の場合はまた別のエリアを停電させる、と事前に周知しておくことで損害を軽減する、それが「計画」なんだ。
で、「計画停電」ということなのですね。

ギリギリの供給力で運転していると落雷とか、送電施設や変電施設の事故・故障などで

大幅な周波数低下とそれに続くUFRの動作により、大規模停電を引き起こす可能性がある。とくにUFRの動作による停電はまったく唐突に発生するので、その影響は非常に大きい。もちろん、UFRがなくて系統全体が完全に停電してしまうような状況と比較すれば、その影響はまだましではあるが。

今時になって、やっと事態が把握できてきましたよ。そういう事態が進行していたとはね。
おおよそ想像はしていましたが、ちゃんと伝えてくれるメディアがないんだものなぁ。

★2011年4月18日 (月)「周波数」という記事を書いています。↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-2e14.html

ここで引用した毎日新聞の記事によりますと

(毎日新聞 2011年4月9日)
「おかしいぞ」。JFEスチール東日本製鉄所千葉地区(千葉市中央区)の藤井エネルギー部長らは震災発生の直後、異変に気づいた。大きな揺れは収まったが、送電線を流れる電気の周波数が通常の50ヘルツから49ヘルツに下がっていた。東電が無傷の発電所をフル稼働させるまでの数分間、低下が続いた。
     「07年の中越沖地震で柏崎刈羽原発が停止した時も周波数の低下はあったが、わずか数秒だった。大規模な電力不足が起きているとすぐにわかった」

そうなんだ、本当に危なかったんですね。
1Hz周波数が低下していた。もうギリギリじゃないですか。そのままだったら、UFRが動作して、思いもかけない停電が発生していたかもしれない。UFRが動作しなければ、タービンの翼が壊れる。
そういう事態だったようです。

周波数が落ちたようだな、という感じは持っていたのですが、起こっていた事態は全く知りませんでした。
今頃になって、パリティの記事で知りました。

★せっかくですから、毎日新聞の記事を今回全部載せておきます。(個人名は省略します)
以下引用文↓

福島第1原発:鉄鋼メーカー、自前火力発電で供給に貢献 (毎日新聞 2011年4月9日)
 東日本大震災で東京電力の福島第1原発が深刻な事故を起こし、茨城県などの火力発電所も被災して止まった。計画停電が実施され、首都圏の市民生活や生産活動も根底から揺さぶられた。その陰で、千葉県湾岸部の大手鉄鋼メーカーが自前の火力発電所をフル稼働させ、電力供給に貢献していた。

 「おかしいぞ」。JFEスチール東日本製鉄所千葉地区エネルギー部長らは震災発生の直後、異変に気づいた。大きな揺れは収まったが、送電線を流れる電気の周波数が通常の50ヘルツから49ヘルツに下がっていた。東電が無傷の発電所をフル稼働させるまでの数分間、低下が続いた。
 「07年の中越沖地震で柏崎刈羽原発が停止した時も周波数の低下はあったが、わずか数秒だった。大規模な電力不足が起きているとすぐにわかった」
 工場内には、自前の火力発電所が二つある。一方は製鉄工程に電力を供給し、もう一方は東電に電気を売る「売電」専用。同社は「電力卸売事業者」でもある。売電用は普段、平日の日中12時間のみ動かしている。
 異常を察知したエネルギー部長らは即座に「売電量を3倍に増やす」と東電に申し入れ、震災の日の夜には了解を得て休日を含め24時間フル稼働させることにした。各部門の社員を再編成して売電部門の人員を25%増やし、3交代の勤務シフトを作成。設備がフル稼働に耐えられるかどうか確認したうえで、翌12日昼から現在まで能力の限界に近い38万キロワットの電力を供給し続けている。
 同県君津市の新日本製鉄君津製鉄所も、東電と共同運営する火力発電所(最大発電能力約100万キロワット)を持っている。震災後、日中の製鉄工程の稼働率を落とすとともに、製鉄の副産物として生まれるガスを優先的に発電所の燃料に供給している。東電への電力供給能力は約50万キロワット。その最大出力で発電を続けているという。
 2社の電力供給能力は計88万キロワットでほぼ原発1基分。一般家庭に送ると約26万世帯分になる。計画停電で鉄道の運休が相次ぎ、病院が自家発電への切り替えに追われるなど、各所で混乱が生じたが、2社の協力がなければ、混乱はさらに大きかったかもしれない。
 新日鉄君津の広報は「節電とともに、供給面でも最大限協力していく」と言う。東電も「各社の素早い動きは非常にありがたい」と感謝している。
 気温の上昇で暖房器具などの電力需要が低下することが見込まれることもあり、計画停電は「原則不実施」となった。だが、本当の試練は冷房が動く夏場に来る。東電はガスタービン発電の増設などの対策を打ち出しているが、猛暑に見舞われたら、電力需要は到底支えられない。
 JFEスチールは発電所のメンテナンス作業を予定より早めて4月末~6月に集中実施し、夏場のフル稼働に向けて準備を進めるという。エネルギー部長は「電力需要が落ちる春の間に発電設備の体力を養い、夏場に引き続き貢献していきたい」と話す。

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