« ムクゲ | トップページ | 的を狙う:追記 »

2012年8月 6日 (月)

的を狙う

★2012年8月 2日 (木)「月を射る」↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-8e3c.html
この記事にコメントをいただきまして、「矢を射る時、いくらか孤を描くようにしていました。射撃の場合は真っすぐ狙うと思いますがこの差は何なのでしょう」という質問を頂戴しました。

答えの本質的な部分は「初速の違い」です。
アーチェリーの矢は新幹線並みの速度で発射されますが、火薬を使ったライフルではジェット機並みの速度で弾丸が発射されます。

同じ距離を矢と弾丸が飛んだとしましょう。
そうすると、矢の方が滞空時間が長くなります。
矢も弾丸も飛んでいる間に重力に引かれて必ず落下しますので、滞空時間が長くなれば落下距離も大きくなります。
ですから、矢の方が弾丸より落下距離が大きくなるのです。
そこで、遠い的を狙う時は、発射時に予め落下分だけ上向きに発射しなければなりません。
矢ではその上向きの角度が大きく矢は「弧を描いて」飛んでいきます。
弾丸は落下分をほとんど無視しても大丈夫なので「真っ直ぐ狙う」ことになるのです。

★少しだけ数値的に見積もってみます。
{本当は空気抵抗は無視できないのですが、ここでは空気抵抗を無視しまして、高校物理の範囲でお話しします。}

先ず下の図をご覧ください。
Arrow
O点から初速 v で水平に矢を放つことを考えます。
A点が的の中心です。OAの距離をLとします。
矢が飛行している間に重力によって矢は少し落下します。
で、B点に当たったとしましょう。A点からdだけ下がったところです。
ということは、ごく単純に考えて、矢の落下分だけ予め上向きに矢を放てばいいのですね。
つまりA点よりdだけ上のC点を狙って矢を放てば、矢は飛行中にdだけ落下して、A点に命中するはずです。
{初速の水平成分が変わりますので話は厳密なものではありません。大雑把な見積もりです。また空気抵抗や、渦やそういうややこしい話は全部無視。単純明快にいきましょう。それでも話の骨組に大きな間違いは生じません。}

このdは図の中に書き込んだ式で計算できます。

アーチェリーの矢の初速はどのくらいなのか検索してみましたら、ほぼ「60m/s」だそうですので、この値を使うことにしましょう。
{60m/sというのは、時速にすると216km/hになります。新幹線のスピードを腕力で出すのですからすごいものですね。}

   L=70m
   v=60m/s
   g=9.8m/s・s
そうすると
   d=6.7m
となります。
ですから、A点より6.7m上を狙えばいいのですね。
これが、頂戴したコメントの「矢を射る時、いくらか孤を描くようにしていました」ということなのです。

70m先の6.7m上というのは、角度にしますと5.5度です(∠AOCのことです)。
時計の文字盤の1分の目盛りが6度ですから、その程度の角度です。

私の場合矢をつがえて固定する右アゴから、弓を支える左手の親指の付け根まで約80cmありますので、7.7cmほど上向きにしてやれば、その角度になるようですね。

選手たちの弓を見るといろんなものがついていますが、私のような初心者は「サイト」だけ付けてやってました。サイト=照準です。
使う弓の強さ、腕の長さ、的までの距離、そういうものをまとめて経験的に「この位上げればどうだ」と探っていって、狙いをつけていました。

★さて、射撃なのですが。検索してたまたまヒットした値を使います。
エア・ライフルやエア・ピストルだと弾丸の初速は180m/sくらい。
{アーチェリーより3倍速いですね。}
火薬を使う競技用のライフルやピストルで音速程度かそれ以上。
ま、音速=340m/sを使いましょうか。

この初速で、70m先の的を狙ったらどうなるか。
70m先での落下分は
エア・ライフルで:d=0.74m(=74cm)
角度にして0.61度ほど。

ライフルで:d=0.21m(=21cm)
角度にして0.17度

落下分はすごく小さいですね。
それで「射撃の場合は真っすぐ狙う」ように見えるのです。
こんな小さな角度を手で正確にとコントロールするのはちょっとね。無理でしょう。

クレイ射撃では「射手の前方15mに配置された15台の放出機からは、遠方に向けて右(10枚)、ストレート(5枚)、左(10枚)の計25枚のクレーがランダムに放出される」のだそうです。

思ったより標的が近いですね。これなら完全に標的を「まっすぐ」狙うことになります。弾丸の落下分なんか、ほぼ無視できるでしょう。

ウィキペディアで調べたら、クレイ射撃以外の射撃競技は下のような種類があるそうです。

男子10mエアピストル
男子10mエアライフル
男子25mラピッドファイアーピストル
男子50mピストル
男子50mライフル伏射
男子50mライフル3姿勢
女子10mエアピストル
女子10mエアライフル
女子10mピストル
女子50mライフル3姿勢

Fall {表}
落下分だけエクセルに計算させてみました。
10mや25m先では、落下分は無視できそうですね。ホントに「まっすぐ狙えばいい」。
50m先だと火薬を使うライフルでも「10cm」くらい落ちるようですから、「照準」が必要かもしれません。
専門用語を知らないのですが、一般用語でいうと、目の前の「照門」から、銃の先端の「照星」を見て照準を定めるということになるのでしょうか。
「伏射」というのだと、照準を合わせているようだな、というのが分かります。

詳しいことは、ゴルゴ13=デューク東郷さんにでも聞いてみないと分かりません。

« ムクゲ | トップページ | 的を狙う:追記 »

理科おじさん」カテゴリの記事

コメント

詳しいお話をありがとうございました。恥ずかしながら物理の成績は思わしくなかったものですから本当に理解できたかどうか怪しいものですが、「初速の違い」というのはなるほど、と思いました。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 的を狙う:

« ムクゲ | トップページ | 的を狙う:追記 »

2021年5月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
無料ブログはココログ