油虫
★朝日俳壇にこういう句が投ぜられました。
起きてゐる間は油虫起きてゐる
選者は稲畑汀子氏。評にこう書いておられます。
人々の生活に入り込んでいる油虫。人間が起きている間は起きているという油虫ならではの習性が描けた
★ここでの「油虫」は当然ゴキブリのことですね。
案山子ならこう評をつけます。
本来夜行性のゴキブリと、人間が同じ時間を共有するようになってしまった。人間の宵っ張りが、ゴキブリの時間を侵食するという、人間ならではの習性が描けた。
★概日リズム(サーカディアン・リズム)というのがあるのですね。体内時計が刻むおおよそ24時間の周期です。
真っ暗な中でゴキブリを飼育すると、約24時間の周期で、外界の夜に対応する時間帯に活動します。夜行性なんです。ただ、ずっとそのまま真っ暗のままだと周期がだんだんずれていきます。明るい光をあてると、周期がリセットされて、またそこからほぼ24時間のリズムを刻み始めます。
ゴキブリはもともと夜行性。
ヒトというサルの仲間は、恐竜の時代に夜行性だった哺乳類が、昼行性に変化してから出現した動物です。
それが、この何百年かの短い間に、夜の領域へ侵入してきた。
でも、完全な夜行性にはなれないままなのですけどね。
ですから、「油虫の生活に入り込んでいる人々」というのが、出来事の本質に近いはずです。
★おまけに、「油虫」は夏の季語、ときましたよ。まいったなぁ。
ゴキブリなんか年中いるじゃないですか。
冬のゴキブリの幼虫なんか、懸命さを感じさせてけなげじゃないですか。
「生きのびよ寒の弱日をあぶらむし」なんて句を作っちゃいけないんですね。
冬場にも活動できる環境を作ったのは人間なのにね。
そうでなければ森の落ち葉の下で越冬するんでしょうに。
ごめんね、ゴキちゃん。
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