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2012年6月25日 (月)

雄はくすんだ黒き羽持つ

★朝日歌壇に下のような歌が載りました。
   そうなのか紋白蝶の眼で見れば雄はくすんだ黒き羽持つ

★残念ながら、これは誤解です。
作者は、下のサイトで見られるような、紫外線で写したモンシロチョウの写真をご覧になったのでしょう。
そして、「男なんて、黒くくすんだものだよな」というような諧謔を歌に込めておられると思います。それは詩としての短歌にはもちろん許されることです。
でも「色覚」という、動物の能力としてはおそらく、違っています。

http://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/science/denken/p06/6_10.html
↑写真があります。
http://cgi2.nhk.or.jp/school/movie/clipbox.cgi?das_id=D0005300083_00000&keepThis=true&TB_iframe=true&width=920&height=480
↑NHKの動画です。
http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/uvir/hana_uv.html
↑とても詳しいサイトです。

上のサイトをご覧いただくと、確かに、紫外線に感度のあるフィルムで、モンシロチョウを撮影すると、オスは黒っぽく、メスは白く写っています。
●これは事実です。

紫外線という波長領域の「光」だけで、世界を見ると、紫外線を強く反射するものは「明るく」見え(白く見え)、紫外線を吸収するものは「暗く」見え(黒く見え)ます。

これは「モノクローム」の世界だからです。
モノクロームというのは「白黒」としてしまうことも多いですが、原義は「モノ」は「1」、「クローム」は「色」です。
ですからモノクロームは「単色」とするのがいいでしょう。

紫外線という光は私たちには見えません。
可視光の端である紫のその「外」の短い波長ですので「紫外」なのですから当たり前ですね。

でも、単色光の世界なら体験できます。
・赤や青の色のついたセロハン紙やアクリル板を目の前にくっつけて、身の回りを見てください。
赤いセロファンとしましょうか。
すると、通常、赤く見える物体は「明るく」見えます。緑の草木などは、赤い光を吸収して光合成に使っているのですから、赤い光が帰ってきませんので「暗く」見えます。
・高速道路のトンネルなどでオレンジ色のナトリウムランプが照明に使われていることはありませんか。周囲の車の色はオレンジ色の「明暗」になってしまうはずです。
太陽光で白い車は明るい。黒い車は黒い。青い車も黒い。・・・

ということで、単色光の世界では「明暗」しかないのですね。
モンシロチョウの翅を紫外光という単色光で照らして、紫外光に感度のあるフィルムや撮像素子を使うと、紫外光という単色光の世界が見えるのです。
その世界で、オスの翅は紫外光を吸収して暗く見え、メスの翅は紫外光を反射して明るく見えるのです。

★さて、「白」と「黒」と「色」ということを簡単に考えておきます。

ヒトにとっての可視光線(波長 0.38μm~0.77μmくらい)が、ある物体表面に入射していって、全部反射されて返ってくるとき「白く」見えます。物体表面で全部吸収されてしまうと「黒く」見えます。可視光の一部の波長の光が吸収されて残りが返ってくるとき「色」がついて見えます。

モンシロチョウの翅はヒトにとっての可視光をほぼ全部反射しますので、ヒトにとってはモンシロチョウのメスもオスも同じく白く見えます。

さて、モンシロチョウの視覚を考えましょう。
「アゲハの可視光」は0.3μm~0.7μmくらいの範囲といわれます。「ヒトの可視光+紫外線」が「アゲハの可視光」になるようです。(というか全体として短波長側にシフトしているといった方がいいのかもしれませんね。)
モンシロチョウもそんなに違いはしないでしょう。

モンシロチョウの翅の紫外線写真からわかることは、モンシロチョウのメスの翅は紫外線を反射し、オスの翅は紫外線を吸収する、ということでした。

モンシロチョウのオスがメスを見ると、ヒトの可視光+紫外線=モンシロチョウの可視光 が全部反射されて返ってくることになりますね。
ヒトの可視光部分で白く見える+紫外線写真で反射されてきて明るく写るという二つを合わせればいいわけです。
ですから、モンシロチョウのオスにとってメスの翅は真っ白に見えるはずですね。

ではオスの翅を同じオスなりメスが見たらどうなりますか?
モンシロチョウの可視光のうち、紫外部だけが吸収されて残りの部分が反射して返ってきます。
前述した「可視光の一部の波長の光が吸収されて残りが返ってくるとき『色』がついて見える」という状態ですね。
ですから、モンシロチョウは「オスの翅には色がついている」と見ているはずなのです。
黒ではありません。

「どんないろなの?」とモンシロチョウに聞いてみても、言語が共有できませんから、わからない。
もし言語を共有したとしても、ヒトにとって見えないものを表現する言葉はないのですから、表現のしようがない。

モンシロチョウが見ている色彩世界はどうやっても分からないのです。

いえることは
再度繰り返しますが

メスの翅は純白に輝いて、オスにとってまばゆいばかりの翅なんでしょう。
オスの翅は黒ずんでいるのではなく、白でも黒でもない「色つき」の翅なのだと思います。

というのが今回の結論なのでした。

・アナロジーをひとつ。
ヒトの可視光の波長の短い側の色「紫」を白色光から取り除きますと、黄緑色に見えますね。(補色というやつです)
モンシロチョウの可視光の波長の短い側の色「紫外」を白色光から取り除くと・・・何か色がついて見えるはずですね。それがモンシロチョウのオスの翅の色です。

★私のHP「理科おじさんの部屋」でこういう問題を少し扱ったことがあります。
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/39th/sci_39.htm
「暗い水」→風呂桶に水を入れていくときに真っ黒に見える現象。

入っていった光全部が戻ってこない時「黒」、全部戻ってくる時「白」、光の一部分が戻ってくる時「色がつく」のです。

とここで書きました。

http://homepage3.nifty.com/kuebiko/science/6th/sci_6.htm
カッターナイフの刃をそろえて見ると、黒く見えるという写真を載せてあります。
入射光が返ってこないので黒く見えてしまうのです。

★色覚について、まだ書きたいことがありまして、しばらく考えてまた書きます。
よろしく。お待ちください。

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