日食グラス
★朝日新聞の土曜「be」という特集に、「いわせてもらお」というコーナーがあります。
面白話が載るのですが、その6月2日分に
日食
小学6年の息子に「金環日食の時は肉眼で太陽を見てはいけない」と、何度も言い聞かせていた。当日、日食グラスを使って無事に見終わった後で、息子がこう言った。
「もう日食終わったから、太陽見てもいいの?」
面白話ではありますが、深刻な内容を含んでいるように思います。
金環日食でマスコミも大騒ぎをしました。金環日食を見るには日食グラスが必要だ。
と。
そこで、特別な事態には特別なものが必要なんだ、と考えるわけですね。
個別の事態に個別の対応。
そこから、普通の太陽に戻ったのだから、普通に目で見ていいのではないか、という考えが出てきます。
どうも、個々の出来事を、個別に覚えて対応しよう、という姿勢が学習の場で目立つように思うんですね。
一つの原則を身につけると、その原則で多くの事態を理解し対応できる、という理科の楽しみというのが身についていない。いや、数学何なんかでもそのようですよ。
★天気が気になりますが、金星の太陽面通過が報ぜられていますので、「金星太陽面通過観察グラス」が必要なんじゃないか、と思う人がひょっとしたらいるかもしれない。
★必要なのは「太陽観察グラス」なんですよね。
太陽は明るすぎる。
太陽光を黒い文字に凸レンズで集光すると、焦げますね。
太陽光を肉眼で見たら、水晶体という凸レンズが太陽光を網膜に集光します。で、網膜の視細胞が死んでしまう。
だから、太陽の光を吸収して、光を弱くする「減光フィルター」=「太陽観察グラス」越しでなければ、太陽を見てはいけないんだ。ね。
このことが理解できていれば、日食の時も、通常の太陽も、金星の太陽面通過の時も、同じ「太陽観察フィルター」を使えばいいんだ。
と、こうなるでしょ。
学年にもよりますが、ガリレオさんは太陽の黒点を発見したけれど、肉眼での太陽観察をしたために、晩年、失明したのだよ、という逸話も有効かもしれません。
★ちょっと、心配なのは、ピンホールカメラもそうなんです。
ピンホールカメラは日食観察用の道具なんだ、と思いこんではいないだろうか。
小さな穴を通して外界を映すとスクリーンに逆さまの像が写る。
穴とスクリーンの距離を変えると、ワイドになったりズームになったり、すごく面白い。
写真フィルムをスクリーンのところに置くと、感光して写真が撮れるというキットもありました。
こういう経験があれば、日食の時に、ピンホールカメラを使えば、日食中の太陽の像を見ることができる、ということは簡単に分かることなのですね。
普通の太陽なら、丸く写る、のはあたりまえ。
★個別のことに個別に対応する風潮が強くなっているということに、元理科教師として、寂しさと不安を感じています。
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