光の季節
★前の記事で、「二至」「二分」「四立」の話をしましたが、これは太陽の位置、生活感覚的には「日の長さ」「昼の長さ(夜の長さ)」「日の高さ」「影の長さ」になりましょうか。
ですから、「二至」「二分」「四立」は「太陽の暦」=「光の季節」です。
それに対して、「暑い夏」「寒い冬」という生活感覚は「気温の季節」なんですね。
最近読んだ本
「暦はエレガントな科学」石原幸男著、PHP研究所、2012.1.10刊
この本からの孫引きになりますが
・・・
気象評論家として有名な倉嶋厚さんのおっしゃる「光の季節」(倉嶋厚著「大学テキスト 日本の気候」古今書院)
・・・
この「光の季節」という言葉を使わさせて頂きました。
★さて、以前にも日の出・日の入り時刻のグラフをお目にかけたことがあります。
そのグラフに、春分などの文字を書き込んでみました。目分量でこの辺り、と書き込んでいますので、厳密ではないことをご了承ください。
夏至・冬至はいいとして。
立春から立夏にかけて、日の出がぐんぐん早くなります。朝、目覚めた時が明るくなるんですね。
立秋から立冬にかけて、日の入りがぐんぐん早くなります。日脚が短くなる、うっかりするとすぐ夕方、暗くなる、夜が長くなってくる。という感覚です。
立夏から立秋にかけての変化、立冬から立春にかけての変化は比較的小さなものです。
立夏から立秋までがやっぱり「夏」なんですよ。
立秋過ぎると、日の長さに秋を感じ始めるんですね。
太陽の南中高度と日長をグラフ化してみました。
南中高度は左目盛りで、日長は右目盛りで読んでください。
当然なんですけど、完全に同期しています。
二至・二分・四立を書きこむとこうなります。
夏至の時に日が長く、お日様が高い!
冬至の時は日が短くて、お日様が低くって、部屋の奥まで日が差し込みます。
南中高度をこういうグラフではなくて、角度表示にしてみました。
このグラフのアイデアは、「暦はエレガントな科学」から頂きました。少しだけ手をくわえてあります。北緯35度での太陽南中高度を表現しています。
立春から立夏まで、33度も高度が上がっていきます。
ところが、立夏からは7度上がって夏至、7度下がって立秋です。ほとんど太陽の高さが変わりませんね。
そしてまた、立秋から立冬まで30度以上も低くなるのです。
立冬から冬至、立春まで、太陽は低いままですね。
というわけで、光の季節では、立夏から立秋までが、明らかに「太陽が頭の上にある夏」なんです。
そして立冬から立春までが、「太陽の低い冬」なんです。
いかがでしょう。二至・二分・四立は光の季節を報せてくれている、ということがお分かり頂けると思います。
ちょっとオマケで、太陽高度を、影の長さで表現してみました。これは私のオリジナルです。
垂直に立てた棒の高さを「1」とします。
二至・二分・四立の時の影の長さをその「1」に対してどのくらいの長さになるかを描いてみました。
立夏から夏至、立秋の間で0.34→0.21→0.34という変化です。
頭上から照りつける、という感じですね。
棒の長さの5分の1しか影の長さがない。
立夏を過ぎると、気象情報の紫外線情報で、「真夏と同じ強さの(真夏並みの)紫外線」というような言い方をしますが、実は立夏を過ぎたら夏なので、紫外線は5,6,7月が最強なのです。気温の夏の話じゃないわけで、紫外線の強さですから光の季節で話をしなくちゃいけません。気象予報士の方の相当多くの方々はこのことを理解していないんだろうなぁ、と思っています。
冬至では棒の長さの約1.7倍の長さの影になります。これ、真昼で、ですよ。夕方の話じゃないですよ。冬を実感する影の長さですね。
余談:収斂火災ってご存知ですか?
ウィキペディアから引用
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8E%E3%82%8C%E3%82%93%E7%81%AB%E7%81%BD
凸レンズ状の透明な物体、あるいは凹面鏡状の反射物によって一点に集中した太陽光が、可燃物を発火させることにより発生する火災
です。
収れん火災は、日差しの強い昼間、あるいは夏に発生しやすいと思われがちであるが、夕方あるいは冬に比較的多く発生することが知られている。夕方や冬の方が、昼間や夏に比べて太陽の高度が低いため、室内に太陽光がより差し込みやすいためであると考えられている。
ね、冬は太陽高度が低い、影が長い、室内に日が差し込みやすいのです。
★春と秋は、「変化が激しい」時期なのです。
絶対値ももちろん大事ですが、変化の速さ、というのをも、私たちは感覚的にとらえています。
春に「成長」を感じ、秋に「うつろい」を感じるのはそういう「変化(微分)」感覚の表現なのでしょう。
★「暦はエレガントな科学」という本、1400円と、内容の豊かさの割には安価です。
単行本ですが新書並み、といいましょうか。
もし関心があったらぜひお読みください。
それこそ「目から鱗が落ちる」という感覚を味わっていただけると思います。
★オマケ
太陽の南中高度と、東京での平年気温を一緒にグラフ化してみました。
6月下旬に夏至。太陽高度は最も高くなり、地面が単位面積あたりに受け取るエネルギー量は最大になります。
でも、すぐ地面・海水が温まるわけではないのですね。
やかんに水を入れて火にかけても、お湯が沸くには時間がかかる。
気温のピークは8月上旬、立秋の時期なのですね。
このずれが「暦の上では」というギャップ感覚を生んでいるのでしょう。
立夏と言ったってまだ暑くないじゃん、と感じるのですね。
光の季節と、気温の季節にはこういう時間的なずれがあることを知って下さい。
太陽にあぶられているけど、熱くなるのに時間がかかっている。
流入するエネルギー量は減っているのに、冷めるのに時間がかかっている。
こういう時間の遅れを理解して下さい。
でも、立秋を過ぎると確実に気温が下がり始める、立春を過ぎれば確実に気温が上がり始める、ということも確かなことなのです。
★
2012.6.1
12時40分頃ですから、南中時刻は過ぎています。
影の短さに注目して下さい。
立夏から1カ月弱。
柵の縦の柱の長さを1として、どうかな、影は0.25くらいかな。
改めて影を観察すると、ずいぶん短いですね。
ホントにお日様は頭の真上から照りつけています。
★南中高度の計算
自分で考えてもそう厄介なことはないのですが、一応、ちゃんとしたところから引用します。
http://www.nao.ac.jp/faq/a0109.html
国立天文台のサイトです。
建物の影の状態を計算するなどのために、太陽の南中高度を知りたいことがあります。「南中高度」というのは、太陽が真南にきて、いちばん高く上がったときの地平線との間の角度です。
太陽の南中高度は場所によって違います。夏至のとき(南中高度がいちばん高くなります)と冬至のとき(南中高度がいちばん低くなります)の太陽の南中高度は、その場所の緯度がわかれば簡単に計算することができます。夏至のときの太陽の南中高度(度) = 90 - (その場所の緯度) + 23.4
冬至のときの太陽の南中高度(度) = 90 - (その場所の緯度) - 23.4それ以外のときには、太陽が北寄りに位置しているのか、南寄りに位置しているのかを示す「視赤緯」の値が、計算に必要となり、以下の式で計算することができます。
太陽の南中高度(度) = 90 - (その場所の緯度) + (太陽の視赤緯)
毎日の太陽の視赤緯の値は、国立天文台が編纂する「理科年表」などに載っています。
私が作った南中高度のグラフは、この計算式をセルに書き込んで、理科年表からのデータを使って計算させています。
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