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2012年3月 2日 (金)

歌女

毎日新聞 2012年2月8日の「余録」です。

▲さて、「歌女(かじょ)」と呼ばれるのはどんな生き物だろうか。ウグイスやスズムシなどを思い浮かべる方も多いだろうが、これ実はミミズのことという。俳句の秋の季語に「蚯蚓(みみず)鳴く」が残るように、昔はミミズが「ジー」と鳴くと思われていたのだ
▲「里の子や蚯蚓の唄に笛を吹く」は一茶、「手洗へば蚯蚓鳴きやむ手水鉢(ちょうずばち)」は子規。物理学者の寺田寅彦にも「蓙(ござ)ひえて蚯蚓鳴き出す別(わかれ)かな」があるが、もちろん実際にミミズが鳴くと思っていたのではない。江戸時代から本当はケラの鳴き声だと説かれていた
▲だが今やミミズにも「鳴く」より「泣く」をあてた方がいいのかもしれない。東京電力福島第1原発から約20キロの地点に生息するミミズから1キロあたり2万ベクレルの放射性セシウムが検出されたと先日報じられたからだ。森林総合研究所の研究員による調査の結果である
▲この調査では原発から約60キロ地点のミミズでは同1000ベクレル、約150キロ地点では同290ベクレルという値だった。ミミズはイノシシや鳥などの野生動物の餌になっている。このため放射性物質が食物連鎖により他の生物の体内に次々と蓄積されるのを懸念する声がある
▲アリストテレスはミミズを「大地のはらわた」と呼んだ。その呼び名通りミミズが落ち葉などの分解した有機物を取り込み、栄養豊かな土を作るのを解明したのはダーウィンだった。今、汚染された落ち葉を通し大地のはらわたにまで入り込んだ放射性物質である
▲ミミズのとりもつ生命のサイクルを危険な異物で汚した人間だ。ここは継続的調査を通し、物言わぬ古い友の「声」に耳を澄まさなければならない。

Ch.ダーウィン「ミミズと土」は、平凡社ライブラリー 56 として出版されています。
私は1994年に初版を買って読みました。面白かったですよ~。

私、ミミズのファンです。
ミミズ関連書籍を何冊か読んでますが、「歌女」は知りませんでした。
広辞苑でも出てないですね。
   か‐じょ【歌女】歌をうたう女。うたいめ。[広辞苑第五版]

デジタル大辞泉に
   「2 ミミズの異称」
というのがありました。

★で、ミミズにちなみまして、面白い「讃」をご紹介します。

復刻「みみず」 著者:畑井新喜司 発行日:1997年6月15日 初版第4刷

この本は「昭和六年」発行なんですが、日本のミミズの基本知識はすべて書かれているといってもいいような本です。
本の冒頭、下のような「讃」があるんですね。これがまた素晴らしい。

   

蚯蚓礼讃
自ら進んで釣魚の餌たるを辞せざるも 虚名を干支に列ぬるの累を避く
「鈍くしておかしげなる」との世評に甘んじ
悠悠自適 泥土を食ひ黄泉を飲み 敢えて利欲を地表に求めず
汲汲相励みて荒野を拓き 矻矻相勉めて沃土を作る
其体は蓋し研学の材たるべく
其屍は猶ほ霊薬の素たるべし
然れば蔡邕の知遇を得て勧学の篇に入り
透谷の詩眼に映じて跟影を紙帛に止む
祖先世に現はれて既に幾億歳
巨象の蹄を逃れ氷河の流れを避く
時に地殻の激震に厄せられ 血縁離散の悲しみに遇ふも
慈雨の降下に恵まれて繁栄の喜びを受く
年を送り歳を迎へて眷属益々蕃く
争はず犯さず 倶に天分を楽しみ共に苦楽を味ふ
是れ蚯蚓の偉とする所なり
世の懶婪憤怒の人 亦以て鑑とするに足らん乎
   昭和六年一月五日       畑 井 新 喜 司 

{「矻矻」は「こつこつ」と読んでください。}

ひらがなで書き下ろしてみましょうか。かえって読みにくいかもしれませんけど。

   みみずらいさん
 みずからすすんでちょうぎょのえさたるをじせざるも きょめいをかんしにつらぬるのるいをさく
 「のろくしておかしげなる」とのせひょうにあまんじ
 ゆうゆうじてき でいどをくひこうせんをのみ あえてりよくをちひょうにもとめず
 きゅうきゅうあいはげみてこうやをひらき こつこつあいつとめてよくどをつくる
 そのからだはけだしけんがくのざいたるべく
 そのしかばねはなほれいやくのもとたるべし
 しかればさいようのちぐうをえてかんがくのへんにいり
 とうこくのしがんにえいじてこんえいをしはくにとどむ
 そせんよにあらはれてすでにいくおくさい
 きょぞうのひづめをのがれひょうがのながれをさく
 ときにちかくのげきしんにやくせられ けつえんりさんのかなしみにあふも
 じうのこうかにめぐまれてはんえいのよろこびをうく
 としをおくりとしをむかへてけんぞくますますしげく
 あらそはずおかさず ともにてんぶんをたのしみともにくらくをあじわふ
 これみみずのいとするところなり
 よのらんらんふんぬのひと またもってかがみとするにたらんか

最後の三行

「争はず犯さず 倶に天分を楽しみ共に苦楽を味ふ
是れ蚯蚓の偉とする所なり
世の懶婪憤怒の人 亦以て鑑とするに足らん乎」

これなんかもう、最高でしょ。
私も、斯く生きたい。

この「蚯蚓礼讃」は実は私の教師生活最後の「通信」に載せて、最後の生徒にも贈ったものなんです。よかったら読んでみてください。下に、そのプリントの再現を載せてあります。
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/essay/lst_msg3.htm
鵜の眼 No.35(‘05.2.16(水))

★別件
 ミミズが鳴く、というのはケラだということは知られていることだと思いますが、ところで実際「ケラ」という昆虫を見たことありますか?
   バッタ目 > ケラ科 > ケラ
の昆虫なんですよ。バッタの仲間。
私は子どもの頃何度も捕まえましたけど。
写真は虫ナビなど見てください。
http://mushinavi.com/navi_batta.htm
↑このページの一番下にいます。

★また別件
 子どものころ、ミミズに小便をひっかけるとチンチンが腫れると脅されたものです。
今の子はそういう脅しなんかかけたら「心の傷」だ「トラウマ」だ、おかげでミミズを見ることができなくなった、とか親から抗議されそうですねぇ。

おそるおそる、しょんべん引っかけてみたりしたものですが。昔のワルガキは。

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