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2012年3月 9日 (金)

ノルマルパラフィン

★2012.2.27の朝日新聞の記事です。

固まる温度、自在 蓄熱材を開発 JX日鉱日石
 好みの温度で固まり、物を冷やしたり、暖めたりできる蓄熱材「エコジュール」を石油元売り大手のJX日鉱日石エネルギーが開発した。冷暖房から衣料品までいろんな用途で売り出す。国内石油市場が縮小するなか、化学品に活路を見いだす取り組みの一つだ。
 原料のノルマルパラフィンという物質は、分子中の炭素原子の数によって固体になる温度が変わる。その性質を使い、用途に応じて固まる温度を変えて売る。
 特に力を入れるのが、ビルや住宅の冷暖房用。ビルの空調用には6度で固まるように設定。冷房に使う冷水をためる水槽に入れて温度を低く保ち、冷凍機の運転を節約する。30~40度の温度で固まる仕様にすると、住宅の壁に塗り込んで直射日光の熱を保温できる。
 保冷材としては、血液や生鮮食料品などの定温輸送、停電時のスーパーの冷蔵ケースの冷温維持に使える。繊維に練り込んで防寒用の衣服にも利用できる。

★「ノルマルパラフィン」なんて名前でビックリしないでください。
炭素が鎖状につながった分子のことです。

炭素が1個ならメタン(都市ガスの主成分です)
炭素が2個ならエタン
炭素が3個ならプロパン(家庭用の燃料ガス)
炭素が4個ならブタン(ガスライターの中でちゃぷちゃぷしている液体の主成分)
 ・・・
ということなんです。
で、鎖に枝分かれないことを「ノーマル(ノルマル)(n-)」と呼んでいるのです。
ですから、n-ブタンは炭素4個が枝分かれなしでつながっている分子。
iso-ブタン(イソブタン)は「イソ」というのは「同じ」という意味ですので、炭素数は同じなのだけれど枝分かれがある、という分子です。

詳しくは私のHPで↓
http://homepage3.nifty.com/kuebiko/biology/chptr_1/1-1-3/orgChem1.htm

★さて、枝分かれがあると話がやたらと面倒になるので、枝別れのない鎖状の分子について話をします。単結合で炭素原子が全部つながっているグループを化学用語ではアルカンというのですが、別に「パラフィン系炭化水素」というのです。
パラフィンと言えばもともとは「蝋」ですね。

炭素数が少ないと、常温で気体ですが、炭素数が増えて分子の鎖が長くなると常温で固体になります。
Mpbp
横軸が炭素数。縦軸が温度です。
常温を25℃くらいとして、炭素数が1~4だと気体、5~16位だと液体、それ以上では固体、ということが分かります。

Mpbp2
同じグラフですが、炭素数を少なくして、温度目盛りが10℃ごとになっています。

★さて、
「ビルや住宅の冷暖房用。ビルの空調用には6度で固まるように設定。冷房に使う冷水をためる水槽に入れて温度を低く保ち、冷凍機の運転を節約する。30~40度の温度で固まる仕様にすると、住宅の壁に塗り込んで直射日光の熱を保温できる。」
これはなんなのか。

水に氷を浮かべて、風を送れば、氷がある限り「0℃の風」がわたってきますよね。
固体が融けて液体になるときは熱を吸収し、逆に液体が固体になるときは熱を放出する。こういう状態変化の時に出入りする熱を利用して、冷暖房の効率を高め、省エネにしようという話なんですね。

氷ではその温度が0℃。ですから、冬の雪を保存しておいて夏場の「冷」源にしようという話は以前からありました。
今回の話は、パラフィンを使って、色々な融点で状態変化するように設定して、熱源・冷源として利用しようということなのです。

詳しいところは別にして、原理が分かって話の筋道がみえてくれば、よくわかります。理科的な話、恐るるに足らず。

★余談
ところで、グラフをお目にかけましたが、あのグラフを見て、素直に納得しましたか?
それとも、何だか変なんじゃない?と思いましたか?
実は、変だなぁ、と思った方(かた)は鋭い。

てんぷらを揚げることを考えます。
油を加熱する。
300℃にも上がってしまうと、なんだか煙のようなものが立ち昇ってきますよね。
下手すると、火を引き込んで火事になりそう。

そうなんです。炭素・水素でできた物質が300℃にもなると、熱分解を始めるんですね。
炭素数が17くらいになると、沸点が300℃を超えます。
まずいじゃないですか。
どうして、炭素数25を超えて、沸点が400℃を超えるなんてデータが取れるのでしょう?
熱分解しちゃうんじゃないでしょうか。
そうなんですね。そう考える方が正しいのです。

実は、減圧下での測定なんです。減圧すると沸点が下がりますので、熱分解させずに沸騰させることができます。で、その時の圧力と沸点を測定します。
そののち「圧力が1気圧だったら」という換算が可能なんですね。
化学実験をやっていますと、この減圧蒸留の沸点換算図表というのは必携なのです。
これで、1気圧に換算した沸点を使って、グラフを作成しているのです。

そういう仕組みが隠れていたのでした。

教訓:日常情生活の感性を大事にしましょう。

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