ささくれだち
2012.2.12 朝日歌壇より
つけ根よりへし折られたる松が枝(え)のささくれだちて雪を噛みおり:(秋田市)関口裕一
昔の耳学問。「裏切り」
正規の言葉かどうかは知りませんが。
枝を切る時に、上からのこぎりでゴリゴリきっていくと、だんだん残りが薄くなってきて、自重に耐えきれずにへし折れる。そのとき、皮が残ってしまって、ぶら下がったり、切り口が非常に汚くなる。
そこで、上からきり始める前に、その真裏の側の皮に少しだけノコを入れておく。そうすると、自重で折れた時に、切り口がきれいで皮も残らない。
この、「裏を予め切っておく」ことを「裏切り」というのだ。
というような話を随分昔に聞いことがあります。
組織を壊そうという時に、正面から押し切ろうとすると大きな抵抗が生まれてうまくいかない。
予め、内通者・裏切者を作っておくと、押された組織はあるところで、あっけなくぽっきりと崩壊するのだ、という風にも聞きました。
そんな話を思い出してしまいました。
雪の重みに耐えかねた枝が折れた。皮がベロっとなって「ささくれた」のですね。
もし「裏切り」がしてあったら、ぽっきりときれいに折れたのでしょう。
「崩彦俳歌倉」カテゴリの記事
- 榠樝(2021.02.01)
- オオスカシバ(2020.10.06)
- 猫毛雨(2020.04.20)
- 諏訪兼位先生を悼む(2020.03.25)
- ルビーロウカイガラムシ(2020.01.17)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
「裏切り」とはそのようなことばであったのですか。普段使うことばの数々,いちいち語源をわかっているはずもありませんが,誠に深い意味があるものです。そもそも「裏切り」ということば自体,たとえば「背信行為」などのことばの説明に使われることばであるでしょうから。即物的な意味が「組織を壊そうという時に……」と転じることには思わずほぉーとうなってしまいます。ところでこの「真裏の側の皮に少しだけノコを入れておく」ことについては,昨年暮れに85才で亡くなった私の父が「さる口を開ける」と表現していたのを思い出しました。もう何十年も前,元気だった父と山の雑木を切っていたときに,おっしゃっておられるのとそっくり同じような言い方で伐採の方法を教えてくれました。ただ,そのときは結構太い木を根元から切っておりましたので,よき(奈良の山村では小型の斧をこのような言い方をします)を使ってノコギリを入れる反対側をがつがつと切れ込みを入れました。さる口というのは,その切り口を「猿」の口にたとえたものでしょうか。多分今は私の生まれた地域でも死語となっていることばであろうと思います。もともと地域限定であったことばですが,もしこのことばがメジャーとなっていたなら,「裏切り」は「さる口」ということばで置き換えられていたかもしれませんね。
投稿: kankikoh | 2012年2月18日 (土) 15時31分
「受け口」「追い口」という用語は知っておりましたが、「さる口」は初めて知りました。イメージがよく分かります。
ところで尾上菊五郎でしたかの柄で、「斧」「琴柱」「菊」を染めた手拭があったとか。
「よき こと きく(良き事聞く)」の洒落とか。
これで「よき」という語彙を得たのでした。
投稿: かかし | 2012年2月18日 (土) 15時59分