また黄金比
★話はまた、2012年2月 3日 (金)の「ハスの花に黄金比」に戻ります↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-7607.html
植物の葉や実などの配列に黄金比が現れる話は、すでに私のブログで扱ったことがあります↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_8ee9_1.html
2008年8月25日 (月)「ヒマワリ」
・・・
1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,・・・ というのがフィボナッチ数列といいます。ある項は前2項の和になっている、という数列です。
この数列の隣り合う二項の比は1.618・・・という数に近づいていきます。この比を「黄金比」といって、有名な比です。自然界にもこの比が現れるというのは有名でして、数学なんて生活とは無縁だ、という既成概念を打破しようという話のときなどによく登場します。
・・・
ここではプログラムで花の配列のシミュレーションをしました。
ほかにも何回か同じようなことを書いています↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-5217.html
2010年5月14日 (金)「タンポポ」
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-a79e.html
2011年2月 7日 (月)「まつぼっくり」
「ヒマワリ」で書いたことが、「ハスの花に黄金比」に対応していますので、ここで改めて書き加えることはありません。
★さて、今回は少し趣向を変えて
この図をご覧ください。
フィボナッチ数列をエクセルのセルに書き込んでみました。
1,1を与えて、後は「ある項は前2項の和になる」という式をセルに書き込んで、30項目まで書きました。
で、ある項の値を直前の項の値で割った値を3列目に書きました。
17項め以降、見かけ上値が変化しません。
1.618034・・・(これをφと呼びます)という値との差を4列目に書き込ませました。
すると、大きくなったり小さくなったりしながら、φに近づいていくことがよく分かります。
倍精度実数ではこんなところまでしか分かりません。
1000桁が扱える言語、などを使えばもっと先まで追跡はできますが、まぁ、同じことです。
このようにして、フィボナッチ数列と黄金比とが結びついていることがエクセルでも確認できます、というのが、今回の話の一つ目。
やってみれば簡単なことなんですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%9C%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%81%E6%95%B0
フィボナッチ数列について詳しくお知りになりたければ、このページなどどうぞ。
★二つ目の話というのは、「黄金比は最も美しい比だ」という説についてです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%84%E9%87%91%E6%AF%94
ウィキペディアの黄金比という項目です。
この最後の方から引用します。
その他
・黄金比はパルテノン神殿やピラミッドといった歴史的建造物、美術品の中に見出すことができるという。また、自然界にも現れ、植物の葉の並び方や巻き貝の中にも見付けることができるといった主張がある。これらの主張から、最も安定し美しい比率とされ、意図的に黄金比を意識して創作した芸術家も数多い(以上の主張の詳細とその検討は文献のマリオ・リヴィオを参照)。
・長方形は縦と横との関係が黄金比になるとき、安定した美感を与えるという説があり、これはグスタフ・フェヒナーの1867年の実験を論拠としている。しかし、1997年に国際経験美学会誌の黄金分割特集ではこの実験結果は「永遠に葬るもの」とする見解があるなど、1867年のフェヒナーの実験結果の解釈については肯定的もしくは否定的な様々な見解がある。
・また類似の安定した比として白銀比がある。
・黄金比は美容外科にても用いられ、身体において、足底から臍(へそ)までの長さと、臍から頭頂までの長さの比が黄金比であれば美しいとされることがある。また、顔面の構成要素である目、鼻、口などの長さや間隔、細かな形態も黄金比に合致すれば美しいとされることがある。
前回の議論で、ユークリッドの原論や、長方形の分割でまた相似な長方形が生まれる、というような話をしました。
フィボナッチ数列や、黄金比は数学的に非常に興味深い対象であることは現在でも変わりありません。
でもねぇ。
美というのはまた別じゃないのか、「最も美しい」なんて誰に決める権利があるんだ?
とへそ曲がりの私は思うわけです。
適当なところがよいのではないですか?
★再確認
この長方形ABCDの短辺と長辺は黄金比になっています。
★日常使う紙、A4とかB5とか。
この長方形の紙の短辺と長辺の長さの比がどうなっているかご存知ですか?
長い方を半分に折ってできる長方形が元の長方形と相似なのです。
短辺を1、長辺をxとすると
1:x=(x/2):1
なのです。
これを変形すると
x^2-2=0
ですから
x=√2(x>0)
となります。
1:√2 という比なんですね。
この比でもって、A0は面積が1平方mで、B0は1.5平方mなのです。
あとはどんどん半分に切っていけば、相似形のまま小さくなるのですね。
ホント?という方のために
A系列でもB系列でもいいです。紙を一枚用意して下さい。
横長において、図のように名前をつけます。
長方形ABCD。
ABを辺ADに重ねて、折り筋をつけて開くと、筋AFがついていますよね。
辺ABを1とすれば、AFは√2です。これはもう説明不要ですね。
そこで、AFをADに重ねてみてください。
ぴったり合うはずです。
これで、辺ADの長さは√2であることが分かりました。
いつの頃からか、この紙の辺の比1:√2 を黄金比になぞらえて「白銀比」とかいうようになったらしいのですが、私はある種の不快感を感じています。黄金比に次いで美しい、とでもいうんですかねぇ。傲慢なことだ。
美に介入するな!
√2が現れることは美しい。
でもその比が美的に美しいとは思えないんですね。
★さて
黄金比φ≒1.618034・・・≒1.6
紙の比≒1.414に1356≒1.4
Aは1:2 の長方形
Bは1:1.6の長方形
Cは1:1.5の長方形
Dは1:1.4の長方形
Eは正方形
です。
私が思うに、四角なものを描くときに、正方形は整った図形だけれど、面白味がない。
1:2の長方形は、少々長すぎる。
その間1:1.5をとると・・・なかなか、よいバランスです。
そして適当にずらすと
1:1.5を挟んで少し長めだと黄金比、少し短めだと紙の比が自然と出てくるんじゃないですか?
ジャストというのが気に入らなくって、ちょっとずらしたものを、測ってみれば黄金比だったり√2として測られるんじゃないかと。
人間のやることなんて、そのくらいの適当なところでいいじゃないですか。
「いい加減」なのが「良い加減」なのだと思っています。
数学的な構造の美を感じるセンスは少しだけ私にもあります。
でも、それとこれとは次元が違うと思っています。
黄金比という言葉が独り歩きして、そちらのイメージから何が何でも美しいと感じなければならないのでしょうか?
自分の感性を大切にしたいと自らに言い聞かせています。
★参考サイト
http://mshi.no.coocan.jp/pukiwiki/?%B8%A6%B5%E6%BC%BC%2F%A5%D5%A5%A3%A5%DC%A5%CA%A5%C3%A5%C1%BF%F4%A4%C8%BF%A2%CA%AA
「フィボナッチ数と植物の形態」
私の感想:これ最高!是非お読みください。
http://sky.geocities.jp/bunryu1011/rasen.htm
「生命のらせんの不思議」
私の感想:とにかく写真がいっぱい。楽しいです。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_b0d1.html
「巻き貝シミュレーション」
ラセンということで私のブログ記事も付け加えておきます。
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