アルヘイ棒
2012.2.1
密蔵院からの帰り道、ちょっとだけ遠回り。交差点で信号待ち。右を見たら床屋さん。いつも見ているものですが、パチリ。
{ちなみに、わたくし、結婚以来40年、床屋さんに行ったことがありません。自宅でやってます。安上がりな人だ。}
おなじみ、床屋さんの看板ですね。名前は何というのかな、と調べてみたら
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB
サインポール
サインポール(signpole)は理容店を示す細長い円柱形の看板。赤・白・青の三色の縞模様(レジメンタル・ストライプ)がクルクルと回転する。
ひねりを加えた形が、安土桃山時代にポルトガルから伝来した砂糖菓子有平糖とよく似ていたことから有平棒(あるへいぼう)(またはアルヘイ棒)ともいう。英語圏ではバーバーズポール(Barber's pole)と呼ばれる。
営業中を表すためにサインポールを回す。しかし、常夜灯代わりに閉店後も回転させずに明かりのみつけている場合もある。また、営業中でも予約客でいっぱいという場合に止めることもある。
日本のサインポールの模様は、右側に行くに従って上がる、いわゆる「Z巻き」が圧倒的に多い。
なるほど。サインポールでいいようですが、アルヘイ棒というのが面白くって。
タイトルに使ってみました。
★さて、このサインポールなのですが、高校物理で波動の授業をする時によく引き合いに出したものです。
サインポールはぐるぐる回っているだけなのに、下から次々と湧き出して、上へ次々と吸い込まれていく。際限もなく続く。子どもの頃不思議じゃなかったですか?
いくらでも湧き出すなんてどうして?
いくらでも吸い込むなんてどうして?
飽きずに眺めたものです。
★準備:大きなメスシリンダーに太い銅線かアルミ線をきれいなラセンに巻きつけて、そっとはずします。
線の端っこを慎重に軸の位置にして、糸でつるします。
糸をスタンドの腕に結んで、ラセンが揺れずに回転できるようにします。
これを、スライドプロジェクターを光源として、壁に影を映します。
・先ずは静止状態から。
そうすると、ラセンの影は波の形になります。
{授業では先行して、回転運動の影は上下運動、単振動になることを見ておきます。}
・ラセンを吊るしている糸をよじって、ラセンを軸の周りに回転させます。
すると、波が進行します。
回転方向によって、上だったり下だったり進行方向は変わります。
・ラセンにゴムの切れ端のようなものをくっつけて、回転させますと、そのゴムの影は円運動の影ですからその場で往復運動・単振動をしていることが改めて認識されます。
{視覚的にはすごく面白いのです。波が上へ進行するように回したとしますね。そのとき、くっついているゴムはその高さで回っているだけなのに、影を見ていると、するすると滑り落ちるように見えるのですね。一緒に上にいくはずのものが、その場にとどまっているというのは滑り落ちているからだ、と私たちは認識してしまうのです。これは面白い。生徒もわいわい楽しみます。}
・最初から波の形に並んだ点が、その高さでそれぞれ回転運動するのを真横から見ると、進行する波になるのです。
・これがサインポールの仕組みなんですね。で、進行波に見えるのです。
★これ、物理の授業でやった演示実験です。仕掛けが結構大がかりになるので、生徒実験にはなりません。
円運動の正射影は単振動。
単振子の振動を真下から見ると単振動。
バネ振り子の振動と単振子の振動が並ぶように投影すると、同じ振動だということが一目でわかる。
単振動の連なりが進行波。
こういうのを大がかりに見せると、式での理解とは別に、直観的に理解できるわけです。
工業高校での授業では、式も使うけれど、直観的な理解を大事にしましたっけ。
これ見てください。
サインカーブをずらして並べただけですが、いかにも波が進んでいくように見えるでしょ。
図中の「●」はその位置で上下しているだけですね。
サインポールでは、赤や青や白の線が、真横から見るとサインカーブの手前側の部分に見えるのです。それが回転しますから、同じ高さでぐるぐる回っているだけなのに進行する波に見えてしまいます。
★いやぁ、そういう記憶がどっと蘇りますね。
で、思わず写真を取ってしまったという次第です。
★別件1:子育ての時。トイレットペーパーの芯とか、ラップフィルムの芯にラセンを描きましてね、糸でつるして、手製のサインポールを作って、ほら床屋さんとおんなじ、とか言って遊びましたっけ。なつかしい。
★別件2:ウィキペディアに「安土桃山時代にポルトガルから伝来した砂糖菓子有平糖」という記述がありますね。これで思い出した、ホントにまるっきりの別件。
NHKで、梅津さんという私と同い年のアナウンサーの方が担当している「気になる言葉」というコーナーがありまして。ある回で、「金平糖」の語源について話していました。
http://www.nhk.or.jp/kininaru-blog/97023.html
2011年10月 3日(月)
江戸時代からある和菓子『落雁』と『コンペイトウ』の名前の由来についてたどっていくと、当時の日本人の嗜好を垣間見ることができます。『落雁』という菓子の名前は、中国の菓子「軟落甘(なんらくかん)」の軟を略して、「落甘」としたと言います。また、江戸時代の百科事典「類聚名物考」によると、この菓子、はじめは黒胡麻を加えていたようで、白い菓子に散る黒点を、舞い降りる雁に見たて『落雁』というようになったと言います。雁が舞い降りる情景が描かれた、近江八景「堅田落雁」の浮世絵のように、雁が舞い降りる情景は、当時、情趣深いものとして好まれていました。『コンペイトウ』はポルトガル語で「砂糖菓子」という意味のコンフェイトConfeitoに由来し、漢字で書くと【金平糖】とも当てることができます。これはただの当て字ではなく江戸初期に江戸で大ヒットした「金平浄瑠璃」の主人公、坂田金平(さかたのきんぴら)に由来します。金平は、金太郎さんでおなじみの坂田金時の架空の息子という設定で、怪力剛勇にして武勇に秀で、さまざまのすぐれた武功をたてたことから、【金平=強い】という意味を持つようになりました。【金平糖】の「金平」は、砂糖の甘みが強いことから。他にも、「金平」がつく言葉があります。金平ごぼう、金平足袋、金平糊・・・金平ごぼうは、ごぼうが固くて辛いことから、金平足袋は丈夫な足袋のこと、金平糊は、粘り気の強い糊のことで、いずれも強いという意味を含んだことばです。二つの和菓子の名前の由来から、言葉と文化の密接な関係が見えてきました。
金時さんの息子が「金平」さんとは知らなんだ。
ねじりん棒の砂糖菓子が「有平糖」で、粒々凸凹の砂糖菓子が「金平糖」。
なるほどねぇ。
今度お食べになるときは思い出して下さい。
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