コオロギの汚染
こんな記事がありました。
読売新聞(2012年1月12日08時11分)
コオロギ5百匹からセシウム4千ベクレル検出
東京電力福島第一原発事故で、原発から40キロ離れた計画的避難区域内に生息するコオロギから1キロ・グラム(約500匹)あたり4000ベクレル以上の放射性セシウムが検出されたことが、東京農工大の普後一(ふごはじめ)副学長(昆虫生理学)の調査でわかった。
別の場所のイナゴからも最大200ベクレルを検出した。
調査は、昨年10月、原発から約40キロほど離れた計画的避難区域の福島県飯舘村北部でコオロギ500匹、60~80キロ離れた本宮市役所付近や須賀川市北部、桑折町役場付近、猪苗代町の猪苗代湖付近の水田でイナゴ計2000匹を採集した。
飯舘村のコオロギからは1キロ・グラムあたり平均4170ベクレルを検出。須賀川市のイナゴは同196ベクレル、桑折町と本宮市は、それぞれ同82ベクレルと75ベクレルだった。
「コオロギも汚染されていた」というだけの出し方は、無用な不安をあおるだけのような気が致します。
★黙って、計算だけしてみます。
・コオロギ500匹で1kgですか。1匹あたり2g。妥当でしょうね。
・4170Bq/kg
ということは、1匹だと8.3Bq(1秒間に8個の原子が壊れます)。
・「放射性セシウム」というのがCs134かCs137か分かりませんが、計算してみましょう。
例の式を使って
Cs137の場合:
4170×137×(9.46×10^8)×(2.4×10^(-24))
=1.30×10^(-9)g
Cs134の場合:
4170×134×(6.31×10^7)×(2.4×10^(-24))
=8.46×10^(-11)g
Cs137なら:0.0000000013g =(別の呼び方で)1.3ng(ナノグラム)
Cs134なら:0.000000000085g=(別の呼び方で) 85pg(ピコグラム)
これが500匹での値ですから、1匹ならさらにこの1000分の2です。
評価は差し控えます。
★-----------------------------------------------------------------
2011.12.24の朝日新聞「今さら聞けない+ 食べ物からの放射能」という記事の冒頭部分を引用します。
「食べ物から検出される放射能がゼロにならないと、怖くて食べられない」
そんな声を聞きました。確かに、体に入る放射性物質は少しでも減らしたいものです。
でも、今も続く東京電力の福島第一原子力発電所の事故による放射能の放出がたとえなくても、食べ物による体内被曝はゼロにはできません。
今回の事故前から、体重60キロの成人男性ならば、体内に6000ベクレル程度の放射性物質があります。放射線医学総合研究所放射線防護研究センター長の酒井一夫さんによると「筋肉が多い男性より女性の方が少し少ない」そうです。
こうした放射能は、主に食べ物を通して体内に入ってきます。原発事故などがない自然状態でも、土や大気や水には、岩石に元々含まれる放射性カリウムや、宇宙線でできる放射性炭素といった放射性元素が常時含まれています。
食べ物に多く含まれているのが放射性カリウムです。大半のカリウムに放射能はなく、放射性カリウムは全体の0・012%に過ぎませんが、食べる量が多く、体内に常時存在する放射能6000ベクレルのうち、4000ベクレルはこの放射性カリウムによる放射能です。
カリウムは、養分とともに吸い上げられて作物に入り、牧草や穀類を食べる家畜の肉や牛乳にも入ります。作物が持つ放射能は、大半は土の濃度より大幅に低いのですが乾燥させた昆布やお茶、ドライミルクなどは水分が抜けて軽くなっている分、カリウムの放射能の数値が高めに出ます=図。
体重60kgとしての話ですが、体内で常時、1秒あたり6000個ほどの原子核が壊れて放射線を出しているのですね。これは、すべての生物がバックグラウンドとしてさらされてきた放射線です。進化の過程でずっと。
ですから、そういう放射線で細胞や遺伝子に傷がついた時でも、修復する能力があるし、修復できなければ細胞が自分自身を消滅させるアポトーシスという機能もあるし、それでもなお、ガン化してしまったら、免疫機構がその細胞を除去します。
生物ってそうやって進化してきたんですよ。ヒトも。
それでもなお、すりぬけてガンができることはある。年齢を重ねるほどガンは避けがたくなる。私はそれを受け入れますけどね。もう歳だから。
「体内に常時存在する放射能6000ベクレルのうち、4000ベクレルはこの放射性カリウムによる放射能です。」だそうですから、まぁ、コオロギ1kgを食べたくらいの放射能は体内に自前でいつも持っているということですね。
ところで、カリウムの放射能というのは
K40という同位体が、軌道電子捕獲(electron capture = EC)というちょっと耳なれない壊変形式で放出するβ線(=電子)です。
半減期は1.251×10^9年=12,5100,0000年(12億5100万年)
という長い半減期で、生物にとっては、ずっと変化しない強度で存在しつづける、とみなすことができます。(いくら待っても減りません)
「人事」カテゴリの記事
- クリスマスの足袋(2022.12.25)
- 日食月食(2022.11.21)
- 朝日川柳欄から(2022.11.21)
- 北前船(2022.10.25)
- 人は生きることがその人の最大の役割(2022.10.24)
コメント