原子炉事故で放出された放射性物質の質量について:1
★きっかけは下の新聞記事です。
[今さら聞けない+]放射性物質と危険性 最も脅威は放射性セシウム(朝日新聞 2011年11月26日)
・・・
では、今回の事故で実際にどれくらいの物質が環境中にばらまかれたのでしょうか。事故から4日間に大気中に出た推定量は、セシウム137が約4700グラム、セシウム134が約380グラム、ヨウ素131が約35グラムです。
あわせても5キログラムとちょっと。しかしこれだけで、全国の広範囲に重大な汚染を起こしていることに驚かされます。
プルトニウム238の放出量は0・03グラムで、セシウム137の15万分の1以下。この量を勘案すると、体への影響はセシウム137の約300分の1ということになります。
プルトニウムは原発の直近にとどまり、土壌から検出される量もほんの少し。福島第一原発1、2号機の排気筒から500メートル離れた土壌での検出重量は、セシウム137の80万分の1でした。これは、過去の大気圏内の核実験によるものと同じぐらい微量です。
ストロンチウム90の放出量はセシウム137の100分の1以下の約28グラム、土壌からの検出量は1000分の1程度でした。
・・・
★あれれ、ベクレルでもなく、シーベルトでもなく、質量[g(グラム)]だなぁ。
「5kg」なのかぁ、たったそれだけのものなのか。それが広く薄く分散して、この汚染なんだ、放射性物質というものは恐ろしいものだ、で、その広く薄まってしまった「5kg」を取り除くというのは、かなりとんでもない作業だなぁ。
こんなことを思いました。
放射性物質の壊変速度であるベクレルと、放射性物質の質量はおそらく、ややこしい関係式ではないだろう、という見通しは持ったのですが、自分で求めてみるか、とまではいかず、放置していました。
★さて、「理科の探検 Rika Tan」という雑誌があるのですが、「リカ先生の10分サイエンス」という連載記事がありまして。
2012年1月号では「放射線の単位の使い分け……ベクレル、グレイ、シーベルト」という記事でした。
その中にこんな記述がありました。博士とリカさんの対話形式で進みます。
博士:・・・
ちなみに、1Bqの放射性物質の質量は、
(質量数)×(秒で表した半減期)×2.4×10^24
で求められる。単位はグラムじゃ。
リカ:げげ。公式だ。やだなぁ。また計算させられるかも。・・・
こんなやりとりのあとで、
博士:500Bqのセシウム137が何グラムなのか計算してごらん。セシウム137の質量数が137、半減期が30年じゃ。
リカ:げげ~、やっぱり。ええと・・・
100億分の1.6グラム!
博士:ほお。できるじゃないか。福島第一原子力発電所からは合計で1.5×10^16Bqのセシウム137が放出されたという試算がある。これも重さで言えば5kg程度じゃ。
{註:「10^16」という表記は「10の16乗」と読んで下さい。上付き表現がない時の書き方です。}
ということで、また出会ってしまいましたよ「5kg」に。
しかも、ここでは「公式だ」と言わせてます。
★現役の教師時代、一番不快だったのは、何か式を書くと「先生それ公式?」というやつでして。
生徒は公式なら暗記するけど、公式じゃなければ一切記憶にとどめる気はない、というのです。
自分で式を導けることが大事なんだ、とかいってもダメ。
公式は暗記するもの
と仕込まれているんですねぇ。情けねぇ。
私は、式というものは自分で作るもの、というスタイルですから、まったくもって、参ったんだよなぁ。
ここで「公式」といわれてしまうと、俄然、式を作りたくなる性分なんですね。
で、やってみました。
式がどのように導かれてくるものなのか知りたいと思われる方は続き
原子炉事故で放出された放射性物質の質量について:2
をお読みください。
{公式は暗記するもの、という方にはこれからの話は無縁となります。}
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