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2011年12月19日 (月)

牛レバー内にO157

牛レバー内にO157 生食禁止の可能性 厚労省調査
という記事がありました。2011年12月15日、朝日新聞です。
一部を引用します。

 牛の肝臓(レバー)の内部に食中毒の原因となる腸管出血性大腸菌がいることが、厚生労働省の調査でわかった。初めての確認となる。O(オー)157など腸管出血性大腸菌は毒性が強く、死亡する危険もあり、生レバーの提供は禁止となる可能性が高まった。
 ・・・
 8月から9月までに食肉処理された計約150頭の牛の肝臓を調べたところ、2頭の肝臓内から生きているO157が見つかった。腸管出血性大腸菌が存在したかどうかを調べる遺伝子検査でも複数の牛から確認された。集計中だが、10頭前後に上るとみられる。
 これらの検査は重さ数キロある肝臓のうち25グラム分を抽出して実施したため、未検出の牛でも菌が存在している可能性はあるという。
 また肝臓がつくる胆汁でO157が増殖することも判明。このため、腸管にいるO157が、胆汁をためる胆嚢(たんのう)へ移動し、すぐそばの肝臓内部に入り込んだとみられるという。
 これまで生レバーで腸管出血性大腸菌による食中毒は報告されているが、腸の中にいた菌が解体時などに肝臓の表面に付着したことが原因と考えられていた。今回、肝臓の内部で確認されたことで、調理の際にはレバー片の表面だけでなく、内部全体を75度で1分間以上加熱しない限り、食中毒を起こす危険があることがわかった。
 ・・・

というものですが。

肝臓という臓器は、きちっとした形を持ったものとして取り出すことができます。
「腸の中にいた菌が解体時などに肝臓の表面に付着した」という形でO157が付着して食中毒が起きたと考えられていたのですね。

ところが今回、肝臓の「内部」に菌がいた、ことが分かったわけです。
どうやって、肝臓の「内部」に菌が入ったのか?
「腸管にいるO157が、胆汁をためる胆嚢へ移動し、すぐそばの肝臓内部に入り込んだとみられる」こういうように説明しています。

「内部」というのは結構難しい問題があります。
体内の、肝臓という臓器の一部を切りだして、そこにO157がいたのですから、「肝臓内部にいた」、でよさそうですが、本当でしょうか?

牛にとっての「本当の体内」にO157が入り込んだら、ヒトの食中毒とは症状は異なるかもしれませんけれど、やはり感染であることには間違いないはずです。そうであるなら、牛は免疫系を駆動して、O157感染を排除するはずです。だって、体の中に自己でないものが入り込んだら排除する、というのが少なくとも我々哺乳類の免疫の基本でしょ。

牛の肝臓の「内部」でO157が生息していられる、とするなら、実はそこは牛にとっての「体外」だから許容しているのではないでしょうか。

★牛も人間も、「ちくわ」のようなものです、変なたとえですが管なんです。
ちくわのすり身の中が「体内」で、ちくわを貫く穴の中は実は「体外」です。
口から肛門にいたる消化管の中は、体外空間なのです。
体外空間を通過していく食物に、体内から消化酵素を分泌して、体外で分子レベルで細かく消化して、他の生物組織としての痕跡の無くなった低分子を栄養として体内に吸収するのですね。

十二指腸の管の中は実は体外。
そこへ開口する総胆管の中もやはり体外につながっている。
総胆管に合流する、胆嚢からの胆管の中も体外につながっている。
胆嚢に胆汁を送ってくるのは胆細管ですから、胆細管の中も、ものすごく細く狭い空間ですが、体の外部空間につながっているのですね。
胆細管を形成する肝細胞が「体内」と「体外」を仕切っているわけです。

医者でもない私の想像にすぎませんが、おそらく、O157が通常で生息できるのは胆細管の中まででしょう。そこを破ったら感染症ですから、牛の「体内」だって黙っちゃいないと思うのです。
マクロに見て、肝臓の中にO157がいた、ということは間違いではありませんが、おそらく、生物学的な意味で、肝臓内の外部空間にO157が生息していたのだと思います。

確かに、生でレバーを食べるのは危険です。そのこと自体は間違いではないので、気をつけましょう。

★生物にとって、体の「内と外」は厳密に仕切られていなければなりません。
いつの間にか、体内と体外がつながったりしたら、自己というものが消滅します。
そうならないように、体内を守るのが、生きるということです。免疫もその一つなんですね。。

キラーT細胞という免疫系の細胞は「パーフォリン」という筒のようなたんぱく質で侵入細胞の細胞膜に穴を開けます。穴をあけられた侵入細胞は、細胞の内と外がつながってしまうので死にます。

単細胞動物のゾウリムシが生きるにあたって、食作用(エンドサイトーシス)というやり方で細胞膜をくぼませ、外部のエサを食胞に包んで細胞内に取り入れるということを高校生物で学んだでしょうか。
外部を切り取って、囲んで、内部に持ち込みます。
細胞内では消化酵素を作りますが、消化酵素が細胞内を自由に漂ったら危なくって仕方がない、自分が消化されてしまう。
だから小胞体という膜で包んだ中に消化酵素を入れておく。膜の融合で食胞内に消化酵素を注ぎ込み、食胞内という体外空間で消化し、吸収してもよい小分子になったものだけ膜越しに細胞内に取り入れ、消化できなかったものは、食胞を細胞膜に融合させて外へ捨てる。エキソサイトーシスという働きですね。
結局、細胞の外部空間が細胞の内部空間と接触してしまうということはせずにすべてが行われていますね。
ことほど左様に、生物は自己の内部と外部を厳密に仕切っているのです。

この原則で、いろいろ健康食品やら美容食品を見てください。
嘘っぱちだらけであることがよくわかります。

他の生物に由来するものがそのまま体内に入っちゃたまりません。
原則的に思考してください。

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