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2011年11月 8日 (火)

低線量の内部被曝

★2011年10月25日の記事です。

小中学生の体内から少量のセシウム 福島・南相馬で検出
 福島県南相馬市の市立総合病院は、9月下旬から検査した市内の小中学生の半数から少量の放射性セシウム137が検出されたことを明らかにした。事故直後に呼吸で取り込んだものか、事故後に飲食物を通じて取り続けたものか不明のため、病院の責任者は「定期的に調べて健康管理につなげたい」と話している。
 小中学生527人を最新の内部被曝測定装置で調べたところ、199人から体重1キロあたり10ベクレル未満、65人から同10~20ベクレル未満、3人から同20~30ベクレル未満、1人から同30~35ベクレル未満のセシウム137を検出した。
 セシウム137が半分になるまでは約30年かかるが、体からは便などとともに排出されるため、大人で100日程度、新陳代謝が高い小学校低学年生で30日程度で半分が出ていく。
 低線量の内部被曝の人体への影響についてはわからないことが多い。1945年の広島・長崎への原爆投下や、86年の旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所事故などでは、詳細なデータが取れていないからだ。
 今回、少量ながら内部被曝の量を数値で把握できたことで、継続的に測定すれば、事故時に呼吸で取り込んだ量と、その後に飲食物を通じて取り込んだ量がそれぞれどのくらいかなどが、これまでより正確に推測できるとみられる。
 その結果、内部被曝と健康被害の関係を詳しく調べることができ、今後は、食品を通じた内部被曝の増加を監視できるという。検査結果を分析している東京大学医科学研究所の坪倉正治医師は、「数カ月後に検査して推移を見れば、ある程度は推測できる。国家的な取り組みが必要だ」と話す。
 25年前にチェルノブイリ原発事故を経験したベラルーシのベルラド放射能安全研究所は、子供の場合、放射性セシウムは体重1キロあたり70ベクレル以上を危険レベル、20ベクレル以上を要注意レベルと決めている。
 京都大原子炉実験所の今中助教は「人体には1キロあたり50~60ベクレルのカリウム40という放射能が自然にある。その変動の範囲の10や20なら、神経質になっても仕方がないだろう。30ベクレルあったら、少し気になるので、減らしたほうがいい」と話している。

国民を実験材料にするのか、というお叱り、批判が出ると思いますが、正直なところ、私自身も含めて日本人全体が低レベル放射能の人体への影響の実験材料になるべきだと考えています。
今回の原発事故そのものには私の関与は薄い。ただ、東京に住むものとして、福島の原発からの電力を使って恩恵を受けて来たという関与は当然あります。原発に批判的でありながら、大きな声を上げずに来た、という点でも責任の一端に関わりはあります。
それはそれとして批判を甘受しますが、とにかく、原発事故は起こった、という事実があります。
起こった以上、それを研究しないという手はない。
東京だって以前とは異なる放射能レベルになっているでしょう。低レベル被曝は避けがたい。
そのなかで生活していくことによって、我々に生じる種々な疾病などの変化をきちんと疫学的に調べて頂きたい。10年20年・・・100年・・・かけて日本人の疾病や平均寿命などなどについて、冷静な眼で疫学的な研究を続けていただきたい。
そうでなければ、低レベル被曝の下で生きることが無駄になってしまう。
地球全体に放射性物質汚染の影響を及ぼしてしまった日本の国民の責任としてきちっと調べてほしいのです。日本人についての研究が世界中の人に役立つのです。
おおいに研究して下さい。

★ところで、「カリウム40という放射能が自然にある」という点について、少し解説しておきます。
カリウム40の半減期を理科年表で調べると「1.227×10^9y」でした。
12億2700万年ですね。
こんな長寿命の放射性核種ですと、時間とともに減っていく、ということはないですね。いつも環境中で一定のレベルで放射線を出し続けるということになります。一応、放射性核種なんですが、(少なくとも人間的時間スケールでは)減らないんですから、安定核種と同じなんです。
理科年表では「おもな放射性核種(放射性同位体)」という表にカリウム40が載っていると同時に、「安定同位体」という表にも、カリウム39,40,41が載っているのです。それによりますと

カリウム39が93.2581%
カリウム40が 0.0117%
カリウム41が 6.7302%

こういう構成比です。
少ないんですが、地球上どこに行っても、必ずこの構成比でカリウム40は存在します。
で、生物が生きて行く上で、カリウムとナトリウムは必須ですから、カリウム40からの放射線は避けることができない、ということが生物にとっての必然なのです。
{細胞の内外でカリウムとナトリウムの濃度差を維持するというのが細胞にとっての基本的な生命活動の一つなんですよ。}

カリウム40のうち
全体の89%はベータ崩壊でカルシウム40になり、β線を出します。
11%は電子捕獲(Electron Capture=ECと略)でアルゴン40になり、γ線を出します。
足して100%のようですが、ごくわずかに「陽電子崩壊」で陽電子を出してアルゴン40になります。

「陽電子」というとビックリされそうですが、身近で使われています。
医療分野で、陽電子放射断層撮影法=ポジトロン・エミッション・トモグラフィー=Positron-Emission-Tomography=PET
という診断法がありますね。
あれが「陽電子崩壊」をする原子をグルコースなどに組み込んで、グルコースを大量に消費する組織(例えばがん組織)を検出するという方法なのです。

下のウィキペディアなど参考に読んでください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A040

人体での内部被ばく線量
カリウムは、岩石に大量に含まれるほか、動植物にとって必要不可欠な元素である。食品中に含まれるカリウム40の濃度はかなり高く、白米1kg中の放射能強度は33ベクレル(Bq)ほどになる。外洋の海水中には1リットルあたり12.1ベクレルが含まれる。カリウムは水に溶けやすくナトリウムと似た性質を持ち、経口摂取するとすみやかに全身に広がる。生物学的半減期は30日とされる。人体が持つ放射線強度は、体重60kgの成人男子で約4000ベクレルである。これによる年間の内部被ばく線量は、0.17ミリシーベルト(mSv)となる。天然に存在する放射能の中で内部被曝による線量が大きいものの一つであるが、カリウムの経口摂取量の大小にかかわらず、カリウムの体内量は常に一定に保たれているため、食事による被曝量の変化はない。人工放射性物質と同様の体内被曝をするのであって、人間は体内に常に数千ベクレルの放射性物質を含有しているという事実を理解する必要がある。




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