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2011年11月16日 (水)

ラジウム

★ラジウムが見つかるという出来事が相次ぎました。
そのこと自体には私が何か付け加えることはありません。
そのことを報じた新聞記事から、私の知識で補える部分について書きます。

高線量、またラジウムか 東京・世田谷、地中に試薬瓶(朝日新聞 2011年11月2日)
 東京都世田谷区八幡山1丁目のスーパー付近で測定された高い放射線量について、文部科学省は1日、ラジウム226が原因である可能性が高いと発表した。文科省は、何らかの理由で東京電力福島第一原発の事故以前から地中にあったものとみている。
 (中略)
 文科省によると、約30センチの深さの土壌を調べると、ラジウムが崩壊して生まれるビスマスや鉛を検出したという。40センチ掘ると、試薬瓶の口が見えた。まだ取り出しておらず、中身は不明という。この表面の線量を測ると毎時約40ミリシーベルトにのぼった。地表面の高さでは毎時1ミリシーベルトだった。
 (後略)

15日にもこの場所近くから、ラジウムが入った瓶が掘り出されていますね。

★「ラジウムが崩壊して生まれるビスマスや鉛」という部分について簡単に説明します。
原子爆弾や原子炉は主として「核分裂」によって放出されるエネルギーを使うものですが、
原子核レベルで起こる出来事にはそもそもどんなものがあるのか、簡単に知って頂きたいと思うのです。

不安定な原子核が変化することを色々な名前で呼びます。
「放射線を出して壊れ変わる」ので「放射性壊変」「放射壊変」とか。
「壊れる」ということで「原子核崩壊」「崩壊」とか。

アルファ崩壊:α線を出して崩壊する。(alpha decay)
ベータ崩壊:β線を出して崩壊する。(beta decay)
核分裂(nuclear fission )
自発核分裂(spontaneous fission、SF)
核異性体転移(isomeric transition、IT)

ガンマ崩壊:γ線を出す。(gamma decay)
(これは、上に上げた項目の壊変が起こった後、高エネルギー状態にある原子核がガンマ線としてエネルギーを放出して、落ち着くという出来事です。基本的にはどの壊変でもガンマ線は放出されます。)

さて、下のサイトの図を別タブにでも呼び出して、すぐ見られるようにして以下の文章をお読みください。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/18/18030101/06.gif
「天然放射性核種の壊変系列図(ウラン系列)」というものです。
理科年表をお持ちなら、物理の部に載っていますのでご覧ください。同じものです。

原子核がα壊変を起こすとき:α粒子は原子番号が2のヘリウムの原子核(陽子2個、中性子2個)です。ですから、ある原子核がα粒子を放出すると、陽子が2個減り(=原子番号が2下がり)、質量数が4減ります。

原子核がβ壊変をおこすとき:β粒子は電子です。中性子がマイナスの電気を持った電子を放出し、自身はプラスの電気を持った陽子に変わると考えてください。ですから、ある原子核がβ線を放出すると、質量数は変わらないまま、原子番号が1進みます(増えます)。

こういうことを念頭に置いて図を見ます。
図中、226Raというのがあります。これが出発点のラジウムです。
このラジウムはα壊変をしてRn(ラドン)になります。この半減期は1600年。
このあと、短時間でどんどん壊変が繰り返され、210Pb(鉛)になりますね。これも22.3年の半減期で210Bi(ビスマス)に変わり、210Biは5日で壊変しますが、その前身の210PbがBiを補給し続けますので、なくなることはない。
最終的には206Pbになり、これは安定核ですので、ここで系列はストップします。

今回、何十年か前のラジウムが発見されたのであるなら、もちろん206Pbもあるでしょうが、新聞記事に出てきた「ラジウムが崩壊して生まれるビスマスや鉛」というのは「210Biと210Pb」だと思います。時間スケールがほぼ同程度ですから。(214Pbと214Biかなぁ、そのあたりの詳細は私のレベルでは分かりません。)

こういう出来事の中でとらえると、現在いろいろ起こる放射線についての出来事の様相が見えてくると思います。放射線が検出されてただひたすらに大変だ、と大騒ぎになるのではなく、出来事の全体像も把握するといいのではないでしょうか。
ちなみに、1898年にキュリー夫妻が発見した「ラジウム」は、「226Ra」でした。

★私自身は化学科の学生だったころに、放射化学の講義受け、実験もいろいろやりましたので、ラジウムを扱ったことはあります。
ラジウムは周期表の2族ですので、直上のBaと化学的性質が似ています。で、微量のラジウムをバリウムと一緒に硫酸イオンで沈殿させ、濾別して集め、放射線の測定をしました。
放射性物質というと何かすごく特別なもの、という印象があったのですが、化学的な振る舞いという観点から見ると、通常の物質と同じように化学反応する、ということが新鮮に感じられたものでした。

★「スーパー付近で測定された高い放射線量」という点についてひとこと。
地中に埋もれた瓶からα線やβ線が地表にまで出てくることはほとんど考えられません。
ですから、測定したのはγ線でしょう。
γ線の透過力は非常に高いので、これは出てきます。
で、γ線のエネルギーまで測定できる測定器を使っていれば、γ線を出した核種まで把握できるのですが、おそらく、γ線のエネルギーまでは分からないタイプの検出器が使われたのですね。ですから、γ線が出ているがその核種は分からない、ということで混乱が生じます。
できれば、γ線のエネルギーまで測定できる装置を使えば、早期にセシウムではなくラジウムだという推測ができて、混乱が少なくなると思うのですが、いかがでしょうか。

何だか、書くべきことがたくさん残っている気がしますが、今回はここで切ります。

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