今朝(9/15)の朝日新聞にこんな記事がありました。初めの方だけ引用します。
福島、土除染1億立方メートル 最大値を試算、県面積の1/7
処理の基準・保管課題
東京電力福島第一原発事故に伴い、放射性物質の除染対象になる可能性のある地域は、最大で福島県全体の7分の1に当たる約2千平方キロに及ぶことが専門家の試算で分かった。除染土壌の体積は東京ドーム80杯分に相当する1億立方メートルに上る計算だ。中間貯蔵施設の規模と建設費に影響することから、政府は今後、除染地域の絞り込みや技術開発などによる大幅な減量化を迫られそうだ。
森口祐一東京大教授(環境システム工学)が試算した。森口教授は、除染の考え方や手順などを盛り込んだ除染基準をまとめるために環境省が14日に初会合を開いた有識者による「環境回復検討会」のメンバー。
森口教授によると、年間の追加被曝(ひばく)線量を1ミリシーベルト以下に抑える目安として、毎時1マイクロシーベルト以上の分布域を、6月下旬に測定された空間線量のマップから抜き出した。警戒区域と計画的避難区域計1100平方キロを含む約2千平方キロにのぼった。その全体を、セシウムをほぼ除去できるとされる深さ約5センチまではぎ取ると、体積は約1億立方メートルになる。
(後略)
こういう時に、ちょっと紙の隅っこにでも、計算してみませんか?
「数覚」というか「量覚」というかを養っておくことは大事だと思うんですよね。
★「1億立方メートル」になるというのをまず確認してみます
「2千平方キロ」×「5cm」なんですよね。
こういう計算になります。
単位をメートルに揃えればいいんですね。
1万が10の4乗、1億が10の8乗というような桁感覚は常に養っておきたい。
それと、掛け算が、こういう「10の何とか乗」の形では肩の数字の足し算になることも身につけておくと、桁の見込みを立てるのが簡単になります。
★次に、「1億立方メートル」というのを「東京ドーム80杯分」といわれても、何が何だか分かりません。
分かりますか?
大きいんだか、大したことないんだか、見当がつかない。
もうちょっと分かりやすくしてみたいと思います。
下の計算を見てください。
{}
10の肩の数字8を3+3+2に分けます。
すると10^3mというのは1kmですから
1億立方メートルは「1km四方の土地に高さ100mに積む」という体積なのですね。
これならイメージしやすくないですか?
我が家でいうと、目の前の多摩川線の隣りの駅まで1kmです。
それを一辺とする正方形の上に100mの高さに盛り上げることになるのですね。
高さ100mというと、30~40階建てのビルの高さですよ。
こりゃ大変だ。
もちろん、別の分け方もできます。
たとえば
8=2+2+4
これだと、100m四方に1万mの高さ。1万mはちょっとなぁ。
感覚的にとらえやすいのはやはり3+3+2でしょう。
ちょっと工夫してみると、量がとらえやすくなります。
昔は「丸ビル何杯分」というのが多かったのですが、今は「東京ドーム何杯分」が多いですね。
でもって、そういわれて「分かりやすく」なりますか?
置きかえただけで安心してはいけませんね。
「除染」というと、「除菌」とかとおんなじで、「無くなってしまう」という感じでとらえていませんか?
そうではない。場所を移すだけなんです。消えません。これが放射性物質の厄介なところ。
1億立方メートル、どうしましょ。
テレビで高圧水を吹きつけて「除染」しているのを見ると、私は困惑する。
水の始末をちゃんとしないと、狭い範囲の比較的高い汚染が、広い範囲の比較的低い汚染、に変わるだけなんですけれど。
・何とかして、集めて。何とかして、濃度を上げて体積を小さくして。(ここまでが仮置場でしょうか)
・それを、漏らさないように集めて。(ここで中間貯蔵ですね)
・最終的に、一体どうするんだ?(最終処分)
●実はそれが今もって決まってはいない。
最終処分の仕方を確定できないまま、こんにちまで、国も原子力産業も走ってきてしまったのです。
そのつけが今、回って来た。
私は、この一点だけでも、原子炉の運転継続に反対です。
最終処分の方法もないままに、原発を作り続けてはいけないと思います。
原発を輸出しちゃいけないと思います。
日米で、モンゴルに核のゴミを押しつけられないか、という話もしてたんですよ。
それはないよな。
参考までに↓
モンゴル:核廃棄物問題 外国との協議禁止で法令公布
【北京・工藤哲】中国国営新華社通信は13日、モンゴルのエルベグドルジ大統領が13日付で、モンゴル国内で核廃棄物の問題を外国政府や国際組織と協議することを禁止する法令を公布したと報じた。
報道によると、大統領は政府に対し、核廃棄物の貯蔵や埋設、輸送を禁止する法律を厳格に守るよう求めた。交渉には国家安全委員会の同意が必要としている。
モンゴルでは、「核のゴミ」の国際的な最終処分場を日米主導でモンゴルに造る計画が表面化し、国内で批判が噴出した。その後、政府は協議したことを否定しているが、モンゴルの環境保護団体の関係者らは政府の見解を疑問視し、協議の詳細を公表するよう求めている。
毎日新聞 2011年9月14日 19時36分
付録↓
核処分場:モンゴルに計画…日米、昨秋から交渉
毎日新聞 2011年5月9日 2時34分
【ウランバートル】経済産業省が昨年秋から米エネルギー省と共同で、使用済み核燃料などの世界初の国際的な貯蔵・処分施設をモンゴルに建設する計画を極秘に進めていることがわかった。処分場を自国内に持たない日米にとって、原子炉と廃棄物処理とをセットに国際的な原子力発電所の売り込みを仕掛けるロシアやフランスに対抗するのが主な狙い。モンゴルは見返りとして日米からの原子力技術支援を受ける。だが、東日本大震災による東京電力福島第1原発事故で日本政府は原子力政策の抜本的な見直しを迫られており、「核のゴミ」を第三国に負わせる手法に批判が出そうだ。
◇福島事故受け批判必至
各国の交渉責任者が毎日新聞の取材に計画の存在を認めた。
関係者によると、3カ国交渉は昨年9月下旬、ポネマン米エネルギー省副長官が主導して始まり、経産省、モンゴル外務省が担当。核廃棄物の国内処分地選定の見通しが立たない日米と、技術支援で核燃料加工施設や原発を建設したいモンゴルの思惑が一致した。
原子力エネルギーは気候変動を防ぐ有効策とされ、原子炉1基数千億円のビッグビジネス。日本政府は原発輸出を国家成長戦略の柱に据え、ベトナムで受注に成功、インドやトルコとも交渉中だ。しかし、ロシアなどは原子炉と使用済み核燃料の引き取りをセットで販売しており、日米は不利な状況にある。
日本は英仏に再処理を委託、青森県六ケ所村に再処理施設建設を急ぐほか、同村に高レベル放射性廃棄物の一時貯蔵施設を保有するものの、他国に供給した核燃料の引き取りは極めて困難。2035年までに国内に最終処分地を選定する計画も難航が予想される。
米国もブッシュ前政権が02年にネバダ州に最終処分地を選定したが、地元の反対でオバマ政権が09年に計画中止を決定。使用済み核燃料の処分問題が宙に浮いてしまった。
このため日米は、処分問題の解決と「国際的な原発売り込みの弱点を埋める」(経産省)ため、地盤が強固なモンゴルに貯蔵・処分施設を造ることで一致。施設は地下数百メートルとなる見込みだ。経産省は計画実現で、原子炉メーカーの東芝、日立などの国際的な原子力ビジネスを支援できるとみている。
また国際原子力機関(IAEA)が、「モンゴルはウラン推定埋蔵量は150万トン以上の可能性がある」と指摘しており、開発が進めば世界トップ3のウラン供給国となる可能性が高い。日米は計画実現でウラン燃料の安定確保も狙う。
核廃棄物の国際輸送は、通過国や受け入れ国の同意に加え、IAEAなどが定める輸送方法に従えば可能。ただ、3国交渉の段階で計画が表面化すれば、通過国となりうる中国やロシアなどの干渉やモンゴル国民の反発も予想され、交渉は極秘に進められた。
しかし今年2月、ワシントンで3カ国が包括的な外交文書への署名にこぎつける予定だったが、直前に計画を知らされた日本外務省が「政府内での調整がまったく進んでいない」と反発。経産省主導に外務省が横やりを入れた格好で、署名は延期。その後に大震災が発生し、署名などの日取りは未定だ。
日本は大震災で原発政策の見直しを迫られているが、国内すべての原発をなくしたとしても、処分施設は必要。ただ、技術支援の見返りに核のゴミを他国に引き受けてもらう手法は、電源3法交付金による地域振興策をセットに福島などで原発の建設を進めたのと同じ発想と言える。