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2011年8月17日 (水)

ヒメグモについて

★昨日、ヒメグモのレポートを書きました。
1カ月にもわたる長期間、子グモたちを集合させていたということは、多分給餌をしていたのではないか、と書きました。
ネットで検索したところ、興味深いことが分かりましたので、まとめとしてご報告します。

http://www.ne.jp/asahi/jumpingspider/studycenter/himegumo/itohime.htm
飼育条件下でのヒメグモの子育て行動の観察:伊藤千都子

という論文です。(下線は「かかし」がつけたものです)

はじめに
 多くのクモは卵または卵のうを世話するが,通常,出のう後の幼体は世話しない。しかし、一部のクモは子グモがある程度成長するまで食物を与える。
 Kullmann(1968)は放射性同位体を使って、ヒメグモ科のヨーロッパ産の一種Theridion sisyphium の母グモが吐き戻しをすることを実験的に証明した。同様の方法が次の種にみられる。ヒメグモ科のTheridion impressum (Kullamnn et al.1971/1972)、Anelosimus studiosus (Barch,1977)、イワガネグモ科の Stegodyphus paciphicus (Kullmann et al. 1971/1972)、 S. sarasinorum (Kullmann et al. 1971/1972)、 S. minosarum(Kullmann et al. 1971-1972)、そして数種のガケジグモ (Gertch,1949)。 クモの子供の世話行動は生活史と関連して重要であるばかりでなく、社会性の行動の進化を論ずる課題でもある。 本論文では、著者が、日本中に広く分布するヒメグモ Theridion japonicum (2000年現在の属はAchaearaneaである)の子育て行動を若干観察した結果を報告する。

給餌過程
  吐き戻し給餌の代りに、ヒメグモの母親は餌を捕獲し、幼体のために吸飲した(sucked)。その過程を模式図に表した。
 生きたショウジョウバエを与えたとき、母親がそれを捕獲し、少しかむ、その間、幼体は網内で集合しているが、無視している(図2B)。母親が自分自身で食べるときは、餌の一箇所をかみ、幼体に与えるときは数箇所をかんでいた。母グモはまだ餌をかんでいる間に(図2C)、母親がかみ始めてから17分後だが、数匹の幼体は接近してきて(図2D)、他の幼体は別に餌の周囲に集まってくる(図2E)。幼体は集合し始めてから約25分後に餌の周囲に塊りを形成した。この過程の間に、母親と集合した幼体は餌に一緒にかみつく。その後、母親は餌から離れ、幼体はブドウの房状に塊っていた(図2F)。約105分後、幼体は次第に離れていった。最初の捕食行動から3-4時間後、同じことが繰り返された。すなわち一晩に二回であった。

すごいですね、子が吸いやすいようにしてやっているんですね。

 

約三週間のこのような幼体への給餌が続いた。卵のう2から出た幼体は卵のう1の幼体より、出のう日の違いから大きかったし、自分で餌を取り始めるようになったのも早かった。卵のう2から出た幼体が自分で餌を取り始めるようになった時期に、卵のう1の幼体はまだ母親から給餌されていた。一ヵ月後、母親が死ぬと、その体は幼体に吸飲され、その後、幼体は分散し、独立生活を始めた。

この論文では、母親が死ぬと、子が餌として吸飲される、となっています。

母親による「餌かみ」の意味
 出のうしたばかりの幼体は小さく、口器もじょうぶではないので、大きかったり、固かったりする餌はおそらく食べられないはずである。母親と幼体の牙の長さを測定したところ、幼体のそれ(63μm)は母親の牙(203μm)の3分の1以下であった。
 母親自身が食べるときは餌を1箇所かむが、幼体に与えるときは数箇所かむ。この事実は母親が積極的に幼体に給餌している証拠のひとつである。

★さて、この論文を踏まえた女子高校生の論文もありました。
http://www.ne.jp/asahi/jumpingspider/studycenter/seisyohime.htm
ヒメグモの生活史を探る(マイとメグのヒメグモ日記):神奈川県立西湘高等学校
素晴らしい論文ですので、是非お読みください。
個体識別のためにクモに愛称をつけて呼んだりして、思い入れの深さが伝わってきます。
なのに、

委託の落ち葉かき清掃の業者が入った結果です。毎日パートタイムのおばさん達が熱心に落ち葉かきをしていました。葉も剪定されていましたから、その勢いで処理されてしまったのです…
「調査中。さわらないで下さい」と立て札をしてあったのですが、その立て札も無残にも無視されて、鉄の棒が折れ曲がり倒れていました

なんということでしょうね。悲しくってやりきれなくなります。

 ヒメグモの子育て行動と母親食いを報じたIto(1985)の論文については、この事例は繁殖時期を外れた母グモの例外的な現象であったと思われますが、通常の時季ではどうなっているのかを問われたときに、誰も答えられる人はいませんでした。
 そこで、継続観察により卵のうの数とその出のうや子育てについても明らかにしたいと思いました。

丹念な観察です。

 9月11日に葉裏で死亡している母親「ゆず」がいますが、幼体に捕食されていません。
 同様に、母親が死亡した例を他にも2例観察しました。母グモが死んだとしても幼体は母親を食べないのではないでしょうか。

このような結論を得ています。これは結論の一部ですので、ぜひ全体はご自分でお読みいただきたいと思います。

1カ月も世話を続けると、おそらく母グモとしてはもう寿命だろうと私は思います。
母は力尽きて去り、子らは旅立っていく。そう考えたいと思います。

この論文を書いたお二人のもう一つの論文もありました。↓
http://www.ne.jp/asahi/jumpingspider/studycenter/himefusigi2.htm
ヒメグモの生活史を探る

これも読みごたえのある論文ですので、クモがお好きならぜひ読んでください。すごいです。

★ところで、この高校生が属していた生物部の顧問は「池田博明」先生とおっしゃいますが、クモ好きの方なら、えっ、あぁそうなんだぁ、と納得されると思います。
クモに関する専門家です。この方の御指導のもとでの研究だったのか、と得心しました。
http://www.asahi-net.or.jp/~hi2h-ikd/asjapan/spiderwebikeda.htm
ここに『クモの巣と網の不思議』というクモ好きの方必見の論文集がありますのでどうぞ。

★最後に
0816_3himegumoa 2011.8.16
そろそろ旅立っていくのでしょう。

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