« ユキノシタ | トップページ | The Bonin islands »

2011年6月27日 (月)

傘の天日干し

日差し求め咲いた傘 岐阜で和傘を天日干し(朝日新聞 2011年6月22日)
 伝統的な和傘の産地として知られる岐阜市加納地区で、梅雨の晴れ間に傘の天日干しをする作業が続いている。
 和傘には水をはじくように油を塗っている。このため、室内でストーブなどを使って干すことができず、天日で乾燥させる。2日間ほど干すと適度に乾く。最後に竹の骨に漆を塗るなどの仕上げを施して完成。主に京都や北陸方面に出荷されるという。

こんな記事があったんですね。気になるのは「天日で乾燥させる」という部分なんです。
なんだかこれ、「雨に濡れた傘が天日で乾燥する」というのと同じようなつもりで記事を書いている、という感じがしませんか?
違うんだなぁ、これが。

雨(水)に濡れた傘が乾く、というのは、水が蒸発していく、水分子が出ていく、そのために濡れた生地が「乾く」のですね。
油を塗った傘から、油が蒸発していくでしょうか?油分子が出ていくでしょうか?
記事中「室内でストーブなどを使って干すことができず」という表現は、ひょっとすると、油分子が空気中に出てくるというイメージを持っているのではないかと想像させます。可燃性の油の「蒸気」が出るのだから室内でストーブなどで乾燥すると引火して危険だ、というような感覚が裏にあるのではないでしょうか?
アルコールとかガソリンで濡れた布を室内でストーブで乾燥させたら、それは危ない。火事になります。そんなことをしてはいけない。

ですが、傘の油の乾燥というのは、出来事が違うのです。
傘に塗る油というのは、おそらく荏油(えのあぶら)とか亜麻仁油、桐油などでしょう。亜麻仁油が価格的にもいいのではないかな。
こういう油を「乾性油」といいます。「乾く油」ですね。
植物油ですから、炭素が18個くらいでしょうか、鎖になっています。こんな鎖状の分子は、空気中に蒸気として飛び出してくることはありません。
炭素原子と炭素原子の間に、二重結合という結合がたくさんあるのです。液体の油では二重結合が多く、固体の脂では少ないのです。

さて、亜麻仁油などは液体の油ですから二重結合が多い。二重結合というのは少し不安定で反応しやすいのです。そのために、空気中の酸素分子が二重結合を切って酸化し、さらに、隣りの分子との間で橋架けをしてつないでしまうのですね。そのために鎖状の分子が、立体的な編み目状に絡んでしまって、液体としての流動性を失って固体化するのです。
この出来事が「乾く」と呼ばれている出来事なのです。またこの酸素との反応は、熱や紫外線などで促進されます。

傘の紙に油を塗ると、初めは液体として紙の繊維の間に染み込みます。この時は「濡れている」。
それが、日に当ててやると、酸素と油の反応が進行して、油が固体化してきます。繊維の間に入ったまま固体化しますので防水になるのですね。そして、固体化しますから触っても指にくっついてこない、それで、「乾いた」ということになります。

和傘を防水するのに、油を塗って庭に広げて太陽光を当てる、というのはこういう操作だったのですね。
2~3日でかなり「乾き」ますが、完全に反応が終わるまでにな何週間もかかります。
白い紙の和傘だと、色が飴色になってきます。それが反応が進んだということの印です。

天ぷら油なんかも、液体の油ですから二重結合が多い。熱して天ぷらやフライなど揚げると、酸化反応が進みます。ですから、古くなった油を使わないように、というのは酸化した油は健康によくないよ、ということなのですね。
また、天ぷら油などをペーパータオルに吸い取って、ぐるぐる巻き固めて、ごみ箱に突っ込んでおくと、油の酸化反応で発生する熱がこもって、温度が上がり、紙が自然発火して火事になります。ご注意を。

二重結合の多い油は健康に良いと言われるのですが、同時に酸化されやすい油でもあるので、古くなった油は使わないようにして下さい。
体に良い善玉油は、どのようにしても善玉だ、というわけにはいきません。ものの性質をよく知って、よい部分だけを利用してください。

« ユキノシタ | トップページ | The Bonin islands »

理科おじさん」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 傘の天日干し:

« ユキノシタ | トップページ | The Bonin islands »

2023年1月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
無料ブログはココログ