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2011年4月21日 (木)

残存応力

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すっごく気になっている図があります。この図です。
3月20日の朝日新聞の記事に掲載されました。

地下、ひずみ広く変化 北海道から中部まで、地震発生確率に影響
 東日本大震災の影響で、地下の力のかかり方が変わり、地震発生確率がわずかに変化する場所が広範囲にわたることが、京都大防災研究所の遠田晋次准教授の解析でわかった。房総沖や中部地方の活断層にも影響が及び、ごくわずかだが、地震活動を活発にする可能性がある。
 ただし、断層のタイプによって影響の受け方は異なり、仮定も含んだ結果だ。もとから地震の発生確率が高いとされていた地域では、引き続き警戒が必要という。
 大地震が起こると、ひずみが解放されて地震が発生しにくくなる断層と、逆にひずみがしわ寄せされて発生しやすくなる断層がある。11日の地震は巨大だったため、影響は北海道から中部まで及ぶことがわかった。遠田さんは、領域ごとに影響を受けやすい断層のタイプについて地震活動の変化を推定した。
 11日の震源域の北と南では発生しやすくなり、離れた場所でも、ごくわずかだが、発生しやすくなる場所があった。15日の静岡の地震も影響を受けた可能性があるという。伊豆半島の東側の相模トラフと呼ばれる海域では発生しにくくなる変化が出た。「地震が巨大だったため、影響が及ぶ範囲が広かった」と遠田さんは話す。名古屋大グループも同様の解析を行い、今回の地震が引き金になって、ただちに東海地震や東南海地震の発生を早める影響はほとんどないという結果を発表している。

そこでこの写真を見てください。
Img023
これはFDケースの板の中に残った歪み(あるいは内部に残った応力)の像です。
「光弾性」という性質を使っています。
FDケースは溶けたプラスチックを射出成型という方法で注入口から型に押し込んで作りますが、その時に、固まる速さの違いなどから、注入口のあたりに力がかかったまま固まってしまい、内部に歪み(応力)が残るんですね。そうするとプラスチックの高分子の配向の違いによって偏光に対する性質が変わって、偏光板を使うと力の分布が可視化できるのです。

さて、最初の図とこの写真と、感じが似ていませんか?
最初の図は、不透明で見えない地下の力のかかり方の具合の違いを可視化していますね。あるいは地下の歪みの分布を可視化している。
そうすると、歪みの集中している所で余震や誘発地震が起きやすいことが分かる。

こういうふうに、地下の歪みの分布を可視化してくれた図には初めて出会いました。
こういう図がどんどん出ると、余震分布なども理解できて、理解できると安心します。
何が何だかわからないのが一番いけない。
図やグラフなど、可視化によって情報を伝わりやすくする工夫がほしいですね。
毎日発表される放射線強度なども時間軸を添えたグラフにすれば、動向がみえてより分かりやすくなるのに。そういうセンスが、政府にもマスコミにも少ないですねぇ。
そういう人材はいないのかっ。
情けないことです。

●オマケ:光弾性について追加
C5eab8f7bef5b6b7
透明な板を、下2カ所で支え、上2カ所から力をくわえています。
すると尖端で押している所に縞模様が濃いことがわかります。ここに歪みが集中しているのですね。ですから、もし、そのまま上から強い力を加え続ければ、この縞模様の濃い部分から破壊が始まるはずです。
建築などで、どこにどういう力がかかっているかを解析するのに、透明な板で模型を作って力をくわえて光弾性で観察すると、直感的に分かります。

偏光板がなくても、うまく反射光を使うとこれが見られます。
0419ouryoku1
これはCDケースに斜めから光を当てて、反射光を利用して内部のひずみが見えるように撮影したものです。中央にプラスチックの注入口があって、そこから周辺へ流れていったことが目に見えるのですね。
0419ouryoku2
さらに注入口付近をよく見ると、歪みが集中していることがわかります。
力をくわえて、壊れるとすればこの辺りからなんですね。

http://www.tagen.tohoku.ac.jp/tech/glass/ware/elements/tech/glass06.html
このサイトに、ガラス管をつないでT字に細工したものの光弾性写真があります。
そして解説には

 ガラスの熱加工後放置しておくと、1~2日たってからひびが入ることがある。これはひずみによるものである。ガラスの一部をガス炎等で熱加工するときには、加工部が高温の流体となるがその周囲は室温の固体のままである。熱加工後冷却されるとき、加工部が軟化温度以下の固体になり、熱収縮しようとしても周囲に固体の部分があるために収縮できず、ひずみが生じる。ひずみは偏光を利用したひずみ検査器で観察することができる。ガラス細工を行ったときにできるひずみを(図5)に示す。ひずみがかかっている所は色が濃くなっている。図からわかるように、ひずみは熱加工を行った周辺で一番強い。また、ガラス全体を高温にした場合でも、冷却時に表面が先に冷やされて内部との温度差ができるためにひずみが生じる。・・・

というわけです。化学科の学生だったころ、自分の実験に使うガラス道具の細工はよくやりました。放置して割れたことはないですが、ちょっと加熱するとパキーンとくることはよくありました。歪みが残っていたのです。黄色い大きな炎でゆっくり「なまし」て歪みを取り去らなければいけません。

逆に、この歪みを積極的に利用しているのが強化ガラスです。
ガラスを急冷することによってガラス表面に強い歪みの層を均一に作ってしまうのです。すると外力に対してすごく強くなります。ただ、いったんヒビとかが入ってしまうと、歪みの力が全部解放されて粉々に砕けます。自動車のフロントガラスなど、強化ガラスですから強いのですが、石が当たったりして一カ所でも割れると全面にクモの巣状のヒビが走って笑えてしまいますね。

RikaTanブログという「理科の探検」という雑誌と連動したブログで
「ガラスやプラスチックのひずみ」がみられます。どうぞ。
http://rikatanrikatan.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-c0e8-9.html

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