高分子ポリマー
放射能汚染水のピットからの流出が止まらないので、水の流れをせきとめよう、という話なのですが。 なんだか妙な言葉だな。
もちろん、高分子は単純にいえば分子量が大きいもの。
ポリマーは小さな単位分子がたくさんつながって高分子になったもの。
でもあまり、化学用語としては「高分子ポリマー」とはいわないなぁ。
ざっとあちこちの報道を眺めてみました。
朝日新聞(2011年4月2日20時22分)
そこで、水分を吸収して膨らむ高分子ポリマーを入れてピットの上流側の通り道をふさいだうえで、改めてコンクリートを注入する手法を3日朝から試すという。
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NHK(4月3日 5:10更新)
ピットより上流側に穴を掘って、そこから配管内部に、水を吸収して膨張する「高分子ポリマー」という特殊な化学物質を流し込み、水の流れをせき止める、新たな対策を始めることになりました。
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東京新聞
水を吸収して膨張する高分子ポリマーという材料をピットの“上流”側に流し込み、流出を止めるための作業を進めた。
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日経(2011/4/2 23:29)
このため東電は、水を吸収する高分子ポリマーをピットにつながる管に注入する方法に切り替えることを決定した。
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毎日新聞(2011年4月2日 21時17分(最終更新 4月3日 2時20分))
東電は3日朝から、両トレンチがつながっている部分に穴を開け、水を吸収して膨らむ特殊な樹脂を流し込んで止水を試みる。
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読売新聞(2011年4月2日23時48分)
東電は急きょ、東京から止水技術の専門家を呼び、3日朝から高分子素材を使って新たな止水作業に取りかかる。
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困りましたね。「特殊」?
いえいえ。すっごく身近なものなんです。
紙おむつ、生理用品、園芸用品など。ペットのトイレにも使うかな。
ポリアクリル酸ナトリウムの顆粒でしょう。自重の数百倍から数千倍の水を吸収・保持できます。水を吸って、ゲル状の塊になります。
高吸水性高分子、高吸水性樹脂、吸収性ポリマー、高分子吸収体などと呼ばれていますね。
紙おむつを分解して、中の顆粒を取り出し、1リットル位の容器に入れて、水を1リットルくらい入れてみて下さい。全体が固まっちゃうから。ただし、この吸水性の顆粒が肺に入ると危険ですので、必ずマスク着用のこと。子どもにはやらせないでくださいね。やるなら大人が慎重に。(化学の実験で高校3年生の少人数のクラスでやらせたことがあります。びっくりしますよ~。)
放射能汚染水の処理に使った、というだけで物質のイメージが損なわれるのでしょうか?
なんで「特殊」なんていうの?
なんで物質名を言わないの?
困った風潮です。物の名前を正しく言う、これが物を安全に扱う基本なんです。
{わからないほうが「ありがたみ」がある、というのはいけません。}
トレンチに水がたまっている、というようなニュースを聴いた頃から、私は妻に、「高吸水性樹脂を入れた『土嚢』のようなものを積んでブロックするとかできないのかな。値段が高すぎるのかな」と言っていたのですが、やっぱり使うことになりましたね。
化学屋のはしくれとしての見通しは当たっていたかな。
朝日新聞(2011年4月4日)
●ポリマー・おがくずなど投入
2号機の取水口付近にある作業用の穴(ピット)の亀裂から出ている汚染水を止めるため、東電は3日に、化学物質ポリマー(吸水樹脂)を上流に投入した。水を吸い込んで膨らむ物質だ。紙おむつや保冷剤、園芸用の保水材、携帯用トイレなどにも使われている。
ポリマーは水がないときは体積が小さくさらさらとした粉状だ。一方、水を含むと風船のようにふくらみ中に水を蓄える。水をぐんぐん吸い込みゼリーのようになり固まる。
水を吸うと元の粉の体積の20倍、重さは70倍になるという。
3日には8キログラム分のポリマーのほかに、水を含ませてかさを増させるため、おがくず60キロや新聞紙なども投入した。
しかし午後6時の時点でも汚染水の海への流出は止まっていない。
だめなようですね。
NHKのニュースを見ていたら、その管の中に、15ほどの穴があいた板が仕切りのように固定されているようでした。新聞紙ではうまくぺたっと穴に貼り付かない限りだめでしょう。水流に乗って丸まってくぐってしまうでしょう。
丈夫な繊維性のもの、たとえば、シュロ縄のシュロ繊維とか、あるいは網戸用の網を、穴を塞ぐ程度の大きさに切ったもの(ポリ塩化ビニリデン商品名的にはサランかな)、そんな丈夫な繊維ですき間を小さくし、そこに膨らんだ高吸水性ポリマーが引っかかって目詰まりするようにすればよかったかなとも思いますが。
あるいは高吸水性ポリマーを網戸の網で作った袋に入れて流すとかね。
とにかくなんとかしなくっちゃ。事態はよくなりませんね。
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