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2011年3月29日 (火)

metastable

朝日新聞です

2号機水たまりの放射性ヨウ素、通常冷却水の1千万倍(2011年3月27日13時25分)

こういう記事が出た後

「放射能1千万倍」は誤り 東電、違う物質と取り違え(2011年3月28日0時42分)

こう変わりました。この記事には「1~4号機にたまった水から検出したとされる放射性物質」という表が付いていました。
その表の中に

テクネチウム99m
銀108m
テルル129m

などという、これまで見かけなかった「m」という記号のついた元素名があり、一応、注が付いています。

「mがつくものは同じ原子核の別の状態」

これが分かる人は、かなり核化学などに詳しい人ですね。
ほとんどの方はご存知ないと思います。
この「m」は「metastable」の頭文字のmです。
「準安定状態」といいます。
ウィキペディアを読んでいただくのがいいのですが
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E6%80%A7%E5%B4%A9%E5%A3%8A
部分的に引用すると

核異性体転移
    ITと略される。原子番号と質量数ともに同じで、エネルギー準位が異なるような二つの核種を、核異性体であるという。例えば、99Tcと99mTcは互いに核異性体である。エネルギー準位が高いほうは記号mを付けて区別するのだが、こちらは準安定状態(メタステーブル)であり、余剰のエネルギーを放出して安定になろうとする。エネルギー準位が高いほうの核異性体がガンマ線を放出して、より安定な方の核異性体に変化することを、核異性体転移という。放出される放射線はガンマ線であり、原子核の原子番号と質量数はともに変化しない。
    99mTc → 99Tc + γ (T1/2=6.01h)

最後の式はテクネチウムについての変化の式です。
比喩的にいえば「熱い」原子核とでもいうんでしょうか。
冷たい水も熱い水も、持っている熱エネルギー以外は全く同じですよね。で、熱い水は熱エネルギーを放出して冷めようとする。
メタステーブル核もそうなんです。エネルギー状態が高いんですね。ですから、そのエネルギーを放出して「冷めた」安定な=stableな状態に移ろうとするんです。そのエネルギー放出がガンマ線という形になるんですね。この変化の半減期は約6時間です。

このくらい書けば、多少はご理解いただけたと思います。少なくとも新聞記事の注よりはましなんじゃないかと思っているのですがいかがでしたでしょうか。

●こんな言葉、多分そう多くの方は知らない。ところが実は、不思議なところで私たちの生活に役立っているのです。
医療面でね。
骨シンチグラフィー」というものをご存知でしょうか。
乳癌、肺癌、前立腺癌などの治療前・治療後の経過確認するのによく行われます。
癌の骨への転移の有無の検査に有効なんですね。

理由は完全には分からないのですが、テクネチウムは骨に集まる。そこで、99mTcを注射します。3時間くらいかな、時間が経つとテクネチウムが骨に集まってくる。そして、そこでmetastableからstableへとガンマ線を出しながら変化するのですね。そのガンマ線を撮影して、骨の状態を知るわけです。

「370MBq~740MBq」ほどの量だそうです。
「メガベクレル」ですって。1秒間に370,000,000回もの壊変が起こるんですね。

資料は下のサイトです。
http://web.sapmed.ac.jp/radiolb/rt/kanja/RI/RI_bone.html
http://www.fmu.ac.jp/home/radtech/RI/RI_kensa1.html

●この99mTc、6時間で半減しますので、3日も経つと実質的に消滅してしまいますね。
(半減期の10倍の長さで約1000分の1で、実質的に消滅、と考えています。)
検査用の薬品として必要なのに作りおきがききませんね。
モリブデン99という66日位で半減する原子を輸入して、それを原料にして検査機関でテクネチウム99mに変え、すぐに検査に使うのです。
ですから、骨シンチ検査の予約をしたら、予約時間に絶対遅刻しないでください。
テクネチウム試薬がどんどん変化してしまうのです。このことは知っておいた方がいい。普通の検査とは違って、時間との競争になっていますので。

以前、モリブデン99はカナダの原子炉で作ったものを全面的に輸入していました。
それが、2009年の5月でしたか、カナダの原子炉がトラブルを起こして、輸入が停止してしまったことがあります。

モリブデン:医療検査用製剤の原料、輸入停止
 がんや心臓病などの検査に用いられる製剤の原料である放射性元素「モリブデン99」について、大手供給元のカナダ企業からの入荷が停止していることが分かった。生産拠点のカナダ原子力公社(AECL)の原子炉がトラブルで止まったためで、復旧には1カ月以上かかるという。放射性医薬品を販売している日本アイソトープ協会(東京)が26日、医療機関に注意を呼びかけ始めた。
 検査に使われるのは放射性元素「テクネチウム」で、モリブデン99から製造されている。世界のモリブデン99のおよそ半分を生産しているカナダ企業からの供給が止まった。
毎日新聞 2009年5月27日 2時30分(最終更新 5月27日 2時30分)

現在、どういう供給体制になっているかはよく知りません。事故は報道されるけれど、普通のことは報道されないものですから。
国内で供給できるようにするという話は聞きましたが、その後についての知見はありません。

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