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2011年3月15日 (火)

計画停電

◆私は東京の大田区の南端に住んでいるのですが、計画停電が実施される中で、自分の住んでいる地域が何グループなのか未だに判然としていません。東電のホームページを見ても、これが正しいバージョンです、という電力会社自身がオーソライズした表がないのです。あいまいなものが掲載されたままです。
私自身は、計画停電は必要だと考えていますし、年齢的に戦後の電力事情の窮乏中に幼い時代を過ごしたものですから、毎夕定期的に停電になるなどという経験もあります。停電自体にはそう驚きもしませんが、東電自身が、やってみなけりゃどこが消えるかわからないなどといういい加減な事態であることにはうんざりします。
グループ分けして、ローテーションを組んで、毎日1,2回、3時間位我慢するということは全く構いません。
ただ、その基礎データを会社自身が保有していないということに、あきれ驚くものです。どういう経営をしてるんでしょうね。自分の会社の商品をどこにどう売っているのか分からないなんて、そういう商売ってありなんですかねぇ。

というわけで、苛立たされてしまうわけですが、計画停電というものが必要だという事情はかなりよく分かっているつもりですので、私の理解する範囲をお伝えしましょう。

◆先ずは、たとえ話です。
完全に真っすぐな道を自動車を運転しているとします。(カーブがあると話がややこしいので)。上り坂下り坂はあるものとします。
時速50kmを維持して走らなければならないとしましょう。すると、速度計を見ながらアクセルを一定の深さに踏み込んでその速度を維持することになりますね。
そのとき、車が上り坂にさしかかりました。当然アクセルの踏みこみが一定のままだとスピードが落ちますね。ですから、時速50kmを保つためにアクセルを少し踏む込むことになります。
逆に下り坂にさしかかったときに、アクセルをそのまま踏んでいては速度が増してしまいますからアクセルを緩めます。
時速50kmで走ることを要請されているくらいなら充分アクセルワークで対応できますね。
時速100kmを維持するのもそう難しくはないでしょう。
けれど、スポーツカーでもない限り、時速150km位を維持しろと言われたら、ぎりぎりじゃありませんか?
上り坂にさしかかって、スピードが落ちる、アクセルを踏み込まなければと思っても、もうアクセルの踏みこみようがない。
どうしようもなく、スピードは落ちていく。
こうなりますね。

◆実は電力供給というのはこれに似た話なのです。

計画停電に被災地 「被災状況の考慮不足」と東電陳謝
2011年3月14日23時7分
 ・・・
 電力はガスや水と違い、タンクなどに大規模にたくわえることができない。このため、需要分だけ常に供給する態勢をとる必要がある。需要が供給を上回ると、安定した電力を送れず、送電が不安定になることがある。
 ・・・

こんな記事がありました。
電力は貯えられないのです。
電池じゃ容量不足。
実用化できているのは、揚水発電くらいかな。
水力発電所で、水を落として発電するのと逆に、外から電気エネルギーを注ぎ込んで発電機をモーターにして水をくみ上げるんですね。で、ダムに水を貯める。電気エネルギーを水の位置のエネルギーに変えて貯えるのです。
他に、空気圧に変換して貯えようとか、回転する重い円盤のエネルギーにして貯えようとか、超電導コイルに貯えようとか、いろいろ原理的には可能な方法もありますが、大規模な電力貯蔵は現在は出来ないのです。

需要に対して電力を不足させるわけにはいかない、作り過ぎても貯えられない。
上のたとえ話の、水平でも上り下りでも、一定のスピードで走り続けなければならない自動車と同じような状況なのです。
自動車のたとえ話では、上り坂にさしかかるとエンジンに負荷がかかって、回転数が落ちますね。で回転数を上げるためにアクセルを踏んだ。

発電所ではどうなのか。ものすごく簡単化してしまうと、同じこと。
電力需要が増えると、その負荷が発電機にかかって、回転数が落ちるのです。
発電機の回転数が落ちないようにするには、タービンに送り込む水蒸気の量を増やすしかない。火力発電でも原子力発電でも。
ある意味で、アクセルを踏むんですね。
電力需要が減ったら、そのままだと発電機の回転数が上がってしまいますから、発電機に送り込む水蒸気のエネルギーを減らすしかない。
こうやって、発電機にかかる負荷を監視しながら、1秒間に50回という回転を維持し続けるというのが発電所の使命なのです。
たとえ話にあったように、ゆとりがあれば問題はない。ところが発電機の能力の限界近くで運転している時に負荷が増えると、もうフォローできなくなってしまいます。発電機の回転数が維持できず、電圧が落ちます。

これを避けたいんですね。発電余力を持っていないと需要に対応できなくなる。
常に余力を持っていなければならない。
原子力発電を一定のレベルに保ちベースとする。火力発電で需要の変動に応じる。さらに揚水発電で緊急事態に対応する、というような「常に余裕を保持する」仕組みにしていたのです。

それが原子力発電所を失った。余力がなくなってしまった。
そこで、限界に達しないように、計画的に停電を行って、需要が発電能力の限界を超えないようにしようとしているのです。限界を超えてしまうと、全部アウトになってしまうのですね。

こういうことを知っていいますから、計画停電ということ自体は私は充分に理解するものです。

◆この知識。どうして得たか。
理科教師としては、手回し発電機など使った授業をします。豆球をつないで、手回し発電機を回すと、豆球が光ります。ぐんぐん回すと明るく輝いて、やがて豆球が切れます。その瞬間、手回し発電機の負荷が消滅します。
手回し発電機で電気分解をします。スイッチOFFのときは軽く回ります。ところがスイッチONにして電気分解を始めると途端に発電機が重くなります。
自転車の発電機もそうですね。結構ペダルが重くなる。

こういうスケールは理科教師の守備範囲。
工業高校に勤務していた頃、電気科の先生と話をしていて、電力需要の増加は発電機への負荷という形で知ることができる。これを検出して回転数を一定に保つんですよ、と伺って、一瞬で「あ、そうか」と理解してしまった。
理科教師は「原理」には結構強い。ですが、「技術」には疎い。
世の中のいろいろな技術の中味を知るたびに、その原理は分かるものだから、技術というもののすごさもよく分かる立場ではあるのです。

◆東電さん、しっかりしてくださいよ。
私たちの生活に必要なエネルギーの多くを作ってくれているんだから、頼りにしているんです。
このところの対応は、技術者としては悲しいものがありますよね。
技術者としての誇りをもって、しっかりお願いします。
頼みますよ。

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