雨中の放射性物質1都9県で検出…健康影響なし
文部科学省は21日、雨水やほこりなどの中に含まれる放射性ヨウ素や放射性セシウムの検出量を発表した。
放射性ヨウ素は首都圏を中心に1都9県で検出され、茨城県では1平方キロ・メートルあたり9万3000メガ・ベクレル(1平方メートルあたり9万3000ベクレル)を検出した。高い数値となったことについて同省では、雨で空中に漂っていた放射性物質が地上に落ちてきた可能性があるとみており、「雨水に触れた程度では、直ちに健康に影響はない」としている。
調査は各都道府県で20日午前9時から21日午前9時まで行われた。放射性ヨウ素は、山形県でも1平方キロ・メートルあたり5万8000メガ・ベクレル(同5万8000ベクレル)が検出されたほか、岩手、埼玉、栃木、東京、群馬、千葉、新潟、秋田でも観測された。放射性セシウムでは、茨城で1平方キロ・メートルあたり1万3000メガ・ベクレル(同1万3000ベクレル)を観測したほか、山形、埼玉、岩手、東京、栃木、群馬、千葉で検出した。
これは3月22日のYOMIURI ONLINEの記事をコピーしたものです。
茨城県で
「放射性ヨウ素は・・・1平方キロ・メートルあたり9万3000メガ・ベクレル(1平方メートルあたり9万3000ベクレル)」
「放射性セシウムでは・・・1平方キロ・メートルあたり1万3000メガ・ベクレル(1平方メートルあたり1万3000ベクレル)」
ときました。
何が何だかわかりませんね。
大きいんだかなんだか、イメージが湧きません。
「シーベルト」という単位は何となく耳になじんできましたが、それとも違うので、一般の方にはどういうことを言っているのか、分からないと思います。
シーベルトでは、「1ミリシーベルト」で大変なのに、「メガ」だ「万」だということになったら、とんでもない話に聞こえると思います。
前に書きましたが、「ベクレル(Bq)」というのは、原子核が壊れていく速さのことなんです。
原子核が壊れるときに放射線を出すので、放射線をつかまえると原子核が壊れたことが分かる。
検出器でその放射線をつかまえてカウントしているんですね。
で、原子の壊変の速さは現在ある原子数に比例するという形で、下の式の①で示されます。ここでλは壊変定数といって、原子核種によって一定の値です。
このλと半減期は上の式の②で結びつきます。
①式の左辺をそのままベクレル単位での壊変速度としてちょっとした試算をしてみました。
●ヨウ素131の場合
半減期=8.02日 そうすると λ=1.00×10^(-6)
93000=1.00×10^(-6) × N
N=9.3×10^(10) {これは原子の個数です}
ヨウ素131原子がアボガドロ数(6×10^(23))あると131gですから、9.3×10^(10)個の質量は
2.0×10^(-11)g
「1000億分の2」グラムです。これが1平方メートルに散らばった。放射線でカウントするという方法だからつかまえられる量ですが、普通の分析手段ではつかまえられないような微量です。ほんのわずかな「埃」なんですね。警戒はすべきだけれど、怖がっても仕方ないでしょう、こんな量。
{強い皮肉を一つ。ベータ線=電子を放出していますから、空気中に『マイナスイオン』が増えますよぉ}
●セシウム137の場合。
半減期=30.1年 そうするとλ=7.30×10^(-10)
13000=7.30×10^(-10) × N
N=1.78×10^(13) {個数です}
これだけのセシウムの質量を計算してみると
4.1×10^(-9)g となりました。
「10億分の4」グラムでした。
●こんな計算、私自身初めてのことなので、これで正しいのかどうか不安があって、別の方向からの見積もりもやってみました。{ヨウ素131について}
1秒間に93000個という速さでヨウ素131原子核が壊れています。もし、この速さのまま半減期時間=8日間壊変を続けたらどのくらい壊れるか。
8日=693000秒
掛けて、93000(個/秒)×693000秒≒6×10^(10)個
この8日間でこれだけ壊れて半分になったとしたら、もともとはこの2倍≒1.2×10^(11)個あっただろう。
これだけの個数の質量は、約2.6×10^(-11)g となりました。
指数関数の曲線の形で推移していくのを、直線的に近似したのであらっぽいですが、まあ、結構よく合っている。
ということは、最初の計算が基本的に間違いではないということでしょう。
ホッとしました。
●今日は朝からこんなことを考えていて、やっとここまでこぎつけたら、新しいニュース。
都内の浄水場から放射性ヨウ素 乳児飲用に適さぬ濃度(2011年3月23日14時53分 アサヒ・コムより)
東京都水道局は23日、金町浄水場(葛飾区)から乳児の飲用に適さない濃度の放射性ヨウ素が検出されたと発表した。検出濃度は1リットル当たり210ベクレルで、厚生労働省が21日に示した乳児の飲用に関する指標値の100ベクレルを110ベクレル上回っていた。
都は23区と武蔵野、町田、多摩、稲城、三鷹各市での乳児の飲用を控えるよう呼びかけている。ただ、「厚労省設定の数値は長期間飲用した場合の健康被害を考慮したもので、代替飲用水が確保できない場合は摂取しても差し支えない」としている。
210Bq/Lですって。
なんとまぁ。
計算してみますと、1Lの中に2.1×10^8 個(2億個)のヨウ素131原子があるということです。
これって「ある」というような数かね?
1Lの水というのは3.3×10^25個の水分子の集団なんですよ。
その中に8億個?なんだそりゃ?
万、億、兆といってその上が「京(けい)」ですが、16京個の中の1個、という割合ですよ。
そのヨウ素原子核が、電子を出して、その電子は水中をどれだけ進めるものやら。
私個人は全く気にしません。
大人の指標は300Bqなんだそうです。
この水道水を飲んで、10年後に癌になる確率が高くなったとしても、そもそも、そのころ70歳超えてるんだものなぁ。
気にしませんね、まるっきり。
もちろんこの水の風呂に入っても全く問題はありません。
●さて、ベクレルは原子の側の属性を記述する量。(崩壊の速さ)
で、それは、今よく耳にする「シーベルト」と換算はできないのか?
係数を掛けて、換算するしかありません。
毎日新聞にこんなQ&Aがありました
Q 「ベクレル」って「シーベルト」との違いは?
A ベクレルは放射線を出す強さの単位で、体への影響を見るにはシーベルトに換算する必要がある。1キログラムあたり1万5020ベクレルのヨウ素が検出されたホウレンソウを食べたときの影響は0.33ミリシーベルト。日本人の1日の平均摂取量は約15グラムなので、実際の影響は0.0049ミリシーベルトになる。
毎日新聞 2011年3月20日 20時04分(最終更新 3月21日 10時46分)
ホウレンソウ1kgも食べられません。
あんまり気にし過ぎない方がいいですよ。
●下は、≪内部被ばくに関する線量換算係数≫という表です。
http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html
ヨウ素131を経口摂取した場合の実効線量係数は「2.2×10^(-8) Sv/Bq」とあります。
210Bq/Lの水を1L飲むと、
210×2.2×10^(-8)=4.6×10^(-6)Sv=4.6マイクロ・シーベルト(μSv)
ですね。
こんなふうに使って下さい。
毎日新聞のQ&Aも
15020×2.2×10^(-8)=3.3×10^(-4)=0.33×10^(-3)=0.33(mSv)
という計算をしたのです。
ま、あんまり気にしないことですよ。
放射線よりパニックになるほうが怖い、と思います。
風評被害もあってはならないことです。
自分で背負う覚悟を決めればよいこと、そういうことです。